2018年03月17日

眉唾


「眉唾」は,

欺かれないように用心すること,

の意だが,よく唾を眉につける仕草で表現したりする。『広辞苑』には,

「眉に唾をつければ,狐狸にだまされないという俗信に基づく」

とある。『岩波古語辞典』には載らないが,『大言海』にも,

「眉に唾をつくれば,狐狸に魅せられずと云ふに出づ」

とある。

眉に唾をつける,
眉に唾をする,
眉毛を濡らす,
眉を湿す,
眉に唾を塗る,

等々とも言う。『江戸語大辞典』に,多くの言い方が載っているところから見ると,この時代発祥かと思われる。で,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ma/mayutsuba.html

は,

「眉唾とは、騙されないよう用心すること。眉唾物の略で、真偽の確かでないもの。信用できないもの。眉唾もの。 」

と,意味を載せる。この意味の方が分かりやすい。その由来を,

「眉に唾をつければ狐や狸に 化かされないという俗信から生まれた言葉である。江戸時代には『眉に唾をつける』や『眉に唾を塗る』などと言っていたものが、明治時代に入り、『眉唾物』や『眉唾』という 言い方になった。」

とある。『故事ことわざ辞典』は,『俚言集覧』から,

「眉につばをする 眉に唾を塗れば狐に魅せられぬといへり。因って人に欺かれぬ用心に云ふ詞なり。彼を狐狸に比していふなり」

を引いている。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1176353986

には,その謂れについて,

「狸や狐が人を化かすと信じられていた頃、眉につばをつけると化けているものの正体がわかるとされていた。よって、疑わしい物は眉につばをつけて見ると正体がわかることより、転じて疑わしい物を『眉唾もの』というようになった。 親から聞いたことですが、小さい頃から信じてます。
唾には、魔力を封じる力があると信じられていました。(平安時代、陰陽道が信じられていた時代です) (大ムカデ退治で、矢に唾を塗って射たら刺し貫けたというのもありますよね) そして、眉に唾を塗ると、魔術から開放されて、本当の姿が見えると信じられていたのです。ですから、「眉に唾を塗る」というのは「だまされている、たぶらかされているのではないかと疑って、その魔力から逃れようとする」という意味をもっているのです。そこから、眉唾ものというのは、信じられない(だまされている、たぶらかされている)もの という意味で使われるようになったのです。  
語源1・平安時代にいた豪傑が山で大ムカデに出会い、大ムカデの噴く炎で危うく自分の眉毛が焼けそうになった。そこで眉毛に自分のツバをつけてこれをしのぎ、さらに弓矢にもツバをつけて大ムカデを射殺したと言う話から、あまりに荒唐無稽な話を「まゆつば」と言う様になったと言う説。
語源2・ツバを眉毛に付ければ、キツネやタヌキに化かされないと言う説。
昔の子供は転んで傷をつくったとしても、指で舐めてツバを付け、それを傷口に擦り付けおまじないを言ってそれで終わりだった。このツバを付けるという行為は、古代の日本では、ツバは神聖なもので霊力があるとさえ言われていて、霊力のあるツバを眉毛に付ければ、キツネやタヌキに化かされないと言う言い伝えも有る。 キツネ等が人を化かす時、その人の眉毛の数を数えて化けると言われていたので、数えられないように眉毛にツバを塗った事から『まゆつば』と言う言葉が誕生した。この化かす化かさないから、騙す騙さないとか真偽の程が不明な事に対して『眉唾、眉唾物』などと表現されるようになったとする説が一般的な様子です。江戸後期の人情本『春の若草』に「眉毛へツバを付て聞かねへと」等の用例が見受けられます。 他の説では、古代中国並びに平安時代に『眉毛にツバを付ける』ことで災難を逃れる逸話があって、どちらも余りにも荒唐無稽な話なので、ここから半信半疑で真偽の程がわからない事・物に対して『まゆつば』と表現されるようになったと有ります。」

と詳しい。「狐に魅せられない」云々は,

http://www.wikiwand.com/ja/%E3%82%AD%E3%83%84%E3%83%8D

にあるように,「キツネは女に化けることが多い」からのようで,それは,

「キツネが陰陽五行思想において土行、特に八卦では『艮』に割り当てられることから陰気の獣であるとされ、後世になって『狐は女に化けて陽の存在である男に近づくものである』という認識が定着してしまったためと考えられる。関西・中国地方で有名なのは『おさん狐』である。このキツネは美女に化けて男女の仲を裂きにくる妖怪で、嫉妬深く男が手を焼くという話が多数残っている。キツネが化けた女はよく見ると、闇夜でも着物の柄がはっきり見えるといわれていた。」

とある。この他,

http://okiteweb.com/language/mayutsuba.html

には,「眉に唾つけると狐にだまされない」という俗信の由来について,二説挙げている。

「一つ目は、キツネは人の眉毛の数を数えて化けたり騙したりすると考えられていて、眉毛の数を数えられて化かされないように、眉毛に唾を塗ることで固めて、キツネに眉毛の数を数えさせないためという説です。
 二つ目は、平安時代の豪傑が、山の中で炎をふく大ムカデに出会い、炎に眉毛を焼かれそうになったので、眉毛に唾をつけてそれをしのいで大ムカデを倒したという話があり、そこから、そのような荒唐無稽な話のことを『眉唾物』「眉唾」というようになったという説です。」

さらに,

http://www.tisen.jp/tisenwiki/?%C8%FD%C2%C3

は,

「語源1  平安時代にいた豪傑・俵藤太・藤原秀郷が近江三上山で大ムカデ退治をしたと言う逸話が伝承されている。どうも八又の大蛇(やまたのおろち)などと同じ様な豪傑が山に住む魔物を退治したパターンの荒唐無稽な英雄活躍談の1つなのだが、この時、大ムカデの噴く炎で危うく秀郷の眉毛が焼けそうになった。そこで秀郷は眉毛に自分のツバをつけてこれをしのぎ、さらに弓矢にもツバをつけて大ムカデを射殺したと言う。ここから、あまりに荒唐無稽な話を『まゆつば』と言う様になったと言う説があります。
語源2  古代中国の伝説では、鬼に出くわした時は、自分の眉毛にツバを付ければ必ず鬼が逃げ出したと言われていた。何故なのか判らないが、これは日本で1970年代末に流行った都市伝説『口さけ女』がポマードと言われると逃げ出すと言う伝承に近い物なのかも知れない。しかし、やはり荒唐無稽な話なので『まゆつば』と言われるようになったと言う説があります。
語源3  昔の子供は、転んで傷を作ったとしても、指に舐めてツバを付け、それを傷口になすりつけ『チチンプイプイ』とおまじないを言ってそれで終わりだった。実はこのツバを付けるという行為は、動物も行う自然治癒の方法だったりする。その為か、古代の日本では、唾(ツバ)は神聖なもので、霊力があるとさえ言われていた。『古事記』に書かれている海幸山幸?の逸話の中では、器の中に珠を入れ、さらにそこへツバを吐いて約束の強固なことを確かめたりしている。霊力のあるツバを眉毛に付ければ、キツネやタヌキに化かされないと言う言い伝えもある。
これはキツネなどが人を化かす時、その人の眉毛の数を数えて化けると言われていた(何故かは判りませんが)ので、数えられないように眉毛にツバを塗った事から『まゆつば』と言う言葉が誕生したと言う説もあります。」

と詳細な語源説を挙げている。「つば」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/457938309.html

で触れたように,どちらかというと,古代,「つー」という唾の垂れる擬態語に近い。つまりさほどの霊力を示す謂れのある言葉には思えなかった。「唾」に霊力というのは,為にする説で,いささか「眉唾」な気がする。そもそも,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/433049053.html

で触れたように,「きつね」の化けた女性は,情が深いのである。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

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posted by Toshi at 04:30| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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