2017年10月27日

いたみ


「いたい」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/454441352.html?1508962450

で触れたが,それとのつながりで,「いたみ」を考える。「いたみ」は,『広辞苑』は,

傷み,
痛み,

と当てている。この動詞形「いたむ」は,

炒む・煤む,
痛む・傷む・悼む,
撓む,

と当て別けて,別々に載せる。ここでは,「痛む・傷む・悼む」と当てたものを指すが,「炒む・煤む」「撓む」とあてたものは,「いためる」で,

炒める・煤める,
撓める,

で,別の意味である。で,「痛む・傷む・悼む」と当てた「いたむ」は,「いたわる」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/451205228.html

で触れたように,『大言海』は,

「いたむ(痛む)」
「いたむ(傷む)
「いたむ(傷む)」

の三項にわけて載せる。原点は,

「いたむ(痛む)」

であり,「いたい」で触れたことと重なる,

「至(いた)るの語根(いた)を活用せしむ(強〔つよ〕る,つよむ)。切に肉身に感ずるなり,痛しの語源を併せ見よ」

とある。「いたし」は,すでに触れたように,『岩波古語辞典』の「いた」で,

「極限・頂点の意。イタシ(致)・イタリ(至)・イタダキ(頂)と同根。イト(甚・全)はこれの母音交替形」

とあり,「至る」の語根とはその意味である。

「いたい」の体の痛覚を,

「いたむ(傷む)」

は,転じて,

「心切に思い悩むなり。爾雅,釋訓『傷,憂思也』」

と,心の痛みに転化していく。最後の「いたむ(痛む)」は,他動詞として,他者を,対象を痛める。壊す意となる。

さらに,「いたむ」を形容詞の「いたし」で見ても,ここでも,『大言海』は,

「いたし(痛)」
「いたし(痛切甚)」
「いたし(傷)」

の三項立て,「いたし(痛)」は,

「至るの語根を活用せしむ(涼む,すずし。憎む,にくし)。切に肉身に感ずる意。」

であり,「いたむ」と同様に,痛覚が出自である。それが,転じて,

「事情の甚だしきなり。字彙補『痛,甚也,漢書,食貨志,市物痛騰躍』(痛快,痛飲)」

とある。最後の「いたし(傷)」は,身体の痛覚が転じて,

「切に心に悩むなり。爾雅,釋訓『傷,憂思也』」

とある。「いたい」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/454441352.html?1508962450

で触れたように,『日本語源広辞典』は,

「イタイ(程度が甚だしい)」

が語源とし,激しい程度の意を先とする。『日本語源大辞典』も,

「『痛む』と同根の,程度の甚だしさを意味するイタから派生した形容詞」

とする。とすると,必ずしも,痛みを指していたのではなく,

ひどい,
はげしい,
はなはだしい,

という状態全部を指していた状態表現から,「傷み」や「悼み」が分化してきた,ということになる。ちなみに,「痛み」から分化して,「悼み」「傷み」と当てる,こころの「痛み」について,中国語では,

「悼」は,哀悼・傷悼・悲悼などと連用す,人の死を悲しむなり,傷の字に,憐愛の意を兼ぬ,
「傷」は,憂思也。毀傷也と註す。傷心とは心を破り,傷ふ如く,つよくいたみ哀しむなり。
「痛」は,痛疼の義,身に痛みある如く悲哀を感ずること切なり,
「疼」は,痛に同じ。いたみの終始いやまざる義,

と,細かく分けている。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
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posted by Toshi at 05:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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