「四方山話(よもやまばなし)」は,
世間話,
という意味だが,この「四方山」は,『広辞苑』には,
ヨモヤモの転,
とあり,『デジタル大辞泉』には,
「よもやも(四方八方)」の音変化か,
とある。『岩波古語辞典』は,「よもやも」に,
四面八面,
を当てている。つまり,
よもやも(四方八方・四面八面)→よもやま(四方山),
と転訛したということになる。
「四方山」は,
諸方,世間,天下,
四方にある山,
さまざま,雑多,
という意味で,「雑多」というのが,
四方山話,
の意味につながる。しかし,
四方(よも),
自体が,
東西南北,前後左右,
あちらこちら,諸方,
という意味だから,
四方(よも)→四方山(よもやま),
でいいのに,
四方→四方八方→四方山
とするのは,転訛が無理筋に見えてくる。『日本語の語源』は,
ヨオモ(四面)→ヨモ(四方),
を採る。『大言海』も,
四面(よおも)の約,
とする。これなら,
よおも→よも→よもやま(四方山),
と,自然な流れに見える。因みに,『大言海』は,
八方(やも),
の項で,
「八面(やおも)の約。よおも(四方)。よも」
と載せている。『岩波古語辞典』は,「よも」に,
四面,
四方,
を当て,
「(或る場所を中心にして)東西南北」
とする。「四方」は,
東西南北,
だとしても,「四方山」は,本来,『大言海』が意味の第一に挙げる,
四方の山々,
という意味だったのではないか。現に,『岩波古語辞典』にも,現在の『広辞苑』にも『デジタル大辞泉』にも,その意味が残っている。それなら,
四方山話,
が,
四方の山々を見ながら,雑多なお喋り,
をしている情景が見える気がする。『語源由来辞典』は,
http://gogen-allguide.com/yo/yomoyamabanashi.html
は,
「よもやま話の『よもやま(四方山)』は『四方にある山』の意味でも用いられるが、『山』と付くのは『やも』が『やま』に変化した後に当てられたもので、『よもやも(四方八方・四面八面)』の音変化と考えられる。よもやまは、『四方八方』から『あちこち』『さまざま』『いろいろ』『世間』といった意味になり、そのような話題の話を『よもやま話』というようになった。」
と,
よもやも→よもやま,
という変化を採る。『日本語源広辞典』も,「よもやま」は,
「四方八方,ヨモヤモの転じた語」
とするし,『日本語源大辞典』も,「よもやま」の語源を,
四方八維(日本書紀通証),
四表八方(塵袋,壒囊鈔),
四方八面(俗語考)
四方八方・四面八面(国語音韻論=金田一京助),
と,あくまで,「よもやも」の転とする説が大勢だが。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
ラベル:四方山話