ばてる


「ばてる」は,

疲れてぐったりする,疲れて動けなくなる,

という意味であるが,「ばてばて」という擬態語があり,『擬音語・擬態語辞典』には,「くたくた」と比較して,「ばてばて」は,

「体力がなくなったことに重点を置く『へとへと』に対して,『ばてばて』は,途中で体力がなくなることに重点を置く」

とある。てっきり,この「ばてばて」から,「ばてる」がきたものと思ったが,『広辞苑』には,

「『果てる』の転か。もとスポーツや競馬で用いた語」

とある。

http://yain.jp/i/%E3%81%B0%E3%81%A6%E3%82%8B

にも,

「『疲れ果てる』の『果てる』が語源で、意味を強めるために濁音にしたと考えられる。」

とある。『日本語源広辞典』も,同じく,

「『果てる』の音韻変化でバテルです。労働で汗を流しすっかり疲れてぐったりする意です」

とある。

http://zatsugakuki.blog78.fc2.com/blog-entry-389.html

には,「バテる」の語源を,

省略説 「疲れ果てる」の「果てる」が「ばてる」に変わったという説。
競馬用語説 走っていた馬が疲れて足がもつれることを「ばたばたになる」と言う。それが縮まり「ばてる」になったという説。

と二説が載っていたが,どうもやはり,

果てる,

に軍配が上がりそうである。『岩波古語辞典』は,「果て」「泊て」とあてて(下二段活用),

「時の流れとともに一つの路線を進んでいる物事の成りゆきが,いつの間にか限界・終極に達する意。類語ヲワリ(終)は,時間とともに展開することが一つ一つ順次なしとげられて,完結する意」

とあり,「果てる」は,不意にやってくる感が強そうだ。『大言海』は,「果つ」を,

端(は)を活用す,

とする「端」を見ると,

辺(へ)に通ず,

とある。「辺」をみると,

端方(はしへ)への意と云ふ,

とある。

https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/1415/meaning/m0u/

は,

ばてる,
くたばる,
へたばる,
へばる,

を比較し(類語例解辞典),

「四語ともくだけた会話の中で、ほぼ同じような意味合いで使われるが、『へたばる』には力が抜けたり、疲れ果てたりして座り込むという意味もある。」

とした上で,次のような 「対比表」をまとめている。

強行軍で………暑さで……疲れてその場に…
ばてる  ○……○…………-
くたばる ○……○…………-
へたばる○……○…………○
へばる  ○……○…………-

「へばる」と「へたばる」は,「へたへた」から来ている。「ばる」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/456476232.html?1516997773

で触れたように,「しゃっちょこばる」「四角張る」のように,状態を指すので,語感は「へばる」の方が付かれている感じがあるが,同列かもしれない。

「くたびれる」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/456430348.html?1516825038

で触れたように,この関係は,

つかれる→くたびれる→へたばる(へばる)→くたばる,

と疲労度が増していくのを比較してみたが,「くたばる」が,

「クタクタ+ヘタバルの混淆語」

で,「へたばる」は,

ひれ伏す,平伏する,
弱って座り込む,

という意味なので,「ばてる」は,

くたびれる→へたばる(へばる),

の間ではなく,

へたばる(へばる)→くたばる,

の間で,

つかれる→くたびれる→へたばる(へばる)→ばてる→くたばる,

という感じであろうか。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

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