2018年05月06日
ナス
「ナス」は,
茄子,
と当てるが,『広辞苑』には,
「なすび」とも,
とある。しかし,『大言海』は,「なす」は,
茄,
と当て,
「なすび(茄子)の略」
とある。
倭名抄「茄子,奈須比」
本草和名「茄子,奈須比」
を見ると,「ナスビ」が元なのかもしれない。『たべもの語源辞典』は,
「茄もナスと読む。古くはナスビ,近くはナスと呼ばれる。茄子・七斑・紫瓜・落酥・草鼈甲,いずれもナスのことである。」
とある。『日本語源大辞典』には,
「古くはナスビといったが,その語末のビは,アケビ(木通),キビ(黍)などの植物名に通じるものか。後に,『御湯殿上日記』などにみられる女房詞の『ナス』が全国的に広まり,近代以降はナスが主流となる。ただ現在でも西日本ではナスビ,東日本ではナスの形を用いる傾向がみられる。」
とあり,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%B9
に,
「元は貴重な野菜であったが、江戸時代頃より広く栽培されるようになり、以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった。」
とある。
「茄」(漢音カ,呉音ケ)の字は,
「艸+音符加(上にのせる)」
とある。で,
はちす,上に花の座をのせるはちすのくき,
なす,
の意がある。
これだと分かりにくいが,
https://okjiten.jp/kanji2229.html
には,
「『力強い腕の象形と口の象形』(『力と祝詞(のりと)で、ある作用を加える』の意味)から、草に力が加わってできる『なす、なすび』、『はすのくき』、『はす』を意味する「茄」という漢字が成り立ちました。」
とある。
「インド原産といわれ,…中国から八世紀ころ日本に渡った。正倉院の古文書に出ている。」(『たべもの語源辞典』)
というが,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%B9
には,
「平城京の長屋王邸宅跡から出土した木簡に『進物 加須津毛瓜 加須津韓奈須比』との記述があり、高位の者への進物にナスの粕漬けが使われていたことが判明した。また、正倉院文書には『天平六年(734年)茄子十一斛、直一貫三百五十六文』をはじめとして多数の『茄子』の記述がみられる。これらのことから、日本では奈良時代すでにナスの栽培が行われていたことがわかる。」
とあるので,既に租庸調として納めていたことから見ると,栽培していたというのが正しいようだ。
『大言海』は,
「中酸(ナカス)實の約略かと云ふ」
とする。
http://gogen-allguide.com/na/nasu.html
も,
「実の味から『中酸実』(なかすみ)が語源とされる。」
とするが,『日本語源広辞典』は,三説載る。
説1,「ナス(夏)+実」。夏の実,
説2,「生ス・成ス+実」。よく成る実,
説3,梨と茄子は同源,
「夏に採れる野菜『なつのみ』から『なす』に転訛した」というのが有力らしい。『たべもの語源辞典』も,
「夏とれる野菜,ナツミ(夏の実)からナスミとなり,ナスビとなった」
とするし,『日本語の語源』も,
「夏の野菜・果物をナツミ(夏実)といったのがナスミ・ナスビ(関西)・ナス(茄子)・ナシ(梨)になった。」
とする。区別せず,「夏の実」と言ったのが,「茄子」と「梨」に分化した,というのは,文脈依存の和語らしく,僕には説得力がある,と思える。
参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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