2018年03月25日
セミ
「セミ」は,
蝉(蟬),
蜩,
と当てる。「蝉(蟬)」(漢音セン,呉音ゼン)の字は,
「『虫+音符單(薄く平ら)』。うすく平らな羽根をびりびり震わせて鳴く虫」
で,「せみ」を指す。「蟬」の字は,「嬋」に通ずというので「うつくし」という意味もある。なお,
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1158236041
によると,「蟬」の字は,
「『せみ』の漢字『蝉』の音読は、漢音で『セン』です。この『蝉』という漢字は、クマゼミの鳴き声の『シャンシャンシャン』に由来します。
また『蝉』という文字は『虫』+音符『單』の会意形声です。蝉はお腹に有る特別な膜(背板の内側にある膜)震わせて鳴くので、まさに『單(震えるという意味がある)』です。震えて鳴く虫ということで『蝉』とう漢字ができたのです。
そして、クマゼミの鳴き声『シャンシャンシャン』から『センセンセン』という擬音になり、『セン』という漢音になりました。
ちなみに現代中国音では『チャン』です。」
としている。「蜩」(漢音チョウ[テウ],呉音ジョウ[デウ])の字は,
「『虫+音符周(シュウ)』で,せみの声をまねた擬声語。中国人はせみの鳴声をテウテウと聞き取った。今は,『知了(チーリァオ)』と聞く」
とあり,やはり「せみ」を指す。「寒蜩」で,初秋に鳴く「ひぐらし」を意味する。「蜩」を「ひぐらし」と特定して使うのは,そのせいかもしれない。ただ「寒蜩」を,『字源』は「つくつくぼうし」としているので,「寒蜩」で,晩夏の蝉をくくっているのかもしれない(ただ,『靑蜩』『茅蜩』を「ひぐらし」と『字源』は区別しているが)。
『広辞苑』は,「セミ」を。
「『蟬』の漢音が和音化したものという説と,鳴き声によるという説とがある」
としているし,『日本語源広辞典』も,
「漢字音,蟬sem+(母音)i 」
「蝉の鳴声」
の二説を挙げているが,『大言海』は,
「鳴く聲を名とす。ミハ,ムシの約。蟬(セヌ)の音轉なりと云ふは非なり。天治字鏡八廿二『蟬 世比』。沖縄にて,シミ」
と,漢音転訛を否定する。『笑える国語辞典』
https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%9B/%E8%9D%89-%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%81%A8%E3%81%AF-%E6%84%8F%E5%91%B3/
は,
「『せみ』の語源については、セミの鳴き声が『せみせみ(せんせん)』と聞こえたからだとする説などがある。セミと言えば、まず鳴き声が連想される(その次に連想されるのは、道ばたで死んでいること)ので、自然な語源ではないだろうか。現代中国語では「蟬」の他、「知了zhiliao(チーリャオ)」という言葉が特に口語で用いられているそうだ。これも鳴き声から来ているらしい…。」
とみている。『日本語源大辞典』の,
セミセミ・センセンという鳴声から(風俗歌考・箋注和名抄・天朝墨談・名言通・傭字例・本朝辞源=宇田甘冥)
の例を見ると,鳴声説が妥当な気がする。
因みにアブラゼミは,『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/a/aburazemi.html
に,
「アブラゼミは、『ジジジジー』『ジージー』という鳴き声が、油で揚げる時の音に似ていることから付いた名 である。 『ミンミンゼミ』や『ツクツクボウシ』のように鳴き声のままでなく、『油』に喩えられ ている点で珍しい(『ジイジイゼミ』の別名はある)。 これは、翅に油の染みに似た紋が あることや、他のセミに比べて油っぽい印象があることも影響したと思われる。」
とあるように,「ひぐらし」の「かなかな」も含め,多く鳴声から来ている以上,「せみ」そのものが「蟬」の訓から来ているというのは,ちょっと解せない。あえて言うなら,「蟬」という抽象化した概念として,その言葉を使ったというなら話は別だが。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
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