2017年11月15日

なげやり


「なげやり」は,

投げ槍,

ではなく,

投げ遣り,

で,

投げ捨てる,

という意味で,そこから,

投げ捨てておくこと→結果はどうなっても構わない→物事をいいかげんに行うこと→成り行き任せ→無責任,

といった意味の幅がある。

「なげやり」に似た言葉で,

捨て鉢,

というのがある。

のぞみを失ってもいいと思うこと,自暴自棄,

という意味だが,「なげやり」には,,

自暴自棄,

という含意はない。放り出して,後は野となれ山となれ,という感じであるが,そこには自暴自棄より,野太い厚かましさがあって,物事は投げ出しても,自分を投げ出すという気配はない。むしろ,

後は野となれ山となれ,

が近く,

http://kotowaza-allguide.com/a/atowanotonare.html

には,

「後のことは、野になるならなれ、山になるならなれ、という意から、当面のことさえ片付いてしまえばどうなってもかまわないということ。
自分はするだけのことはしたのだから、後のことは知ったことではないという開き直りの気持ちを込めて使う。
勝手にしろとばかりに居直るとも言えるし、場合によっては潔く見えることもある。」

とある。「なげやり」に近い。

「捨て鉢」は,
http://yaoyolog.com/%E3%80%8C%E3%81%99%E3%81%A6%E3%81%B0%E3%81%A1%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%84%E3%81%86%E6%84%8F%E5%91%B3%EF%BC%9F%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%AA%9E%E6%BA%90%E3%81%A8/

に,

「ここでいう『鉢』とは、お坊さんが一般家庭を回って食べ物などを分けてもらう『托鉢(たくはつ)』に使う鉢の事を指しているのだそうです。中には托鉢に対して否定的な方もいらっしゃるようで、ひどい罵声を浴びせられることもあったのだとか。そのような事も含め、辛い修行を投げ出しドロップアウトする事を、『鉢を捨てる』と例えたところから、『捨て鉢(すてばち)』と言う様になったのだそうです。」

とある。『日本語源広辞典』には,

「捨てるものを投げ入れる鉢(容れ物)」

という説のほかに,

「捨てて顧みない鉢」

という説もあるらしい。いずれも,「投げ捨てる」ということにウエイトがある。となると,「なげやり」と含意は重なる。『江戸語大辞典』には,すでに,

やけくそ,
やぶれかぶれ,

の意味しか載らない。「やけくそ」は,『広辞苑』に,「やけ」が,

自棄,

の字を当てているので,「くそ」をつけて,

やけを強めている,

ということになる。この「くそ」は,

糞,

の字を当てるが,

「他の語につけて,卑しめ,罵り,または強めて言うのに用いる語」(『広辞苑』)

として使われる。『岩波古語辞典』にも載るので,古くから使われたものらしいが,『大言海』に,いわゆる「糞」の意味から派生したものか,

かす,
くず,

という意味があり,これが,卑しめに使われる遠因と思われる。

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%82%84/%E3%82%84%E3%81%91%E3%81%8F%E3%81%9D%E3%81%A8%E3%81%AF-%E6%84%8F%E5%91%B3/

は,

「やけくそとは、切羽詰まってなげやりな行動をとってしまうような心の状態をいう。『やけ』は『自棄』と当てるが、もとは『焼け』。『くそ』は大便のことで、敵軍に城を囲まれ、自暴自棄になった殿様が自ら火をつけて自害するといったようなケースでは、たぶん『くそ』も『焼ける』だろうから、『やけくそ』は『焼けたうんこ』の意味としてもよさそうなものだが、そんなわけはなく、この場合の『くそ』は、『下手くそ』『胸くそが悪い』『くそおもしろくもない』などのように、前後の言葉を強調したり、強く卑しめたりする語だと普通は解釈される。『焼け』がなぜ『自棄(自分をかえりみず、大事にしないこと)』の意味になるのかについては諸説あるが、火事で焼けた銭を『焼け銭』『焼け』といい、悪貨として排斥されるのを『焼けになる』といったようなことが関係あるのではないかといわれる。火事にあったら、銭が使い物にならなくなるかいなかを問わず、誰でも自暴自棄になるだろうから、ことさら『焼け銭』にこだわらなくてもよいかと思われる。」

と書いている。「やけ」について,『日本語源広辞典』は,

「『焼け』です。自棄的な行動に使います。一度火を被って役に立たないのが,語源のもつ意味です。」

としているが,これでは,役に立たないことと自棄とはつながらない。『日本語源大辞典』は,

「火災などで焼損した貨幣を焼金(やけがね)・焼錢(やけぜに)といい,略して『焼け』と呼んだ。表面の文字が焼けただれて不分明となり,撰銭(えりせん)の対象として排斥されたことから,『焼けになる』の語と関係があるか。」

としている。確かに,『江戸語大辞典』の「焼け」の項には,「自暴自棄」の意味の他に,

焼金(やけがね)・焼錢(やけぜに)の略,

が載る。「棄てざるをえない銭」から来たというのが語源なのかもしれない。因みに,

焼けのやん八,
焼けの勘八,

という言い方は,『江戸語大辞典』によると,

「『やけ』の縁語で,『かんぱちこ』(カラカラに乾いたさま)と言い続け,それを人名に模した語」

とある。なお,「くそ」について,

http://zokugo-dict.com/08ku/kuso.htm

に,

「くそとは大便のことを荒く言った言葉で、戦国時代以前から使われている。江戸時代に入ると『あんなくそが言うことなど・・・』と他人を罵ったり、『くそっ、これしきのこと』といったように自分自身を戒めたり、奮起させる言葉としても使われるようになる。後に人を罵る意味では『くそガキ』『くそったれ』といったように接頭語としても使われる。また、『くそ面白くない』『くそ忙しい』など、人以外に付けられる場合、「とても・非常に」といった強調として使われる。この場合、後に続く内容は不快・不愉快といった否定的なものである(平成に入ると必ずしも否定的内容でない場合がある)」

とある。古くから使われている。なお,「やぶれかぶれ」は,

http://zokugo-dict.com/36ya/yaburekabure.htm

に,

「やぶれかぶれとは自棄になることや自暴自棄なさまを表す言葉だが、破れかぶれと書く通り、単に自棄になるというより、何かに破れ(=敗れる)たり、失敗したり、思い通りにいかないなど、物事が悪い方向へ向いてしまったことによる際に使われる。警官に囲まれた犯人が凶器を無闇に振り回すさまなどがこれに当たる。また、時代劇で悪人に捕まった町人が『こうなったらやぶれかぶれだ。煮るなり焼くなり好きにしやがれ』といったセリフを言うことがある。このように『開き直り』、さらに『居直り』といった意を含んで使われることも多い。」

とある。こうみると,自棄(やけ)度は,

なげやり→すてばち→やけくそ→やぶれかぶれ,

といったところか。やはり「なげやり」には,焼けの含意は薄い。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;
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今日のアイデア;
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posted by Toshi at 05:19| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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