2018年05月09日

ふけ


「ふけ」は,『広辞苑』によると,

雲脂,
頭垢,

と当てるらしいが,「垢」だけで,「ふけ」とルビを振っているのもあって,どうせ当て字ではあるが,和語らしい。

「垢」(漢音コウ,呉音ク)の字は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/459242476.html?1525719864

で触れたように,

「后(コウ)は『人のしりを開いた姿+口(あな)』の会意文字で,人体の後ろ,低いところにあってよごれた肛門を示す。垢は『土+音符后』で土砂が低いところにたまってよごれたものの后こと。厚(土が低くたまる→分厚い)と縁が近い。」

で「あか」だけではなく「土埃や塵のたまったもの」を意味し,そのメタファで,「けがれ」「はじ」といった意味もある。ついでながら,「脂」(シ)の字は,

「旨は『人+口(または甘)』の会意文字で,人の口にうまい,こってりした味のこと。脂は『肉+音符旨』で,こってりときめ細かい充実したあぶら肉のこと。」

で,ついでながら,「肪」(漢音ボウ,呉音ホウ)は,

「『肉+音符方(張り出る)』で,からだが肥えてパンパンに張ること」

とある。「脂」と「肪」の違いは,中身と見かけ,ということらしい。

さて,『大言海』は,

雲脂,

と当て,

陳化(フケ)の義か,

とする。少し語意をこじつけた気味がある。なお,

「箋注和名抄…『雲脂,頭垢謂之雲脂,加之良之阿加,一云,以路古』注箋『今俗呼不計』」
「書言字考節用集『雲脂,頭垢,フケ』

を引いている。

『日本語源大辞典』は,「陳化」説以外に,

フケ(浮垢)の義(和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子),
フルアカムケ(古垢剥)の義(日本語原学=林甕臣),
フコ(鮒甲)の義(言元梯),
コケ(苔)の転(少年と国語=柳田國男),

を載せる。『日本語源広辞典』は,

「フは浮の音,ケは垢」

とし,

「頭の皮膚に浮いてくるコケを,植物のコケと区別してフケという」

とするが,解釈的だが,「垢」と同じと見ているところは,まだましに思える。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/hu/fuke.html

は,

「『ふけ(陳化)』や『ふるあかむけ(古垢剥)』の意味、『ふけ(浮垢)』の意味や『こけ(苔)』の 転など諸説ある。 垢に似たもので剥がれて浮き上がってくることから、この中では『浮垢』の意味が有力と思われる。ただし、『垢』は『あ』の音が強いため、ふけの『け』は『垢剥』の意味で『古垢剥』か『浮垢剥』が良いかもしれない。また、体から出るものではないが、印象的に『苔』も近いものがあり、『浮苔』で『ふけ』になったとも考えられる。漢字の『雲 脂』は白く雲のようであるところからの当て字で、『頭垢』は意味からの当字である。」

と,「ふけ(浮垢)」説に肩入れする。「ふけ」という言葉があったものに,字を当てて解釈しているような気がしてならない。ただ,

垢,

に「ふけ」と訓ませたところが気になる。「頭垢」と言っているのは,理屈であって,頭であれ,体であれ,同じ,

垢,

と見たということだ。しかし,「ふけ」と名づけた由来は,見えてこない。強いて言うと,

浮垢(フコウ)→フケ,

だろうか。

ところで,「フケ」という言葉には,競馬好きの人にはよく御存じの,

雌馬の発情,

の意味もある。

http://www.equinst.go.jp/JP/arakaruto/yuusyun/yu200804.pdf

によると,この語源は,東北地方の方言で,「ふける」が,

鳥が交尾期にさえずる,
鳥獣が発情する,

意味で使われ,これが馬産地経由で,厩舎用語となった,とある。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:ふけ 雲脂 頭垢
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posted by Toshi at 04:06| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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