2017年11月28日

ちんたら


「ちんたら」は,

やる気なく,のろのろと事を行うさま,

の意(『広辞苑』)で,何となく,擬態語の感じがある。しかも,「ちんたら」の「たら」は,

ぐうたら
あほんだら,
あほたれ,
ばかたれ,

等々の「たれ」「たら」「だら」とつながる,どこか相手を貶める含意がある。『実用日本語表現辞典』は,

「のろのろと行動するさま、動作が緩慢でだらけている様子、などを意味する表現。怠慢な様子を咎める際などに用いる場合が多い表現」

としている。手元の語源辞典には載らないが,『隠語大辞典』は,

「漢字で書けば、さしづめ“珍不足”(ちんたらず)か。そう、男性のチンが足りんから、ないない同士でアヘアヘする。俗にレズビアンというやつ。」

としているので,通常使う意味ではなく,あくまで,隠語としての意味となる。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/17ti/chintara.htm

は,

「ちんたらとはダラダラしたさまを表す言葉で、そういったさまを目上の者が注意・罵る際に使われる。最近では自戒・自己の反省の際にも使われる。ちんたらは状況を表す副詞である。動詞として使用する場合は『ちんたらする』となる(否定形の『ちんたらするな』という形で使われることが多い)。ちなみにこの場合も『日曜はちんたらしちゃった』といったような、単に状況・行動を表す言葉としては使われない。」

としている。言葉の含意をよく言い当てている。

この「ちんたら」について,多く語源とするのは,焼酎蒸留から来ているという説だ。たとえば,

http://www.lance2.net/gogen/z529.html

は,

「『ちんたら』の語源は鹿児島の蒸留所と関係があるんだけど、昔、焼酎を蒸留する時に鹿児島では『チンタラ蒸留機』っていう機械が使われていたんだ。この機械で蒸留する際に中にある鉄釜が煮立って『チン、チン』という音が勢いよく聞こえたんだって。でもこの勢いに反して実際に機械から出てくる焼酎は『タラ~、タラ~』というゆっくりしたペースだったんだよね。だから焼酎を作るのにすごく時間がかかったんだよね。そんな様子からのんびりしてのろまな様子を『ちんたら』っていうようになったんだ。」

あるいは,

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1316125278

は,

「チンタラの語源は旧式の蒸留機、チンタラ蒸留機に由来するんだって。焼酎のことを地元では、『そつ』、または、『しょちゅ』と呼びます。デンプンが糖化した残り粕やアルコール化されなかった糖質・その他を含むドロドロしたもろみを蒸溜します。そのもろみのアルコール度数が低いので、熱を加えるのです。蒸溜し流れ出てくる蒸気を、冷やし液化したものが、焼酎となります。その蒸溜最初に出てくる液体を『はつだれ』と言い、
垂れ出る様は、日頃大酒飲みが晩酌でグビグビ飲む量とは対照的に、ぽたりポタリと僅かなのです。」

あるいは,

http://marukikouhou.seesaa.net/article/161035165.html

「『ちんたら』の語源をご存知でしょうか?『焼酎』です。蒸留機から、焼酎が落ちてくる様が『ちんたら、ちんたら』と落ちてきます。やがて、この蒸留機自体を『ちんたら』と呼ぶようになりましたが、『のろのろしている様』を 『ちんたら』と言うようになりました。日本に蒸留酒が伝わったのが、15世紀初頭、蒸留装置が伝わったのが16世紀といいますから、時は、室町時代。鹿児島県で発見された木片に、焼酎と言う文字があります。室町時代1559年のものです。室町時代には、焼酎が親しまれていたことになります。当時は、米が主流で、日本にはまだ、サツマイモは伝わっていませんでした。芋焼酎など、色々な種類が出回るようになるのは、江戸時代になってから。『ちんたら』の言葉も、この頃から、使われるようになったのでしょう。」

あるいは,

https://soudan1.biglobe.ne.jp/qa2615465.html

「さて私は、鹿児島出身です。(私の実家は、代々鹿児島です。)確かにチンタラは、鹿児島が語源だと思うし、その語源先もチンタラ蒸留器から来た語源だと思います。では、そのチンタラ蒸留器がチンと音がしたからチン○○に蒸留器と命名されたのでしょうか?それは違うと認識してます。私は、亡くなった母や叔母にチンタラの語源を50年近く前に聞いて知ってます。それは最初、『チィチィすんな!(遅々すんな!)→チィンチィンすんな!→チンチンすんな!→(意味)遅く迂路迂路するな!』に成ったのです。だから、チンタラ蒸留器も出口から『遅く迂路迂路』出る上、時にタラタラ(ダラダラと同じ=気だるく遅い様を表します。)出る事からチンタラ(遅く、迂路迂路、気だるい様)で出て来る蒸留器と呼ばれているのです。つまり、「日が暮れるぐらい遅い。」って事です。ただ、昔の人は、殆どが小学校出か中学校程度の語学しかなく、カタカナが多く使われていたようです。尚、昔(明治から昭和にかけて)は、その家の男子が軍に行ったりしているので、その家の母と長女が主に醸造酒を作って身内に振舞っていたようです。だから、旧家(本家)には、多くがチンタラ蒸留器を個人所有していたようです。」

あるいは,「天の川酒造」という会社のフェイスブックでも,

https://www.facebook.com/amanokawashuzo/photos/a.215848695203454.47987.180553758732948/337789063009416/?type=3

「ちんたら」の語源として,

「それは焼酎ができる様子からと云われています。モロミを鉄釜に入れ、沸騰させると鉄釜が「チンチン」と音がし、蒸留された焼酎は、つぼ(かめ)の中へ『タラタラ』と少しずつ落ち、この作業の長い、その様を表しているのが『ちんたら』なんです!」

極め付きは,

http://www.kurochu.jp/yurai2.htm

に,

「『南島雑話』に描かれている蒸留器に『ちんたら蒸留器』と呼ばれているものがあります。鉄釜が熱くなると『ちんちん』と音がし、鉄釜で熱せられた焼酎は気体となって樽へ立ち上り、冷めると液化して樽に付き、筒の中を『たらたら』と流れ出ていきます。ゆっくりダラダラやる様を「ちんたら」と表現する事もありますが、これが語源になっているのかもしれません。(あくまでも推測ですが)」

ちんたら蒸留器.jpg

(ちんたら蒸留器〔名越左源太『南島雑話』より〕)


とある。この「あくまでも推測ですが」とあるのが正確で,僕は実態は,逆だと思っている。「ちんたら」という言葉があって,

ちんたら蒸留器,

と名づけたのではないか。「ちんたら」という言葉は,新しい,と思う。あくまで億説だが,この語感は,現代的なのではないか。

そこで気になるのが,

ぐうたら
あほんだら,
あほたれ,
ばかたれ,

との関連。「ぐうたら」は,語源が比較的はっきりしている。『日本語源広辞典』には,

「近世『ぐずぐずして気力のない男』を擬人化した『愚太郎兵衛』です。」

とある。『大言海』は,「ぐうたらべゑ」のみ載り,

「愚を擬人して,愚太郎兵衛の訛なるべし。愚鈍なるものを十六兵衛と云ふも百文に十六文足らずと云ふなり」

とある。『江戸語大辞典』には,「ぐうたら」「ぐうたらべえ」の両方載るが,

「ぐうたらなこと・者を擬人化した語」

とある以上,「ぐうたら」という言葉が,先にあったのではないか。とすると,「ぐうたら」は,

愚+たら,

と考えられる。

阿呆+たら,

と同じく,「たら」は,接尾語ということになる。「あほだら」は,

あほたれ,
あほんだれ,

とも言う。『広辞苑』は,

阿呆垂れ,

とあてている。「たれ(垂れ)」を引くと,

「(名詞の下に付けて)人を悪く言う意を表す語」

とある。

洟垂れ,
くそたれ,

という言い方もする。「あほんだれ」の「だれ」,「あほんだら」の「だら」は,「たれ」の転訛と見ることができる。

『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/01a/ahondara.htm

は,「あほんだら」の項で,

「あほんだらとはアホの語意を強めた言葉『あほだら』が崩れたもので、目下の者を罵る際や敵意のある者を威嚇する際に使われる。主に関西で使われる言葉だが、『アホ』を気軽に使う関西圏においても、あほんだらは怒りを込めた強い言葉であるため、使用には注意が必要である(口調が同じであれば、アホ→あほんだら→ドアホの順で語感の荒さが増す)。」

とある。この「だら」の語源について,『全国アホ・バカ分布考』(松本修)は,

「『だら』の語源は『足らず』である」

と推測している由ですが,それはうがち過ぎでしないか。そして,この「たれ」は,あるいは,助動詞「だ」の変形なのかもしれない,と思えてくる。

「だら」は,

完了の助動詞「た」(文語は「たり」)の仮定形,

ではないかとする説がある。それだと,たとえば,

https://www.weblio.jp/content/%E3%81%A0%E3%82%89

で,各地のさまざまな「だら」の使い方や隠語を示しているが,

~だろう,

という意味が,

ばか,

という意味に転じていたりする例がある。「あほたれ」は,あるいは,

あほとちがうか,

という含意が,そのまま,皮肉というか逆説表現になる,ということはある。「たれ」「だら」「たら」は,そんな由来なのではないか,と思えてくる。

参考文献;
http://www.kurochu.jp/yurai2.htm
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

ラベル:ちんたら
posted by Toshi at 05:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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