「買って出る」は,「買う」の意味の中にある,
進んで身に引き受ける,
の意味であるが,『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/ka/kattederu.html
によると,
「買って出るは、単に『買う』でも自ら進んで引き受ける意味があるので、特に語源が無いように思える言葉だが、花札から出た言葉である。花札は三人で勝負するため、参加者が四人以上いる場合は、親から数えて四人目以降の下座の者は外される。どうしても下座の者が勝負に参加したい場合は、代償として上座の者から役札を買い上げること から、自ら進んで引き受けることを『買って出る』と言うようになった。」
とある。これは,『由来・語源辞典』
http://yain.jp/i/%E8%B2%B7%E3%81%A3%E3%81%A6%E5%87%BA%E3%82%8B
にも,
「もとは花札で、定員三人に対して、参加者がそれ以上いた場合、四人目以降の下座の人は外れることになるが、どうしてもやりたければ上座の人から役札を買い上げて参加できることから、たとえていうようになったもの」
とあるので,出自は賭博用語らしい。
「かう」というのは,
買,
と当てるが,『広辞苑』には,
「『替ふ』と同源」
とある。そして,その「替ふ」は,
替,
換,
代,
変,
と当て替える。一応,
替,換,代,
は,事物を互いに入れ違わせる意であり,
変,
は,事物の状態・質をそれまでと異なったものにする意となる(『広辞苑』)。『大言海』を見ると,前者には,
易,
の字も当てる。さらに,
渫,
の字を当てた「かふ」は,
「易の義」
で,さらう(浚う)意である。どうやら,「変」以外のすべては,
交,
に行きつくようである。『岩波古語辞典』は,「かふ」は,
交,替,買,
の字を当て,
「甲乙二つの別のものが互いに入れ違う」
とする。当然語源は,
交ふ,
となる。『日本語源広辞典』は,
「物々交換時代には,交・替・換・代,共通で一語の意味でした。古代には交換することをカフといっていました。後に,代金という概念が出てきて,購入するにもカフを用い,『買う』という字を使うようになったものです。」
とある。漢字は,
変は,移り変わる意,
易は,一物体の変ずるにも他物の振り替わるにも用いる,
替は,彼と此れとなり代わる,
代は,同じようになるものがなり代わる,
換は,彼と此れを交換する,
買は,かひてあきなひする,
の使い分けがあるが,われわれは,漢字の意味の陰翳を承けて,使い分けをしているようである。。
「買」(漢音バイ,呉音メ)の字は,
「网(あみ)+貝(貨幣)」
であり,初めから売買をイメージしている。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:買って出る