2018年02月05日
わかる
「わかる」は,
分かる,
解る,
判る,
別る,
と当て分ける。『岩波古語辞典』は,「わけ」(下二段活用)について,
「一体であるものに筋目を入れて二つまたはそれ以上に離す意」
とある。だから,
分割する,
であり,
仕切を付ける,
意であり,
事の筋道がはっきりする,
であり,
判明する,
意に繋がり,名詞化すれば,「わけ」は,
区別,
となり,
分別,
となり,
物事の筋道や道理,
となり,
事情,訳,
へとなっていく。
しかし,根本は,
わかつ,
意である。「分」「解」「判」「別」の字を当てて,意味を区切ったが,区切ったことで,意味が截然としたと言える。だから,『日本語源広辞典』は,「わかる」の語源を,
「『分カル』です。二つのものが,はっきりと,はなればなれになることを,ワカルという。現在では,分かるの漢字を使い,理解する意で使います。分けることができるというのが語源です。」
とするし,『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/wa/wakaru.html
も,
「わかるは、『わける(分ける)』と同源。 混沌とした物事がきちんと 分け離されると、明確になることから。 似た意味をもつ言葉で、『分ける』の意味に通じる 語には、『理解』『区別』『判別』『分別』『ことわり・ことわる』『わきまえる』など多くある。」
としている。さらに,
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1228751687
も,
「『分かる』とは、『分ける』と言うことである。『分かる』と『分ける』は同語源である。『理解する』とは『分ける』と言うことである。『理解する』ためには『分割』しなければならない。『理解する』ためには『分別』しなければならない。『分別』の『分かれる』と『別れる』も、日本語的に同じ語源である。」
とある。これが大勢の意見で,一応理屈は通る。しかし,『大言海』は,「わかる」を二項に分け,いずれも,別・分の字を当て,
「(分(わく)の自動,別けらるるの約転か)心に解(げ)し知る,会得す,合点す,了解/はかる,離る,別になる」
と
「(我離(わか)るの義)ひとつひとつになる,はなる,別になる/離散/離れて相見がたくなる/出て支(えだ)をなす」
と別々に載せる。『大言海』は,「離れる」意の「わかる」と「理解する」意の「わかる」は,語源が別,と言っているのである。この説に従えば,元来は,「わかる」は,
我離(わか)る,
と,はなればなれになる,という意味であったということになる。これが,「わかれる」意となる。他方,理解する意の「わかる」は,「わかつ」意の,
わかる(わく),
が,
(境界をしっかり見定め)区分する,弁別する,識別する,
(ものごとの理非を)わきまえる,
という意味だったということになる。たとえば,
http://s.webry.info/sp/mobility-8074.at.webry.info/201704/article_8.html
「『分かる』 は『分かれる・分ける』と同源のことばなのです。
まず『分かれる』『分ける』の語源は,『わかる (我離る) 』あるいは『わたりかる (渡り離る)』だとされています。古語辞典にの見出し語に『かる (離る)』があります。意味は,〈離れる〉〈遠ざかる〉〈間をおく〉というようなことです。『わかる (我離る)』 は 〈自分が (誰かから) あるいは (今いる場所から) 離れる〉ことですから,いわゆる『お別れ』などの意味の『別れる』でしょうか。『わたりかる (渡り離る)』 も,〈移動させて離ればなれにする〉ことですから,〈物や事柄を 2 つ以上に仕分けする〉という意味の 「分ける」 になります。
一般的には,物や事柄を〈 2 つ以上にグループ分けする〉ことを『分かれる』『分ける』と言いましたが,そのうち,特に〈人が離ればなれになる〉場合を『別れる』の漢字で使い分けるようになりました。」
と,説いている説もあるが,逆に言うと,もともと,「わける」と「わかる」は別々なのであり,しかも,「わかる」は,「分解する」意から「理解する」の「わかる」が出たのではなく,和語としては,「わかる」には,区分する意と,理解する意があった,ということになるのではあるまいか。
最後に,「わかる」の微妙な意味の区分を「分」「解」「判」「別」の字を当てて使い分けているが,その漢字を確かめておくと,「分」の字は,
「『八印(左右にわける)+刀』で,二つに切りわける意を示す。払(フツ 左右にほけてはらいのける)は,その入声(ニッショウ つまり音)に当たる。また,半・班(わける)・判(わける)・八(二分できる数)・別とも縁が近い。」
とあり,「わかる」の当て字としては,似た意味である(「分解」「分割」)。
「判」の字は,
「半は,『牛+八印(わける)』の会意文字で,牛のからだを両方にきりわける意を示す。判は『刀+音符半』で,半の後出の字。もと,刀で両分することを示すが,のち可否や黒白を区別し見わける意に用いる。」
とあり,「わける」というより,「わかつ」という意味で,「みわける」「区別する」という含意がある。「判決」「判断」と使われるわけである。
「別」の字は,
「骨の字の上部は,はまりこんだ上下の関節骨。別は,もと,それに刀を加えた字で,関節を刀でバラバラに分解するさまを示す」
とあり,「わかれる」「はなればなれになる」という意味である。
「解」の字は,
「『角+刀+牛』で,刀で牛のからだやつのをバラバラに分解することを意味する」
とある。「ばらばらにしてときほぐす」「とく」という意味である。
「分」「解」「判」「別」の字は,いずれも,「刂」「刀」と,刀に関わる字で,本来,物理的に分解することと関わっていたようである。「わかる」と同様「わかつ→わかる」と,つながる意味の広がりに見える。「分」「判」「別」「解」の使い分けは,
「分」は,合の反対,物を別々に分ける義,
「判」は,分に,断の意を兼ねぬ。判断。
「別」は,弁別と連用す,彼は彼,此は此と,区別して,混ぜざる義,
「解」は,判なり。刀をもって牛角を判(わか)つ。解剖。
となる。この漢字に依って,「わかる」に「わける」の陰翳が加わったように見える。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
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