「あなご」は,
穴子,
と当てる。その生態から名づけたものと想像される。『日本語源広辞典』は,
穴+子,
と,穴に住む意とし,
「穴から首を出して餌を狙う習性が,語源に関わったと思われます。」
としている。
http://www.yuraimemo.com/892/
では,
海鰻,
とも当て,
「アナゴは『ウナギ目アナゴ科』とのことなので、やはり(ウナギと)同類のよう。日中は岩穴や砂の中に棲む夜行性の魚だそうで、「穴籠り(あなごもり)」することから「穴子」となったという説が最有力といわれています。」
としている。たしか,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/455534185.html?1513196483
で触れたように,『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/u/unagi.html
は,
「うなぎは,古名『むなぎ』が転じた 語で,『万葉集』などには『むなぎ』とある。 むなぎの語源は諸説あるが,『む』は『身』を,『なぎ』は『長し(長い)』の『なが』からとする説が有力とされる。この説では,『あなご』の『なご』とも語幹が共通する。」
としていた。「アナゴ」の項では,
http://gogen-allguide.com/a/anago.html
「日中は岩穴や砂の中に棲む夜行性の魚であることから、『穴子』と呼ばれるようになっ たとする説が有力とされる。 この説では、『穴籠り(あなごもり)』が変化したとの見方も ある。 また、『なご』の語根がうなぎの『なぎ』と共通し、水中に棲む長い生き物を『nag』の音で表していたとも考えられている。『nag』の音に関連する説では、『長魚(ながうお)』が転じたとする説がある。」
とする。「うなぎ」が,
「む(身)+なぎ(長)」→うなぎ,
なら,「あなご」は,
「あな(穴)+なぎ(長)」→あななぎ→あなぎ→あなご,
ではないか,と想像したくなる。となると,「子」は当て字ということになるのだが。
(マアナゴ[ウナギ目アナゴ科クロアナゴ属]https://www.zukan-bouz.com/unagi/anago/anago.htmlより)
『日本語源大辞典』は,
ナガウオ(長魚)の変化した語で,ウナギ(鰻)と同根か(日本語を考える=柴田武),
アナゴ(穴魚)。穴に居るから(言元梯・日本語源=賀茂百樹),
アナゴモリ(穴籠)の義(日本語原学=林甕臣),
古く水中の或種の霊物をNとGの子音で表示する風習があった(魚王行乞譚=柳田國男),
と諸説を並べるが,昔アナゴを獲った者たちが,ウナギとアナゴを同一視するはずはない。どう考えても,その生態の,
穴魚,
か
穴籠,
と考えるのが妥当だろうが,個人的には,
あなうお(穴魚)→あなご,
あなご(穴籠)→おなご,
という転訛よりは,
「あな(穴)+なぎ(長)」→あななぎ→あなぎ→あなご,
という転訛かという臆説にこだわりたい気がするが。
ちなみに,穴子の稚魚「のれそれ」については,
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1258721702
で,その語源について,
「高知で、アナゴ類の稚魚を『ノレソレ』と呼びます。高知市付近ではノレソレ、須崎市付近ではタチクラゲと呼ばれています。地引網を引くと、ドロメは弱いのですぐに死んで網にくっついてくるのですが、ノレソレは、そのドロメの上にのったり、それたりしながら網の底に滑っていきます。この『のったり、それたり』という地引網の中の様からこう言われているようです。」
としている。やはり,生態の擬態語から来ている。
なお,同じウナギ目のウナギとアナゴの違いについては,
https://chigai-allguide.com/%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%8E%E3%81%A8%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%94/
に詳しいし,アナゴについては,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%82%B4
に詳しい。
参考文献;
https://www.zukan-bouz.com/unagi/anago/anago.html
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm