「たつ」は,
竜,
と当てて,『広辞苑』には,
「タチ(古代語で神祇の意)からか」
とある。「りゅう(漢音はリョウ 龍)」と同じである。なお,「竜」と「龍」の字は,「竜」が古字であるようだ。「竜」の字は,象形文字で,
「頭に冠をかぶせ,胴をくねらせた大蛇の形を描いたもの。それに,いろいろな模様を添えて龍の字となった」
とある。
https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%BE%8D
には,
「もとは、冠をかぶった蛇の姿で、「竜」が原字に近い。揚子江近辺の鰐を象ったものとも言われる。さまざまな模様・装飾を加えられ、『龍』となった。」
とある。
(殷・甲骨文字)
(西周・金文)
「たつ」の語源について,『日本語源広辞典』は,
「『立つ』です。身を立てて,天に昇って行く動物の意」
とし,『大言海』は,
「起(た)つ義か」
とする。夕立の項,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/456384452.html?1516651376
で触れたように,『広辞苑』は,「夕立」の項で,
「一説に,天から降ることをタツといい,雷神が斎場に降臨することとする」
としているので,「立(起)つ」と「たつ(竜)」の関係は気になる。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/ta/tatsu_ryuu.html
も,
「竜(龍)は呉音で『りゅう』、漢音では『りょう』といい、『たつ』は日本での読み方である。竜(龍)を『たつ』というのは、身を立てて天に昇ることから『たつ(立・起)』また『たちのぼる(立ち昇る)』の意味とする説。『たかとぶ(高飛)』または『たかたる(高足)』の反で、『たつ』になったとする説。『はつ(発)』の意味から、『たつ』になったとする説がある。竜は蛇と体が似ており、日本では蛇と混同されていたこともあるため、蛇に対して竜を『身を立てて天に昇る蛇』と考え、『たつ(立・起)』また『立ち昇る』からという説が妥当であろう。」
としている。「た(立)つ」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/399481193.html?1516059244
で触れたことがあるが,
もともと坐っている状態が,常態だったのだから,
立つ,
ということはそれだけで目立つことだったのに違いない。そこに,
ただ立ち上がる,
という意味以上に,
隠れていたものが表面に出る,
むっくり持ち上がる,
と同時に,それが周りを驚かす,
変化をもたらす,
には違いがない。「立つ」の語源は,『日本語源広辞典』にある,
「タテにする,地上にタツ」
と見なすのが妥当で,それが中国由来の龍につながるのは自然に思える。
「日本語にない,立つ,起つ,建つ,発つの区別は,中国語源に従う」
ということだろう。
「龍」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/447506661.html
で触れた。
(「九龍図巻」陳容画(南宋)、ボストン美術館蔵)
参考文献;
https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%BE%8D
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8