2018年01月30日

つらつら


「つらつら」は,

熟々,
倩々,

と当てて,

つくづく,
よくよく,
念入りに,

という意味である。「熟」という字は,

「享は,郭の字の左側の部分で,南北に通じた城郭の形。つき通る意を含む。熟の左上は,享の字の下部に羊印を加えた会意文字で,羊肉にしんを通すことを示す。熟は丸(人が手で動作するさま。動詞の記号)と火を加えた文字で,しんに通るまで軟らかくすること」

とある。「熟」は,

煮る,
とか,
熟れる,

という意味だが,

熟考,
熟視,

といった,「つらつら」と同じ,「奥底まで詳しいさま」の意でも使う。この当て字は慧眼である。

https://okjiten.jp/kanji971.html

によると,「熟」の字は,

熟.gif


「会意兼形声文字です(孰+灬(火))。『基礎となる台の上に建っている。先祖を祭る場所の象形と人が両手で物を持つ象形』(『食べ物を持って煮て人をもてなす』の意味)と『燃え立つ炎』の象形から、『よく煮込む』を意味する『熟』という漢字が成り立ちました。」

とある。ついでながら,「倩」の字は,

「『人+音符靑(セイ)』で,清らかにすんだ人のこと」

で,どうも「すっきりした男」「いきなさま」の意味以外ではなく,「つらつら」の意で使うのは,我が国だけのことらしい。何が曰くがあってこの字を当てたのだろうか。

『大言海』も「倩」の字を当てているが,

「連々(つらつら)の義,絶えず続きての意」

とし,

名義抄「倩 ツラツラ」「熟 つらつら」

を引用している。さらに,

「遊仙窟(唐,張文成廿六)『新婦錯大罪過,因廻頭熟視下官曰,新婦細見人多矣』」

を引きつつ,

熟視(つらつら),
細見(つらつら)

と,ルビを振っている。『岩波古語辞典』は,「つらつら」を,「よくよく」の意で,

名義抄「熟 ツラツラ・コマヤカニ・クハシ」「細 コマヤカナリ・クハシ」

とより精しく引用した上で,他に,

すらすら,

の意を載せ,

「御涙にぞむせびつつ,つらつら返事もましまさず」(浄瑠璃・むらまつ)

を引用する。もし「つらつら」が,「連々」とするなら,

「つらつら返事もましまさず」

という使われ方はあり得る。『日本語源広辞典』は,

「『連ね連ね』の約です「連連(つらつら)が語源」

とする。『日本語源大辞典』は,大言海説の他,

ツラツラ(連々)の義。不断の意から転じた(日本古語大辞典=松岡静雄),

も載せる。他に,

ツヅラ(蔓)から派生した語(国語溯原=大矢徹),
ツラはツレア(連顕)の約(国語本義),

と,「連」と関わる説が多い。この他の説は,

ツラは,ツヨシ(強)のツヨ,ツユ(露),ツラ(頬・面)と同源(続上代特殊仮名音義=森重敏),

がある。つなみに,「つら(面)」も,『日本語源広辞典』によれば,

「『ツラ(頬)』です。ヨコッツラ,ウワッツラ,左ッツラなど頬の意です」

とあるが,『大言海』の「つら(頬)」の項には,

「左右の連なる意」

とあり,「つら(面)」は,

「つら(頬)の転」

とある。『岩波古語辞典』には,

「古くは頬から顎にかけての顔の側面をいう。類義語オモテは正面・表面の意。カホは他人に見せること,見られることを特に意識した顔面」

とあり,連なる,ということとつながる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)


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