2018年04月21日

さくらんぼ


「さくらんほ」は,

桜ん坊,
桜桃,

と当てる。「もも」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458902474.html?1524164039

で触れたように,「もも」は実全体を指していて,たべもの語源辞典』は,

「…方言から考えると,スモモをカタチモモ(山口県大島),カラモモ(長野県),桑の実をクワノモモ(静岡県),サクラの実をサクラボボ(千葉県),椿の実をアブラモモ(隠岐),タカシモモ(島根県),槇の実をサルモモ(山口県)。長野県上田地方では,アンズやウメをモモと呼んだ。また長野県南安曇野地方では,クリをクリモモといった。したがって,モモは,桃ではなく果物の意味に用いられていることがわかる。」

と述べており,梨のもも,椿のもも,南天のもも,梅のもも等々の流れから,

桜のもも,

なのではないか,と思うのだが,どうもそうとは言えないらしい。『大言海』は,

「擬人したる語,圓顱に寄せても云ふか。吉野山の櫻本坊を,サクランボウと云ふとぞ(酸模[すいば],すかんぼう。みずすまし,あめんぼう)」

と,「桜ん坊」の「坊」を取って,擬人化と見なす。


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(サクランボ(桜桃) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9Cより)

「サクランボ」は,桜桃とも言うが,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C

によると,

「中国には昔から華北・華中を中心に、支那桜桃(シナノミザクラ, Prunus pseudocerasus)・唐実桜(カラミザクラ)がある。…江戸時代に清から日本に伝えられ、西日本でわずかに栽培されている。…『桜桃』という名称は中国から伝えられたものである。セイヨウミザクラが日本に伝えられたのは明治初期で、ドイツ人のガルトネルによって北海道に植えられたのが始まりだとされる。」

とし,

「サクランボは、桜の実という意味の『桜の坊』の『の』が撥音便となり、語末が短母音化したと考えられている。」

と,擬人化説を採る。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/sa/sakuranbo.html

も,

「『桜ん坊(さくらんぼう)』とも言うとおり、『さくらんぼう』の『う』 が落ちた語で、語源は、ミザクラの果実を擬人化したか、その形を坊主の丸い頭に 見立てたとされる。 その他の説では、桜モモが転訛したとする説や、果実を意味する『ボボ』が『ボウ』になったとする説、桜干(さくらぼし)の意味からなど諸説ある。」

と,擬人説に肩入れする。『日本語源広辞典』には,

擬人化して言った語(大言海),
円顱[えん](坊主頭)に寄せて言ったもの(大言海),
サクラボシ(桜干)の義か(擁書漫筆),
桜モモの転(江戸のかたきを長崎で=楳垣実),
ボウは果実を意味するボボから(語源大辞典=堀井令以知),
幼児語に発するか(角川古語辞典),

と諸説載る。『日本語の語源』は,

「モノ(物。者)をボーという例がある。ドロボー(盗る者)・アマエンボー(甘える者)・オコリンボー(怒る者)・シワンボー(吝い者)・アバレンボー(暴れる者)…」

と並べて「サクランボ」を挙げるが,人の言動・振る舞いを擬人化するのと同列に置くのはいかがかと思う。

『日本語源広辞典』は,

「『桜の桃』です。桜+の(no→n)+もも(桃・果実)」が語源です。

とし,「momo→bobo→bo」と転訛したとしている。僕は,これが妥当だと思う。あるいは,「さくらぼぼ」と転訛したとき,「坊」を当てて,擬人化したという見方もできる。

「もも」が果実一般を指していたからこそ,

ウメもも,
クリもも,

と呼んでいた,その流れから見て,

サクラモモ,

と呼んでいたのを起源とするのが,妥当ではないか。擬人化は後の作為とみる。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95


ラベル:桜ん坊 桜桃
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