2017年10月01日

死に方


小谷みどり『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』を読む。

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80歳以上で亡くなる人は,男子で50.4%,女性で,73.0%。しかも女性の36.0%は90歳以上(2015年)という超高齢社会で,しかも,夫婦二人暮らしかひとり暮らしの高齢者が半数を超え(2035年には世帯主65歳以上の44.0%がひとり暮らしになる),

どう死ぬか,

が大きな問題になる,という著者の問題意識だ。たぶん,

みっともない死に方をしたくない,

という著者の個人的美学が通底しているような気がする。しかし,僕は,死んだ人間には,みっともないも,みっともなくも関係ない,という思いが強いのだが,

「数年前,知人がなくなったと知らせを受け,お通夜の前に駆けつけたことがある。故人の口はぽかんと開き,はがない口の中は丸見えで,…若いころは教員をしており,理知的であった故人が,こんな姿ではあまりに気の毒だった。」

と,死後の姿にこだわっている。

「亡くなった人の口がぽかんと開いていても,『亡くなったのだから,仕方ないでしょ』と思う人がいるかもしれない。…しかし,これは故人の尊厳にかかわる問題ではないかとおもう。」

しかし,「尊厳」というなら,そこに問題があるのではない。と僕は思う。本書の掉尾,

「人は生きてきたように死ぬとよく言われるが,現代のお葬式やお墓のかたちは,まさしく社会の縮図ではないかと思う。」

とあるのが,たぶん本書のテーマなのだろう。しかし,

個々の人がどう生きたかが,どう死ぬかをきめる,

のだとすると,そのことと,墓や葬式は,別なのではないか,という気がする。墓も葬式も,生きている側の問題だから,

「人は生きてきたように死ぬ」

と,

「現代のお葬式やお墓のかたち」

とはつながらないような気がする。そうではなく,「死んだときに」その人がどれだけの人と関わってきたかが,わかる,という意味だとすれば,「社会の縮図」ではなく,あくまで,「その人の生き方」の反映でしかない。著者の中に,いくらかの(社会の変化と個人の変化の混同)があるように思える。

「1996年には平均で180人いたが,2005年には100人を切り,2013年には46人となった」

というお葬式の参列者数の変化は,今日の,

家族葬,

の広がりにつながる。それは,核家族化の繁栄でもあるが,地域とのつながりの希薄化とも関わる。

「家族数人だけなら,お通夜と葬儀・告別式を二日間にわたってする必要がなくなる。『一日葬』『ワンデーセレモニー』と呼ばれるスタイルは,お通夜をせず,葬儀・告別式,あるいは宗教的儀式の葬儀式もせず,身内だけでの告別式をした後でそのまま火葬してしまうというのが一般的な流れだ。」

と,葬儀も核家族化し,社会とのつながりが薄くなる。その究極は,

弔われない死者,

の増加である。こういう調査がある。

「65歳以上のひとり暮らし男性で,家族を含む人と毎日会話をする人は,半数しかおらず,16.7%,つまり六人に一人は,二週間に一回以下しか会話をしていない」

という。そして,

「60歳以上でひとり暮らしをしている男性の五人に一人は『頼れる人がいない』」

という。確かに,

「もはや血縁,家族ネットワークだけでは,老い,病,死を永続的に支え続けることは不可能なところまで,社会は変容している。」

そうである以上,

「自立できるあいだは,自分のことは自分で責任をもってできるが,介護が必要になってからは,亡くなった後のお葬式やお墓のことを,すべて自分で遂行できる人はいない。お葬式やお墓は不要と考えるのではなく,託せる人を探し,信頼関係を築いておくことこそが,元気なうちに私たちにできる自助努力であり,生前準備なのではないだろうか。」

という著者の主張が,前記の「人は生きてきたように死ぬ」の意味するところだろう。

「いくら生前に考えて準備しておいても,その通りにきちんと実行されたかを自分で確認することはできない」

以上,

「託せる誰かをみつけ,その人を信頼することのほうが建設的だ。そうやって人と人との信頼関係が構築できれば,お葬式やお墓は無形化しないだろうし,無形化したとしても,死にゆく人にとって,死後の安寧が生前に保証されていたのであれば,それ自体は問題とはならないのではないだろうか。」

と。

参考文献;
小谷みどり『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(岩波新書)


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posted by Toshi at 05:01| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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