2018年03月27日

さくら


「さくら」は,

桜(櫻),

と当てる。「桜(櫻)」の字は,

「嬰(エイ)は『貝二つ+女』の会意文字で,貝印を並べて。首に巻く貝の首飾りをあらわし,とりまく意を含む。櫻は『木+音符嬰』で,花が気をとりまいて咲く木」

を意味する。我が国では,「さくら」に当てる「桜(櫻)」だが,

「花が気を取り巻いて咲く『うすらうめ』」

を指す。中国では,「さくら」は,「桜花」(インホア)というらしい(『漢字源』『字源』)。

https://okjiten.jp/kanji305.html

には,

k-305.gif



「会意兼形声文字です(木+嬰)。『大地を覆う木』の象形と『子安貝・両手を重ねひざまずく女性』の象形(女性が『首飾りをめぐらす』の意味)から、首飾りの玉のような実を身につける『ゆすらうめ』を意味する」

とある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9

は,

「サクラを意味する漢字『櫻』は元はユスラウメを意味する文字だった。『櫻』の字は『首飾りをつけた女性、もしくは首飾りそのもの』を意味する『嬰』に木偏を付けたものであり、ユスラウメの実が実っている様子を指した漢字である。日本にユスラウメが入ってきたのは江戸時代後期頃のため、日本では『櫻』の字はサクラに転用された。」

とある。「ユスラウメ」は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%A1

に,

「ユスラウメ(梅桃、山桜桃梅、学名:Prunus tomentosa)は、バラ科サクラ属の落葉低木の果樹。サクランボに似た赤い小さな実をつける。俗名をユスラゴともいう。樹は開帳性の2〜3mの低木でよく分枝する。葉は楕円形で、葉脈に沿って凹凸があり、全体に細かい毛を生じる。桜に似た白色または淡紅色の花が葉腋に1つずつ咲き、小ぶりの赤または白の丸い果実をつける。」

とある。「さくら」より「梅」に似ている。

ユスラウメ.jpg



さて,「さくら」の語源であるが,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9

は,

「『サクラ』の語は有史以前からあり、『語源』があるのかどうかも不明である。としつつ,よく知られている,とする説を挙げている。:

「春に里にやってくる稲(サ)の神が憑依する座(クラ)である。これは天つ神のニニギと木花咲耶姫の婚姻の神話によるものが出どころ。
『咲く』に複数を意味する『ら』を加えたものとされ、元来は花の密生する植物全体を指した。
富士の頂から、花の種をまいて花を咲かせたとされる、『コノハナノサクヤビメ(木花之開耶姫)』の『さくや』をとった。」

と挙げている。『大言海』は,

「咲麗(さきうら)の約と云ふ。或は木花開耶姫(このはなさくやひめ)のサクヤの轉(あざやか,あざらか)」

とし,「木花(このはな)」の項で,

「木(こ)の葉,木(こ)の間,同趣」

とあり,

「特に櫻の称」

とある。「木に咲く花」を「さくら」と呼んだというのは,魅力的だ。「はな」といえば,梅の花か桜の花だから。しかし,

「春の花として愛好されるようになるのは平安時代以降」(『岩波古語辞典』)

とあるので,この場合,語源的には,違うように思う

http://www.yamashin-sangyo.co.jp/cherry_sub/sakura_2.html

も,説を整理して,

【第1の説】古事記や日本書紀に登場する神話の美しい娘「木花開耶姫(このはなさくやびめ)」の「さくや」が「桜」に転化したものだという説です。「木花開耶姫」は霞に乗って富士山の上空へ飛び、そこから花の種を蒔いたと言われています。そして、富士山そのものをご神体とした富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)は、全国で千以上に及ぶ浅間神社の総本社で、木花開耶姫を祭神としています。
【第2の説】さくらの「さ」は「サ神様」(主に田の神様)の意味で、「くら」は神様の居場所「御座」(みくら)を意味するという説です。田の神が桜の花びらに宿り、田に下りて稲作を守護するというのです。稲作りの始まりと桜の咲く時期が同じころなので、満開に咲く花の下で豊作を願ったのだと言われています。
【第3の説】「咲く」に、「達」という意味の接尾語「ら」が加わったというものです。群れて咲く桜は古来より、咲く花の代表であったことをあらわしていると言われています。

とするが,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/sa/sakura.html

は,

「語源は、動詞『咲く(さく)』に接尾語『ら』が付き、名詞になったものいわれる。さくらは奈良時代から栽植されたが、当時は田の神が来臨する花として、『信仰』『占い』のため に植えられることが多かった。そのため、『さ』は耕作を意味する古語『さ』、もしくは『神霊』を意味する『さ』を表し、『くら』は『座』を表すといった説もあるが、あまり有力とされてい ない。 古代に『サクラ』と呼ばれていたのは、現在の山桜のことであったとされる。」

と,「さく」「ら」説をとる。「さ」「くら(座)」説は,『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E6%A1%9C

のいうように,

「『さ』はさがみ(田神)からで穀霊、『くら』は神のよりつく座(くら)で、桜は穀霊のよりつく座の意とする…。古人は桜の花の咲き具合からその年の稲の豊凶を占ったといい、また、桜を農作業の目安にする風習は今なお残っている。」

あるいは,

http://ktb.hatenablog.com/entry/20050326/sakura

の,

「『サ』は(稲穂の)穀霊を意味する言葉、『クラ』は稲の神様が降臨する磐座(イワクラ)の意味で、つまり『さくら』は稲、農耕の神様が宿る木という説。田植え前に豊作を祈願した神事が花見の起源ともいわれている。」

と言う説明がわかりやすい。

葛飾北斎によるサクラと富士の絵.jpg

(葛飾北斎によるさくらと富士の絵 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9より)


しかし,『日本語源広辞典』は,

「『咲く+ラ(花)』の音韻変化」が有力です。…花の時期の短さ,咲き方の見事さが,さくらの語源となったと見るべきです。『サ(稲の神)+クラ(宿る)』説は疑問」

と,「サ」「クラ(座)」説を否定している。否定されているが,「木花開耶姫」転訛説は,

http://ktb.hatenablog.com/entry/20050326/sakura

の,

「『古事記』に登場する『木花咲耶姫(このはなさくやひめ)』の『さくや』が転訛したものだという説。桜の霊でもある木花咲耶姫が、富士山から最初の桜の種を蒔いたといわれており、『この花(桜)のように美しい姫』の名前が語源だともされている。あるいは『木花』とはサクラの花をことを意味し、『開耶』の音がそのままサクラの語源となったとも伝えられる。」

との説明はわかりやすい。しかし「『木花』とはサクラの花」というのは,花=櫻になって以降の付会に思える。

そめいよしの.jpg



『日本語源大辞典』は,諸説を網羅して,以下のように挙げている。

①桜の靈である此花サクヤ(咲耶・開耶)姫から,サクヤの転(萍[うきくさ]の跡・茅窓漫録・名言通・和訓栞・大言海),
②サキムラガル(咲簇)の約(萍の跡・茅窓漫録・和訓栞),
③サキウラ(咲麗)の約(大言海),
④よろずの花の中で勝れて美しい意から,サキハヤ(咲光映)の約転(古事記伝・菊池俗語考),
⑤咲くと花ぐもりとなるところから,サキクモル義(和句解・日本声母伝),
⑥咲クに接尾語ラがついたもの(語源辞典・植物篇=吉田金彦・暮らしのことば語源辞典),
⑦樹皮が横に裂けるのでサクル(裂)の転(日本釈名),
⑧サケヒラク(割開)の略(柴門和語類集),
⑨サクワウ(開王)の転(言元梯),
⑩サキ(幸)の転声,ラは花カズラ,カツラのラ(和語私臆鈔),
⑪花の中で殊にすぐれているところからサはするどくあらわれたさま,ラはひらくさまの意(槙のいた屋),
⑬サはサガミ(田神)のサで,穀靈の意。クラは神の憑りつくクラ(座)で,さくらは穀靈の憑りつく神座の意。桜に限らなかった(萬葉集東歌研究=桜井満),
⑭美しく光り輝く意の「灼燦」の別音sakuraから(日本語原学=与謝野寛),

しかしその他にも,

「咲くらむ(咲くだろう)」からきているという説,
サキウラ(割先・咲梢)の意で、花弁の先の割けた花が梢いっぱいに咲き匂う美しさをいう,
「サキハヤ(開光映)」に由来するという説,

等々もあるらしい(http://ktb.hatenablog.com/entry/20050326/sakura)。

しかし,やはり,接尾語「ら」が,複数の意の「等」ではなく,

「擬態語・形容詞語幹などを承けて,その状態をあらわす」

という意味によって,

まさに,花が咲いている,

という「サクラ」の開花状態をイメージするなら,

咲クに接尾語ラがついたもの,

が妥当に思える。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%A1
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

posted by Toshi at 04:39| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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