2017年11月23日

腹に落ちる


「腹に落ちる」という言い回しがある。

納得がいく,
合点がいく,
なるほどと思う,

という意味で,

腹に落とす,

と言ったりもする。

腑に落ちる,

と同義,と『広辞苑』にはある。似た言い方で,

胸に落ちる,

とも言う(『広辞苑』には載せない)。『デジタル大辞泉』では,

納得がいく,
腹に落ちる,
腑(ふ)に落ちる,

と意味を載せる。確かに,

胸にストンと落ちる,

という言いかをする。

目からウロコが落ちる,
目を開かれる,

というのと意味は似ている。「はら」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/455047479.html?1511295116

で触れたように,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ha/hara_karada.html

で,

「『原(はら)』『平(ひら)』などと同源で『広(ひろ)』に通じるとする説。中高に張っていることから『張り』の意味とする説。朝鮮語で『腹』の意味の『peri』からなど諸説あり,中でも『張り』の説が有力である。現代では,人の心は胸にあると考えられているが,古代では腹に心があると考えられていたため,感情や気持ちの意味で『腹』を用いた言葉は多い。」

とあるように,「古代では腹に心があると考えられていたため,感情や気持ちの意味で『腹』を用いた言葉は多い」のだとすると,

胸に落ちる,

は,比較的新しい言い回しと思われる。『岩波古語辞典』は,「はらだち」の項で,

「ハラは胸の中心・気持ちの意。」

とあるので,「ハラ」で,今日の「ムネ」意を表していたととらえられる。

「腑に落ちる」について,『語源由来辞典』は,「腑に落ちない」の項で,

http://gogen-allguide.com/hu/funiochinai.html

「腑に落ちないの『腑』は,『はらわた』『臓腑』のこと。『腑』は『考え』や『心』が宿るところと考えられ,『心』『心の底』といった意味があるため,『人の意見などが心に入ってこない(納得できない)』という意味で,『腑に落ちない』となった。肯定形の『腑に落ちる』は明治時代の文献にも見られ,『納得がいく』『納得する』という意味で用いることは誤用ではないが,一般に『腑に落ちる』の形で用いられることが少なくなり,使い慣れない・聞き慣れない言葉を使われる違和感から,『正しい日本語ではない』と誤解されることがおおくなった。」

とあるが,「はら」自体に,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/455047479.html?1511295116

で触れたように,意味を転じて,

こころ,考え,心底,

という含意があり,

腹に落ちる,

という言い回しがある以上,

腑に落ちる,

と言っても異和感は,僕にはない。その辺りについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/441077426.html

で触れたので,多少重複する。なお,

http://yeemar.seesaa.net/article/12334760.html

には,

「(1)戦前の辞典では『大日本国語辞典』『日本大辞典言泉』『大辞典』などが『腑に落つ』〔見出し〕で載せている。(2)『日本国語大辞典』第2版に『ふに落ちる[入る]』『ふに落とす』の見出しで載り、否定・肯定の用例がある。(3)水谷静夫氏が「釈然」に関し「『釈然とした』(=腑に落ちた)よりも『釈然としない』というほうが記憶に残るから、打ち消しが多く使われる〉という話を座談会でしている、ということでした。
最新の『日本国語大辞典』第2版にも、たしかに『腑に落ちて』の例が載っています。」

とある。

いわゆる,

五臓六腑,

とは,

「「五臓」とは、肝・心・脾・肺・腎を指す。心包を加え六臓とすることもある。「六腑」とは、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦を指す。関係臓器がない三焦をはずして五腑とすることもある。」

ということだが,「腑」は,

はらわた,

をさし(『大言海』),さらに,

「俗に,思慮分別の宿る所,腑の足らぬとは,了簡の不足の意。腑の抜けるとは了簡の脱したる意。」

とある。「腑」は,漢字の意味を借りている。「腑」の字は,

「府は,いろいろな物をまとめて置いておく所。付と同系のことば。腑は『肉+音符府』で,体内にある食物や液体のくら。もと府と書いた」

とあり,「はらわた」の意である。

胸に落ちる,
腹に落ちる,
腑に落ちる,

は,おそらくほぼ同義,とみていい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 05:02| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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