2018年04月27日



「は」に当てるには,

羽,
歯,
刃,
葉,

等々がある。「は(羽)」については,「はね」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458957643.html

で触れたが,『大言海』は,

「平(ヒラ)の約」

としていた。『日本語源大辞典』によると,

羽,
歯,
葉,

は,

「ヒラ(平)の約」

とされ,

刃,

は,

「ハ(歯)」

とつながる。異説もあるが,『大言海』も,「刃」は「歯の義」としており,直感と合うのではあるまいか。さらに,『大言海』は,「歯」は,

「平の約,端の義」

とする。「端」も「は」である。「は(端)」は,

邊(へ)に通ず,

とする。「へ(邊・辺)」は,

端方(はしへ)の意,

とするとする。『岩波古語辞典』は,「へ」に,

端,
辺,
方,

を当て,

「最も古くは『おき(沖)』に対して,身近な海辺の意。亦,奥深いところに対して,端(はし)・境界となるところる,或るものの付近。また,イヅヘ(何方)・ユクヘ(行方)なと行く先・方向・方面の意に使われ,移行の動作を示す動詞と共に用いられて助詞『へ』へと発展した」

とあるので,「はし(端)」の位置が遠くへ延長されていった,と見ることができる。当然,他の「は」からは遠ざかる。

ついでに,「ひら」は,

薄くて平ら,

という意味だが,擬態語「ひらひら」とつながるのではないか,と思う。

それぞれの語源説を拾っておくと,まず「羽」の語源説は,

ヒラ(平)の約(名語記・大言海・国語の語根とその分類=大島正健),
ヒラケ(平気)の下略(日本語原学=林甕臣),
ハル(張)の義(名言通),
ハル(発)の義(言葉の根しらべの=鈴木潔子),
ハ(葉)の義(言元梯),
フワフワしているところから(国語溯原=大矢徹),

と『日本語源大辞典』。『日本語源広辞典』は,

「ハ(動物の薄く平らなもの)です。ヒラヒラしたもの。『ヒラ』の変化」

とする。

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次に,「葉」の語源説は,『日本語源大辞典』は,

薄くてたいらであるところから,ヒラ(平)の反(名語記・日本釈名・国語本義・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子・国語の語根とその分類=大島正健・大言海),
落ちて再び生ずるところから,ハ(歯)にたとえたもの(九桂草堂随筆),
ヒラヒラしているところから,ヒラの義(名言通・日本語原学=林甕臣),
ハラハラしているところから(日本語源=賀茂百樹),

と並べ,『日本語源広辞典』は,

「『ハ(植物の薄く平らなもの)』です。見た感じの「ヒラヒラ」もしくは『ハラハラ』が語源に関わっているわうです。」

とする。『語源由来辞典』,

http://gogen-allguide.com/ha/ha_syokubutsu.html


は,

「一音の語の語源を特定することは難しいが、枝や茎から出る『葉』と歯茎から出る『歯』は類似しており、関係があると思われる。 ただし、語源が『歯』という訳ではなく、『歯』と同源であろう。『は』の音には『生じるもの』の意味があり,『はゆ(生)』の『は』ではないだろうか。」

と,「はゆ(生)」説を挙げる。

「は(歯)」の語源説は,

ヒラ(平)の義(名語記・国語本義・名言通・大言海),
ハ(葉)の義。抜け落ちる様子が,秋の落葉に似るところからか(和句解・玄同放言・言葉の根しらべの=鈴木潔子),
ハ(端)の義(国語の語根とその分類=大島正健・日本語原学=林甕臣),
ハ(刃)の義(言元梯),
ハサムの略。食物を上下ではさむところから(日本釈名),
ハム(喰)の義(日本語原学=林甕臣),

と列記する。『日本語源広辞典』は,

「『口にくわえるものが,ハ』です。ハ(喰)む,口にハさむの『ハ』です」

とし,散る葉と抜ける歯の類比説を否定している。「歯」が「刃」とつながるのなら,繋がりを見ていない説は捨てるほかない。

「刃」の語源説は,

物を断つところから,ハ(歯)の義(名言通・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子・大言海),
ハ(端)の義(国語の語根とその分類=大島正健),

と,『日本語源大辞典』。『日本語源広辞典』は,

薄くて平らな,切り離すもの。葉と同源,
噛み切るところから,歯と同源,

を挙げる。

「は」というだけで意味が通じたのは,文字を持たず,その場での会話を通してだから,通じたというべきである。「は」の区別は,漢字がなければ,文字化したとき区別はつかない。

しかし,上記で見れば,

「は(葉)」と「は(羽)」は「ひら」に通じ,

「は(歯)」と「は(刃)」は,「ハ(喰)」に通ず,

ということではなかろうか,そして,「は(葉)」「は(羽)」「は(歯)」「は(刃)」に共通するのは,「ひら」ではなかろうか,そして「ひらひら」「ひらめく」という擬態語につながっている。

最後に,「は」に当てた漢字に当たっておく。「羽」(ウ)の字は,象形文字。

「二枚の翅を並べたもので,鳥のからだにおおいかぶさるはね」

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「葉」(ヨウ・ショウ)の字は,

「枼(ヨウ)の字は,三枚の歯が木の上にある姿を描いた象形文字。葉はそれを音符とし,艸を加えた字で,薄く平らな葉っぱのこと。薄っぺらの意を含む」

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「歯(齒)」(シ)の字は,

「古くは口の中の歯を描いた象形文字。のち,これに音符の止(とめる)を加えた,『前歯の形+音符止(とめる)』。物をかみとめる前歯」

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「刃(刄)」(漢音ジン。呉音ニン)の字は,

「刀の刃のあるところを,ヽ印で指し示したもの。刃こぼれのしないように,鍛えて粘り強くした刀の刃のこと」

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参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


ホームページ;
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コトバの辞典;
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