2018年05月13日

カラス


「カラス」は,

烏,
鴉,

と当てる。他に,

鵶,
雅,

とも当てる。

Kolkrabe.jpg



「烏」(ウ)の字は,

「からすをえがいたもの。アと鳴く声をまねた擬声語」

である。「鴉」(漢音ア,呉音エ)の字は,「みやまがらす」「はしぶとがらす」(『字源』)「こくるまがらす」『漢字源』と,特定種の名が上がる。

「『鳥+音符牙』アアと鳴く声をまねた擬声語」

とあり,「鵶(ア)」の字も,「亞+鳥」なので,同じと考えてよい。『漢字源』には,

「烏(ウ)も古くはアと発音した。烏・鴉は全て鳴声をあらわす擬声語」」

とあるが,「雅」(漢音ガ,呉音ゲ)の字も,「カラス」の意味があるが,「アア」と鳴くかららしい。「雅」の字は,

「牙(ガ)は,交互にかみ合うさまで,交差してすれあう意を含む。雅は『隹(とり)+音符雅』で,もと,ガアガア・アアと鳴くカラスのこと。ただし,おもに牙の派生義である『かみあってかどがとれる』の意に用いられ,転じてもまれてならされる意味となる。」

とある。

トマッテルカラス.jpg



「カラス」は,古来八咫烏や熊野権現の牛王の神符に図案化されるなど,神的,霊的存在と見られてきたようだが,『日本語源大辞典』には,

「『萬葉集東歌』で『おほをそどり(をそ=軽率の意,おおあわてもののとり)』と呼ばれたり,『枕草子』に『にくきもの』として挙げられたりする」

ということを指摘している。

当然和語も擬声語が想定されるが,必ずしもそうではなく,擬声語と羽色(黒色)の二説に大別されるようである。まずは,「鳴き声由来」説は,

その鳴き声から(雅語音声考・擁書漫筆・箋注和名抄・名言通・国語溯原=大矢徹・音幻論=幸田露伴),
鳴声のカラにスを付したもの(円珠庵雑記・甲子夜話・大言海),
コクロと表現される鳴声から(能改斎漫録・松屋筆記),
カラスノカラと鳴声のコロクのコロとが形の上で関係のあるものとみることもできるが,鳴き声の擬声語化したカラに接尾語スが付いたものか(時代別国語大辞典=上代編)。

その他『日本語源広辞典』も,

「擬声語kara,kura+接尾語」

とし,接尾語「ス」は,

「カケス,キギス,ウグイス」

等々鳥の名を表す,とする。『大言海』は,鳴き声は,「カ」で,

「ラは添えたる語」

とし,『枕草子』の,

「鴉のいと近く,カラと鳴くに」

を引く。「ス」は,『日本語源広辞典』と同じく,鳥に添える語とし,

「禽蟲の名の下に添ふる語(萩(はぎ),荻(おぎ),薄(すすき)の,キの如し)」

として,

「『うぐいス』『ほととぎス』『きぎス』『からス』『きりぎりス』『ぎズ』『もズ』『みみズ』。又『めス』『をス』『かけス』も此の類なるべし。」

と付説する。また「ら」についても,

「語の末に付けて,云ふ助詞。普通意味なきものあり,親愛の意あるもあり」
として,

ましラ(猿)

等々を挙げる。鳴声の言語化の流れは,『日本語源大辞典』に,

「鳴声は古く『コロク』と聞きなされたこともあるが,『枕草子・あさましきもの』には『かかと鳴く』とあり,又,中世には,『コカコカ』(虎明本狂言・花子)などの形もある。現代一般的な『カアカア』は,『新ばん浮世絵尽』(18世紀前)に『かあかあすこし水をくれぬ』とあり,江戸時代からみられるものである。」

とある。『擬音語・擬態語辞典』は,もう少し詳しく,

「奈良時代には烏の声は普通『ころ』『から』と聞いていたと考えられる。」

さらに,

「平安時代には,烏の鳴声は,『かか』。『枕草子』に『暁がたにうち忘れ寝入りにけるに,烏のいと近かかと鳴くに』とある。鎌倉・室町時代から江戸時代にかけて烏の声は『こかこか』,『こかあこかあ』。」

で,江戸中期,『カアカア』となる。

『擬音語・擬態語辞典』は,したがって,「『からす』の『から』は。鳴き声である。『す』は鳥であることを示す接尾語」

と,鳴声説を採る。

「羽色(黒色)」由来説は,

クロシ(黒)と相通ず(和句解・日本釈名・東雅・柴門和語類集),
カラス(黒羽)の義(和語私臆鈔),
カラはクロ(黒)の転,スはシと通音で鳥の意(国語学通論=金沢庄三郎)

等々あり,『日本語の語源』も,

「クロトリ(黒鳥)は,トリ[t(or)i]の縮約で,クロチ・クロスを経て,カラス(烏)になった」

とする。色の黒い鳥は,烏(う)を初め他にもいる。

ここは,

「から+す」

説に与したい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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ラベル:カラス
posted by Toshi at 03:53| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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