2018年02月08日

猪突猛進


「猪突猛進」という言葉がある。

むこうみずに,猛然と突き進むこと,

を意味する。確かに,猪にはそんなイメージがつきまとう。

猪武者,

というのは,

前後の考えもなく,無鉄砲に敵に向かって突進する武者,

である。こういうのは,蔑みの対象である。

匹夫之勇,

とも言う。

思慮分別がなく,ただ血気にはやる勇気,

を指す。

小勇,
小人之勇

とは言い得て妙である。『論語』(子罕篇)に,

「子曰く,三軍(さんぐん)も帥(すい)を奪うべきなり。匹夫も志を奪うべからざるなり。」

とある。しかし,『孟子』に,

「王曰く,…寡人(かじん) には疾(やまい)有り,寡人勇を好むと。対(こたえ)て曰いわく,王請う小勇を好むこと無(なか)れ。夫(か)の剣を撫(にぎ)り疾視(めをいから)して,彼悪(いずく)んぞ敢て我に当らんや曰(い)う(が如き)は,此匹夫の勇にして、一人に敵する者なり。王,請う之を大だいにせよ。」

と。勇を恃むを戒めているのは,「虎嵎を負う」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/456719697.html?1517947992

で触れた,

「孟子曰く、是れ馮婦(ふうふ)を為(まね)するなり。晉人に馮婦といえる者あり,善く虎を搏(てうち)にせり。卒(のち)に善士と爲りて野に之(ゆ)けるとき,衆虎を逐(お)えるあり。虎嵎(ぐう)に負(ちたの)み,敢て攖(ちか)づくものなし。馮婦を望み見て,趨(はし)りて之を迎う。馮婦臂を攘(かか)げて車を下る。衆皆之を悦びしも,其の士たる者之を笑えり。」

にある,「馮婦」の「嵎を負う虎」に素手で立ち向かう蛮勇と同じである。孔子は,それを,

暴虎馮河,

とした。『論語』(述而篇)で,

「暴虎馮河し,死して悔いなき者は,吾与にせざるなり。必ずや事に臨みて懼れ,謀を好みて成さん者なり」

と,まさにそれを諷している。『笑える国語辞典』

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%A1/%E7%8C%AA%E7%AA%81%E7%8C%9B%E9%80%B2%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B/

は,「猪突猛進」について,

「猪突猛進とは、イノシシの名刺代わりのキャラクターであり、目的に向かって脇目もふらず突き進んでいく様子を例えた言葉。しかしその『突進』の背景には『計画性がない』『周囲の状況を無視』『後退できない』『融通が効かない』といった負の要素が満載で、結局のところ『猪突猛進』は、『おバカな突進』といった意味あいで用いられる場合が多く、誉められたところでせいぜい『がむしゃらに頑張ってるね』程度の含みがあるにすぎない。」

というのが,よく含意を伝えている。古い時代,戦さ場で,

抜駆(懸)け,

を嫌うのは,全体の計画を無視して,おのれの功のみを考える蛮勇故であろう。

http://www.minyu-net.com/serial/yoji-jyukugo/yoji0621.html

に,

「『猪突』の二字は『漢書(かんじょ)』(前漢時代の歴史)に漢王朝を一時乗っ取った王莽(おうもう)が囚人らで組織した軍隊の名に見える。また王莽は「豨勇(きゆう)」という名の軍隊も組織し、合わせて『猪突き勇』と称した。死をも恐れずつき進む勇猛な軍隊だったようだ。」

とある。この「豨勇」と関わるが,「猪突猛進」と似た言葉で,

猪突豨勇(きゆう),

という言葉がある。

豨勇,

とも言うらしい。「豨」は,

大きな猪,

を意味する,と『広辞苑』には載る。で,「猪突猛進」と同じく,

あとさきかまわず突進する,

意となる。しかし,『デジタル大辞泉』には,

「『漢書』食貨志から。『豨』はイノシシの子の意」

として,

「イノシシやイノシシの子のように、あとさきを考えずに突き進む勇気。また、そうした勇気のある人。猪勇。」

とある。「猪の子」というなら,

猪突猛進,

猪突豨勇,

とは少しニュアンスが変わる。子供なら笑って許されることも,大のおとながするとなると,冗談では済まされない。手元の漢和辞典では確認ができなかったが,無鉄砲でも,両者のニュアンスは異なるだろう。

類語に,

直情径行,

がある。少しニュアンスは違うが,感情のまま発信するところは同じである。

「直情にして径行する者有り,戎狄(じゅうてき)の道なり」(礼記)

とあるので,結果は同じである。

参考文献;
小林勝人訳注『孟子』(岩波文庫)
貝塚茂樹訳注『論語』(中公文庫)
田部井文雄編『四字熟語辞典』(大修館書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

posted by Toshi at 05:15| Comment(0) | 別れ方 | 更新情報をチェックする
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