2018年05月10日

ふける


「ふける」というと,自動詞なら,

逃げる,

という意味だが,他動詞だと,

みせびらかす,

という意味らしく,古く日葡辞典に,

「チャワン(茶碗)をフケル」

と載る。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/28hu/hukeru.htm

は,「ふける」について,

「ふけるとは逃げる、行方をくらます、駆け落ちするといった意味で江戸時代から使われた言葉である。逃げる、行方をくらますという意味では主に盗人の間で使われたが、1970年代末から1980年代のツッパリブーム時になると、その派生として授業を途中抜けしてサボるという意味で不良を中心に若者の間で普及。この場合、フケるという表記が好んで用いられた。」

とある。『江戸語大辞典』をみると,「ふける」には,「逃げる」意の他に,

逸れる,
退屈する,
漁師用語。舟が出せる,漁に出られる,

等々が載る。どうも由来がわからないが,「ふける」という言葉は,

更(深)ける
耽る,
蒸ける,

と当て分けて,意味を使い分けている。「更ける」「深ける」は,

夜中に近くなる,
季節が深まる,
齢が長ける,歳をとる,

意であり,「老ける」は,

年を取る,意である。「老ける」は,「更ける」「深ける」から意味が分化したということがわかる。「蒸ける」

蒸されて熱が通り,柔らかくなる,

意であり,「耽ける」は,

心を注ぐ,没頭する,
心を奪われ,自制心をなくす,おぼれる,
囀る,特に鶉(うずら)が鳴く,

という意である(以上『広辞苑』)。面白いことに,この「ふける」には,東北地方の方言で,

鳥が交尾期にさえずる

という意もある(この「ふける」が厩舎用語の「フケ」とつながる)。「耽る」の字を当てると,何だか意味深である。『大辞林』は,「耽る」を当てた「ふける」の意味に,

逃げる,姿をくらます,

の意を載せている。結局「ふける」は,『大言海』が,「耽る」で,

「深(ふ)け入るの義」

に,絞られていくように見える。古語で言うと,「ふく」になるが,「ふく」を,『大言海』は,

深く,
化く,

を当て分けているが,「深く」は,

「深(ふか)の活用」

とし,

深くなる,たけなわになる,
専ら,夜に言う,
専ら,齢に言う,

とし,「化く」は,「深く」の語意と同じ,としながら,

蒸れ古びて形を変ふ,陳化,
空気に晒されて解けて粉となる,風化,

の意を載せる。「深(ふか)」は,他の語について,

深情け,
深緑,
深入り,
深手,
深酒,
深間,
深読み,

等々,単なる深浅の意味から,それをメタファに深みにはまる意味まで広い。その「深」の活用とするなら,

更(深)ける
耽る,
蒸ける,

のすべては,「深」から来ているとみていい。逃げる意の「ふける」も「化く」つまり,「化ける」と当ててみると,その含意が深まる。

http://mobility-8074.at.webry.info/201508/article_63.html

が,「更ける」「老ける」「耽る」「蒸ける」を,

「これらの語のもとは『深ける』です。この場合の『深ける』 は〈時間的に深くなる〉,つまり〈時間が進行する〉というような意味です。」

としているのは妥当だろう。

「更ける」は,

フカ(深)から,

「耽る」は,

フカ(深)入り,

と考えると,「蒸ける」も,時間を掛ける意に繋がっていく。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 03:53| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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