2017年11月09日

こめ


「こめ」は,

米,

と当てる。「米」の字は,象形文字で,

「+印の四方に転々と小さなこめつぶの散った形を描いたもの。小さい意を含む」

とある。我が国の稲作は,

「稲作は日本においては、縄文時代中期から行われ始めた。これはプラント・オパールや、炭化した籾や米、縄文土器に残る痕跡などからわかる。大々的に水稲栽培が行われ始めたのは、縄文時代晩期から弥生時代早期にかけてで、各地に水田の遺構が存在する。」

というように,縄文時代までさかのぼるが,「こめ」という言葉は,「こめ」の伝播とともに入ってきたのだろうか。

http://www.okomehp.net/history/history003
も,
http://agrin.jp/hp/q_and_a/kome_yurai.htm
も,

「込める・籠める」説
「小さな実」説,

を取っているが,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ko/kome.html

は,

「米の語源は,『こめる(籠める)』の連用形が名詞化したとする説が有力となっている。 古く,米は『ヨネ』の使用例が多く,『コメ』の語は使用例が少ない。『コメ』の語が多く用いられたのは改まった儀式の場であったことから,米には神聖なものや生命力のようなものが宿っており,『籠められたもの』の意味で『コメ』になったといった解釈もある。平安中期以降,『ヨネ』は古語として扱われ,『コメ』が多用されるようになった。
『こめる(籠める)』に次いで,米の語源で有力とされている説は,酒の醸造を意味する朝鮮語『コメン(コム)』の変形とする説である。酒の醸造法は朝鮮から伝来したといわれ,『醸す』も『カム』『コム』と繋がりがある。ベトナム語の『コム』やタミル語の『クンマイ』なども,米の語源と考えられており,アジアをひとつの国と考えれば当然の繋がりとも考えられるし,発音の似た言葉で確実に語源が異なる言葉も多くあるため,偶然の一致とも考えられる。
その他,『コミ(小実)』や『コメ(小目)』が転じたとする説もあるが,上代特殊仮名遣いにおいて『米』の『コ』と『小』の『コ』では仮名遣いが異なるため,有力とされていない。」

と,「小さな実」説を,否定している。確かに,『岩波古語辞典』は,「こめ」を,

kömë,

と表記して,現代の表記とは区別し,今日とは異なる仮名遣いであることを強調している。『日本語源大辞典』も,

「『コムル』『コム(籠)』が上代特殊仮名遣いの矛盾もなく,妥当性がある」

と,「コモル」説をとる。『日本語源広辞典』は,

説1 「コ(硬)+米(メ)」。もち米に対して粳の米をいいます。
説2 「コ(醸む)+メ(芽)」。醸造の芽,元がコメだという考え方です。
説3 「コム(籠む)の連用形,コメ」。籾の中にコモっているモノガ,コメだという意識です。

と,三説挙げているが,この「籠める」説は,神秘めかしていないのが,いいような気がする。『大言海』は,この説3と似た説を取っている。

「柔實(にこみ)の略転にて籾を脱したるに云ふか(荒糠,こぬか)。沖縄にて,クミと云ふ」

と言う説を立てる。

なお,『日本語源大辞典』は,「コメ」と「ヨネ」の関係については,『日本語源大辞典』が,

「契沖は,脱穀したものがコメ,更に精白したものがヨネではないかとしている(『随筆・円珠庵雑記』)。しかし,中古・中世の文献によると,漢文訓読および和文的な作品でヨネが多く,説話や故実書,キリシタン文献などでコメを用いている。これはヨネが雅語的・文章語的性格を有したのに対して,コメが実用語的・口頭語的な性格が強かったからではないかと解釈される。方言でヨネの類がほとんど見当たらないのも,話し言葉では早くからコメが用いられていたことを意味する。」

と説く。確かに,方言にある「クミ」「コミ」も,「コメ」の転訛と見なせる。

しかし,稻も米も,渡来したものである。恐らく人とともに渡ってきた。その時名が伴っていたはずである。その意味で,

「酒の醸造を意味する朝鮮語『コメン(コム)』の変形とする説である。酒の醸造法は朝鮮から伝来したといわれ,『醸す』も『カム』『コム』と繋がりがある」

とする説の方が,妥当なのではあるまいか。『日本語源大辞典』に載せる,

「酒の醸造を意味する朝鮮語コムの変形から」(衣食住語源辞典=吉田金彦)

も,その流れにある。

こめ.jpg

(短粒種の玄米)


なお,米については,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3

に詳しい。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

ラベル:こめ
【関連する記事】
posted by Toshi at 05:14| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください