2017年11月22日

はら


「はら」は,

腹,
肚,

と当てるが,肉体の「腹」の意から,背に対する前側の意,胎内の意,更にそこから血筋,物の中程の部分,といった意味の広がりから,転じて,

本心・真情・性根を宿す所,

つまり,

心底,

という意味になり,

意趣・遺恨などを含む内心,

といった意味へと転じていく。「はら」といったとき,ただの気持ちや感情,考えというより,

本音,
本心,

といった意味を含んでいる。「腹の内」というニュアンスである。そこからであろうか,「腹の大きい」などと,

度量・胆力,

という意味でも使われる。

さて,「はら」については,「向っ腹」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/424241083.html

でも触れたが, 『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ha/hara_karada.html

で,

「『原(はら)』『平(ひら)』などと同源で『広(ひろ)』に通じるとする説。中高に張っていることから『張り』の意味とする説。朝鮮語で『腹』の意味の『peri』からなど諸説あり,中でも『張り』の説が有力である。現代では,人の心は胸にあると考えられているが,古代では腹に心があると考えられていたため,感情や気持ちの意味で『腹』を用いた言葉は多い。」

というように,

腹が黒い,
腹が据わる,
腹が立つ,
腹に一物,
腹に落ちる,
腹を固める,
腹が据わる,
腹を決める,
腹を読む,

等々,幅広い含意で,多様に使われる。その元は,「はら」の語源にあるのかもしれない。『岩波古語辞典』は,

朝鮮語hɐri(腹)と同源

とするだけだが,『大言海』は,

「廣(ひろ)に通ず,原(はら),平(ひら)など,意同じと云ふ。又張りの意」

とする。「原」の項では,

「廣(ひろ),平(ひら)と通ず。或いは開くの意か。九州では原をハルと云ふ。」

とある。ただ,『岩波古語辞典』は,「原」を,

「ハレ(晴)と同根」

としており,「晴れ」を見ると,

「ふさがっていた障害となるものが無くなって,広々となる意」

とある。「晴れ」も「廣」も,いずれは,

平(ひら),

につながる。つまり,

たいらかなること,

である。『日本語源広辞典』は,二説挙げる。

説1 「ハラ(張る)の変化」。人の盛り上がった部分で,飲食したり,胎児を宿したりしてハル(張る)ところ。
説2 「ハラ(原)」が語源。人体の中で,広がって広いところ。

漢字で見ると,「腹」の字は,

「右側の字(音フク)は『ふくれた器+夂(足)』からなり,重複してふくれることを示す。往復の復の原字。腹はそれを音符として肉を加えた字で,腸がいくえにもなってふくれたはら」

であり,「肚」の字は,

「土は,万物をうみ出す力をいっぱいにたくわえた土。肚は『肉+音符土』で,一杯に食物を蓄えたはら」

と,いずれも,「張った」とか「ふくれた」の意が強い。だから,「張る」が大勢なのかもしれない。

『日本語源大辞典』も,「張る」に関わる説が,

ハリ(張)の意(大言海),
中高に張っているところからハル(張)の義(名言通・国語の語幹とその分類=大島正健),
食べると張るところからハル(張)の義(日本釈名・柴門和語類集),
ハは張の義,ラは付字(和句解),

と多数派だが,

ハラ(原)・ヒラ(平)などと同義で,ヒロ(広)に通じる(大言海),
人身中の原の義(箋注和名抄・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子),

と,「原」説も少なくない。僕は,「張る」はこじつけっぽく感じる。「張る」のは,食事や妊娠という一時的な印象で,「ハラ」「ヒラ」の方が,腹の日常の感じに近いのではないか。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


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