2018年03月03日

おとずれる


「おとずれる(おとづる)」は,

訪れる,

と当てる。『岩波古語辞典』には,

相手を訪ねる,
音信する,
声を掛ける,

という意味が並ぶが,『広辞苑』には,

音を立てる,
人を訪ねる,
(ある時期・状況などが)やってくる
手紙で安否を問う,

という意味が並ぶ。「音を立てる」という意味が,「おとずれる」という言葉の由来を何か示しているようだ。「とむらう」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/457294689.html?1519935277

で触れたように,『岩波古語辞典』の「おとづれ」の項に,

「音連レの意。相手に声を絶やさずにかける,手紙を絶やさずに出す意が原義」

とあり,関連する「おとなう(ふ)」が,やはり,

「音を立てる動作をするのが原義。ナヒは,アキナヒ(商)・ツミナヒ(罪)・うべなひ(諾)などのナヒに同じ」

とあり,「おとなひ」は,

音を立てる,
声を立てる,
(門口で咳払いをしたり扇子を鳴らしたりして音を立て,来訪を知らせるので)訪問する,
便りをする,

と,ほぼ「おとずれる」と意味が重なるが,より「音」の意味が強い。

『大言海』より両者の関係を強調している。「おとづる」の項で,

「音は,オトラフと同じく,ツルは,連るるなるべし」

とあり,「おとなふ」は二項立て,

響,

を当てた「おとなふ」は,

「ナフは,行ふ意。自動詞となる,寇(あた)なふ,幣(まひ)なふ(賄)」

とし,

音,發(た)つ。ひびく,

という意味を載せ,

訪問,

と当てた「おとなふ」は,

「響(おとな)ふに同じ。人家の門にモノマウの聲を發する意なるべし」

とし,

訪れる,

意とする。一層,「おと」由来らしく見えてくる。因みに,「ものまう」は,

「(物申すの略)他家を訪問するときに使う挨拶のことば」

で,いまふうに言うと,ごめんください,の意となる。

『日本語源広辞典』は,「おとずれる」は,

「音+づる(動詞化)の下一段化」

「おとなう」は,

「音+なふ(動詞化)」

で,「音を立てる」「声をかける」意で,「おとなう」と同源,とある。どうやら,「音」を立てることは,他家の前では,来訪を知らせるために必要な行為だったらしい,とうかがわせる。

『日本語源大辞典』は,「おとなう」について,

「名詞『音』に,ある現象を生じる意の接尾語『なふ』の付いてできた語で,音がする,聞えるというのが原義であろう」

とある。また,「おとづれる」は,

ツルはツ(連)ルルか(大言海),
音に連れそう義(和訓栞),
音連ルの意。相手に声を絶やさずかける,手紙を絶やさずに出す意が原義(岩波古語辞典),
オトヅレはアタツレ(当行)の転(柴門和語類集),音を立てる意から,戸を叩くことの印象が強くなり,訪問の意になる(国文学の発生=折口信夫),

と,やはり,「音」を立てることとつながる。手紙は後のこととして,人の家を訪ねたときに,特別の合図として,音を立てたのかもしれない。

「おと」は,「音」と当てるが,「音」の字は,

「言という字の口の部分の中に,・印を含ませたもの。言は,はっきりとけじめをつけたことばの発音を示す。
音は,その口に何かを含み,ウーと声を出すことを示す」

とある。『漢字源』には,

「朽ちを塞いで出す,ウーという含み声。生態を振るわせて出るおと」

とあり,

「舌や脣などの調整が加わった声を『言』といい,調整の加わらない声を『音』といった」

とある。どうやら擬音語らしい。

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9F%B3

には,

「『言』の『口』の部分に点を打ち、言葉を発するのに、いったん口に入れる意を表わす(藤堂)」
「『口』は神器であり、それに針を置き誓いを述べる意(白川)。」

という語源説も載る。和語「おと」も,『日本語源広辞典』によると,擬音語らしい。

音.png

(金文 西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9F%B3より)

音Ⅱ.png

(簡帛文字 戦国時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9F%B3より)


参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9F%B3

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

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