2018年02月02日

たつ(竜)


「たつ」は,

竜,

と当てて,『広辞苑』には,

「タチ(古代語で神祇の意)からか」

とある。「りゅう(漢音はリョウ 龍)」と同じである。なお,「竜」と「龍」の字は,「竜」が古字であるようだ。「竜」の字は,象形文字で,

「頭に冠をかぶせ,胴をくねらせた大蛇の形を描いたもの。それに,いろいろな模様を添えて龍の字となった」

とある。

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%BE%8D

には,

「もとは、冠をかぶった蛇の姿で、「竜」が原字に近い。揚子江近辺の鰐を象ったものとも言われる。さまざまな模様・装飾を加えられ、『龍』となった。」

とある。

300px-龍-oracle.svg (1).png

(殷・甲骨文字)

300px-龍-bronze.svg (1).png

(西周・金文)


「たつ」の語源について,『日本語源広辞典』は,

「『立つ』です。身を立てて,天に昇って行く動物の意」

とし,『大言海』は,

「起(た)つ義か」

とする。夕立の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/456384452.html?1516651376

で触れたように,『広辞苑』は,「夕立」の項で,

「一説に,天から降ることをタツといい,雷神が斎場に降臨することとする」

としているので,「立(起)つ」と「たつ(竜)」の関係は気になる。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ta/tatsu_ryuu.html

も,

「竜(龍)は呉音で『りゅう』、漢音では『りょう』といい、『たつ』は日本での読み方である。竜(龍)を『たつ』というのは、身を立てて天に昇ることから『たつ(立・起)』また『たちのぼる(立ち昇る)』の意味とする説。『たかとぶ(高飛)』または『たかたる(高足)』の反で、『たつ』になったとする説。『はつ(発)』の意味から、『たつ』になったとする説がある。竜は蛇と体が似ており、日本では蛇と混同されていたこともあるため、蛇に対して竜を『身を立てて天に昇る蛇』と考え、『たつ(立・起)』また『立ち昇る』からという説が妥当であろう。」

としている。「た(立)つ」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/399481193.html?1516059244

で触れたことがあるが,

もともと坐っている状態が,常態だったのだから,

立つ,

ということはそれだけで目立つことだったのに違いない。そこに,

ただ立ち上がる,

という意味以上に,

隠れていたものが表面に出る,

むっくり持ち上がる,

と同時に,それが周りを驚かす,

変化をもたらす,

には違いがない。「立つ」の語源は,『日本語源広辞典』にある,

「タテにする,地上にタツ」

と見なすのが妥当で,それが中国由来の龍につながるのは自然に思える。

「日本語にない,立つ,起つ,建つ,発つの区別は,中国語源に従う」

ということだろう。

「龍」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/447506661.html

で触れた。

「九龍図巻」陳容画(南宋).jpg

(「九龍図巻」陳容画(南宋)、ボストン美術館蔵)


参考文献;
https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%BE%8D
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

ラベル:たつ(竜)
posted by Toshi at 05:08| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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