2017年11月21日


「せ」は,

背(脊),

と当てる。「背(脊)」の字は,

「せぼねのぎざぎざと張ったさま+肉」

の会意文字。で,

ぎざぎざと左右に張り出たせぼね,またはせなか,

の意味である。

『岩波古語辞典』には,「せ」は,

「ソ(脊)の転」

とあり,「そ」を引くと,

「セ(脊)の古形」

とある。で,

「朝鮮語tїng(脊)と同源」

とある。さらに,

「万葉集の『痛背(あなせ)の河』『打背貝(うつせがひ)』などの表記によって,奈良時代にすでに『せ』という語があったことがわかる。」

とある。『大言海』は,

「反(ソレ)の約。背(ソ)と通ず」

とある。『日本語源広辞典』は,全く異説で,

「セ(高く目立つもの)」

が語源とするが,矛盾するのは,「せなか(背中)」については,

「セ(外,ソ)またはセナ(外側,裏側)+カ(処 接尾語)」

としている点だ。「おなか」は,

「オ+中,内」

で,それに対する語,とするなら,「せ」は,

「そと」

でなくては,辻褄が合わない。『岩波古語辞典』も,「おなか」について,

御中,

と当て,女性語としている。女房詞として,そう言ったとすれば,「せなか」は,その反対,「そと」と表していた,と見るのが自然だろう。

『日本語源大辞典』は,

ソ(背)の転(岩波古語辞典),
ソレ(反)の約(名言通・大言海),
ソ(外)の義(言元梯),

以外にも,

シリヘの約シレの反(日本釈名),
ソヘ(後方)の義(日本語原学=林甕臣),
体の根の意で,ネ(根)の転か(国語蟹心鈔),
セッとせりつまったものであるから(日本声母伝・本朝辞源=宇田甘冥),
セマルの意から(国語本義),

等々を載せるが,こう指摘している。

「本来『せ』は外側,後方を意味する『そ』の転じたもので,身長とは結びつかなかった。ところが,『今昔-三・十』に,『身の勢,極て大き也』とあるように,身体つき・体格を意味する『勢(せ)』が存在するところから,音韻上の近似によって,『せ(背)』とが混同するようになったとおもわれる。」

としている。妥当ではないだろうか。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/se/senaka.html

は,

「背の古形は『そ』で,現在『そ』の形で用いる言葉には『そむく(背く)』などがある。『そ』は『それ(反)』や『そへ(後方)』の意味で,『せ』の語源は後方の意味と考えられ,物の後ろの部分を言うのもこのためである。その中央部分が背中で,『上』『中』『下』と三分した中間の意味。『背丈』など『背』が『身長』の意味を持つようになったのは,衣服のサイズが背中を中心に決められることや,身長を測る際に背を向けて測るためと思われる。『背』が『身長』も表すようになったため,『背中』は中央だけでなく,背の全体も指すようになった。」

としているが,「背丈」が衣服のサイズというのは,いかにも,新し過ぎる。

また,背中は,「背の中」と,全体を表している。必ずしも,中間という意味よりは広い,背の広がりを意味しているのではあるまいか。ただ,「なか(中)」について,『岩波古語辞典』は,

「古くはナだけで中の意。カはアリカ・スミカのカと同じで,地点,所の意。原義は層をなすもの,並立するもの,長さのあるものなどを三つに分け,その両端ではない中間にあたる所の意。空間的には上下,左右,または前後の中間。時間的な経過についてはその途中,最中。さらに使い方が,平面的なとらえ方にも広まり,一定の区域や範囲の内側,物の内部の意を表すに至って,ウチと意味が接近してくる。」

とあるので,あえて言えば,背の中心を指している,というべきか。

なお,「背」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/405100495.html

で触れたことがある。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

ラベル: 背中
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posted by Toshi at 05:01| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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