2018年01月20日

四方山話


「四方山話(よもやまばなし)」は,

世間話,

という意味だが,この「四方山」は,『広辞苑』には,

ヨモヤモの転,

とあり,『デジタル大辞泉』には,

「よもやも(四方八方)」の音変化か,

とある。『岩波古語辞典』は,「よもやも」に,

四面八面,

を当てている。つまり,

よもやも(四方八方・四面八面)→よもやま(四方山),

と転訛したということになる。

「四方山」は,

諸方,世間,天下,
四方にある山,
さまざま,雑多,

という意味で,「雑多」というのが,

四方山話,

の意味につながる。しかし,

四方(よも),

自体が,

東西南北,前後左右,
あちらこちら,諸方,

という意味だから,

四方(よも)→四方山(よもやま),

でいいのに,

四方→四方八方→四方山

とするのは,転訛が無理筋に見えてくる。『日本語の語源』は,

ヨオモ(四面)→ヨモ(四方),

を採る。『大言海』も,

四面(よおも)の約,

とする。これなら,

よおも→よも→よもやま(四方山),

と,自然な流れに見える。因みに,『大言海』は,

八方(やも),

の項で,

「八面(やおも)の約。よおも(四方)。よも」

と載せている。『岩波古語辞典』は,「よも」に,

四面,
四方,

を当て,

「(或る場所を中心にして)東西南北」

とする。「四方」は,

東西南北,

だとしても,「四方山」は,本来,『大言海』が意味の第一に挙げる,

四方の山々,

という意味だったのではないか。現に,『岩波古語辞典』にも,現在の『広辞苑』にも『デジタル大辞泉』にも,その意味が残っている。それなら,

四方山話,

が,

四方の山々を見ながら,雑多なお喋り,

をしている情景が見える気がする。『語源由来辞典』は,

http://gogen-allguide.com/yo/yomoyamabanashi.html

は,

「よもやま話の『よもやま(四方山)』は『四方にある山』の意味でも用いられるが、『山』と付くのは『やも』が『やま』に変化した後に当てられたもので、『よもやも(四方八方・四面八面)』の音変化と考えられる。よもやまは、『四方八方』から『あちこち』『さまざま』『いろいろ』『世間』といった意味になり、そのような話題の話を『よもやま話』というようになった。」

と,

よもやも→よもやま,

という変化を採る。『日本語源広辞典』も,「よもやま」は,

「四方八方,ヨモヤモの転じた語」

とするし,『日本語源大辞典』も,「よもやま」の語源を,

四方八維(日本書紀通証),
四表八方(塵袋,壒囊鈔),
四方八面(俗語考)
四方八方・四面八面(国語音韻論=金田一京助),

と,あくまで,「よもやも」の転とする説が大勢だが。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

ラベル:四方山話
posted by Toshi at 04:54| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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