2018年01月01日

とし


「とし」は,

年,
歳,

と当てる。毎年,来る年も来る年も,という意味で,

年々歳々,

とも使う。

年年歳歳花相似にたり,
歳歳年年人同じからず(劉希夷「代悲白頭翁」),

が思い浮かぶ。「とし」は,『広辞苑』に,

「同じ季節のめぐるまでの間,年に一度の収穫を基準にしたとも」

とあり,『デジタル大辞泉』にも,

「元来穀物を意味し、1回の収穫に1年かかるので「年」を意味するようになったという」

とあり,『岩波古語辞典』にも,

「稲などのみのりの意。一回のみのりに一年かかるところから,後に,年の意。漢字『年』も原義は穀物の熟する意」

とある。で,「とし」の意味は,

時の単位,

を指すと同時に,

歳月,

に広がり,

年齢,
穀物の実り,
季節,

と意味の幅が広がる。「年」の字も,

「『禾(いね)+音符人』。人(ニン)は,ねっとりと,くっついて親しみある意を含む。年は,作物がねっとりと実って,人に収穫される期間を表す。穀物が熟してねばりを持つ状態になるまでの期間のこと。」

と収穫とつながるし,「歳」は,

「『戉(エツ 刃物)+歩(としのあゆみ)』で,手鎌の刃で作物の穂を刈り取るまでの時間の流れを示す。太古には種まきから収穫までの期間をあらわし,のち一年の意となった。穂(スイ 作物のほがみのる)と縁が近い。」

と,やはり収穫と関わる。

「とし」の項で,『大言海』は,

「爾雅,釋天篇,歳名『夏曰歳,商曰祀,周曰年,唐虞曰歳』。注『歳取歳星行一次,祀取四時一終,年取禾一熟,歳取物終更始』。疏『年者禾塾之名,毎年一熟,故以為歳名』。左傳襄公廿七年,註『穀一熟為一年』。トシは田寄(たよし)の義,神の御霊を以て田に成して,天皇に寄(おさ)し奉りたまふ故なり,タヨ,約まりて,ト,となる」

としている。他の説も,ほぼ穀物の収穫と関わる。たとえば,『日本語源広辞典』は,

「ト(富・豊)+シ(収穫物・食物)」説。一年に一度豊かな収穫がある意,
「疾シ,敏シ」説。早く行きすぎるものという意,

の二説挙げるし,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/to/toshi.html

は,

「『穀物』や『稲』を意味した『とし』が語源。 古くは『穀物』、特に『稲』を『とし』といい、稲が実ることも『とし』といった。『名義抄』には『年、稔、季』に『トシ』とあり、『稔』には『ミノル』 と『トシ』の訓がある。時の単位『一年』を言うようになったのは、穀物の収穫サイクルを一年として考えたことによる。『稲』が『とし』と呼ばれるようになった由来は、『一年』を 表す時の単位と同じように、収穫までの期間は早く過ぎるものであるところから、『疾し』『敏し』からと考えられる。また、収穫ではなく『穀物(稲)』や『豊作』を中心に考えるならば,『と』が『富』、『し』が『食物』『収穫』の意味や、『稲』をあらわす『たよし(田寄)』からとも考えられる。和語の『とし』と漢字の『年』や『歳』は成り立ちが似ている。漢字の『年』は『禾(いね)』に音符『人』で、『人』には『くつついて親しみ合う』の意味が含まれており、穀物が熟してねばりを持つ状態になるまでの期間を表している。漢字『歳』は『戉(エツ:刃物の意味)』と『歩』からなる字で,『歩』は『としのあゆみ』,つまり『時の流れ』の意味があり,刃物で穂を刈り取るまでの時間の流れを表したのが『歳』である。」

と,

「『穀物』や『稲』を意味した『とし』が語源。 古くは『穀物』、特に『稲』を『とし』といい、稲が実ることも『とし』といった。『名義抄』には『年、稔、季』に『トシ』とあり、『稔』には『ミノル』 と『トシ』の訓がある。」

と,「稲」そのものを「とし」と訓んでいたとしている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B4

も,

「日本語で『とし』とは、『稲』や穀物を語源とし、一年周期で稲作を行なっていたため『年』の意味で使われるようになったという。」

としている。

つまり,穀物や稲そのものが「とし」なのか,稲や穀物の実りの期間を「とし」としたのか,にわかれる。その実りが「疾し」説,「豊」「富」と豊かな実り説は,両者いずれかから派生したもののように見える。

穀物そのものとしているのは,

穀物を意味した語トシの転義。穀物のみのりは一年を周期としたところから(金太郎誕生譚=高崎正秀),
トは,トミ(富)・トヨ(豊)などの語幹,シは食物・収穫の原語(日本古語大辞典=松岡静雄),
稲をいう田実から(日本語源=賀茂百樹),
トヰシズク(百穀播収)の義(兎園小説外集),
稲をいうタヨシ(田寄)から。タヨシは,神の霊を田に成して天皇に寄せたところから(大言海・雅言考・菊池俗語考),
豊かである意の形容詞タシケシの語根タシにイが関わってトシとなる(続上代特殊仮名音義=森重敏),7

等々がある。

速く過ぎるものであるところから,トシ(疾・敏)の義(和句解・日本釈名・和語私臆鈔・名言通・和訓栞・槙のいた屋・柴門和語類集・言葉の根しらべの=鈴木潔子),

は,僕には,後世の付会に思えてならない。やはり,

稲そのもの,
か,
稲のみのり,

から,それが熟成する期間へと広がったと見るのが妥当に思える。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


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