2018年05月15日

ウグイス


「ウグイス」は,

鶯,

と当てるが,「鶯」(漢音オウ,呉音ヨウ)の字は,

コウライウグイス,
チョウセンウグイス,

を指す。スズメ目コウライウグイス科に分類される。「ウグイス」は,スズメ目ウグイス科である。

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で,この字は,

「鶯の上部は(音エイ・ケイ)は,ぐるりととりまくさま。鶯はそれを音符とし,鳥を加えた字で,輪状の羽模様が,首のまわりをとりまいた鳥のこと」

で,「からだは黄色で,尾は黒が混じる」鳥を指す。

「両者とも美声を愛でられる鳥だが、声も外見も非常に異なり分類的な類縁はない。」

とのこと。コウライウグイスの別名は,

黄鳥(コウチョウ),金衣公子(キンイコウシ),

等で,後述の「ウグイス」の別名とは大きな違いががあり,「ウグイス」とは別物である。

さて,「ウグイス」は,

春鳥(ハルドリ)・春告鳥(ハルツゲドリ)・花見鳥(ハナミドリ)・歌詠鳥(ウタヨミドリ)・経読鳥(キョウヨミドリ)・匂鳥(ニオイドリ)・人来鳥(ヒトクドリ)・百千鳥(モモチドリ)・愛宕鳥(アタゴドリ),報春鳥(ホウシュンドリ),初音(ハツネ),

等々,別名は多い。『日本語源大辞典』に,

「鶯の鳴声は,ホーホケキョ,ヒトクヒトクなどと聴き取られ,『饗み鳥』『人來鳥』は鳴声に由来する異名である」

とある。この,

ホーホケキョ,

は江戸時代から使われ出した。それ以前,

「平安時代は,鶯の声を『ひとく』と聞いた。『梅の花 見にこそ來つれ 鶯のひとくひとくと厭ひしもをる』(『古今和歌集』)。『ひとく(人が来る)』の意味に掛けて用いられる。『ひとく』は江戸時代まで用いられ続けた。鎌倉室町時代には,鶯を飼ってよい声で囀るように躾けることが流行った。『つきひはし(月日星)』と聞こえるように鳴く鶯が最高であった。(中略)
 江戸時代になると,『ほーほけきょー』と写され,『法華経』の意味を掛けて聞いた。」

とある(『日本語源大辞典』)。

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「ウグイス(ウグヒス)」の「ス」は,前に「カラス」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/459343657.html?1526151249

で触れたように,「鳥を表す語」(『岩波古語辞典』)で,カケス・キギス・カラス・ホトトギス等に見られる。で,『大言海』は,

「ウクイは,鳴く聲,スは鳥の接尾語(ほととぎス,からス,きぎス)。古今集,十,物名,ウグヒス『心から,花の雫に,そぼちつつ,ウグヒスとのみ,鳥の鳴くらむ。』承暦二年殿上歌合『いかなれば,春來る毎に,ウグヒスの,己れが名をば,人に告ぐらむ』(名言通)」

とする。『擬音語・擬態語辞典』も,

「鳴声を『うーぐい』と聞いたところから」

と,鳴声説を採る。鳴声説が,

鳴声から(擁書漫筆・箋注和名抄・言元梯・古今要覧稿・松屋筆記),
ウグヒは啼声,スは鳥の名につく接尾辞(雅語音声考・嚶々筆語・名言通・大言海・日本古語大辞典=松岡静雄),

と大勢である。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/u/uguisu.html

も,「ウグヒ+ス」と鳴声説を採る。

http://www2.chokai.ne.jp/~assoonas/UC78.HTML

も,「うくひす」は,

「昔の『う』の発音は、『fu』に近いものであり、『い』の発音も『hi』に近いものでした。(中略)そこで、『うぐいす』の発音を大ざっぱに遡っていくと、『うくひす』『ふくぴちゅ』の順に古くなるわけですが、お気付きのようにフークピチュ(声に出して見ればよくわかる)という鳴き声からきているものです。」

と,鳴声説を採る,それ以外にも,

ウクは奥,ヒスは出づ。奥出づの意(日本釈名・滑稽雑誌所引和訓義解),
ウはフ(生)の転。スは巣。茂みに巣をつくる鳥(東雅),
愛飲巣または,愛作巣の意から(和字正濫鈔・和語私臆鈔・円珠庵雑記・燕石雑志),
卯の方に巣をくう鳥か。陽気を好む鳥(和句解),

等々があるが,最も説得力のあるのは,『日本語源広辞典』の,

「中国語の黄鶯子(wung yen su)」

語源説だが,「鶯」(この字のみでコウライウグイスを指す)の呼び名ではなく,

黄鶯(こう おう),

という屋上屋を重ねた名の音なのか,の説明がなければ,こじつけになるのではないか。やはり,「ウグイス」は鳴き声であり,鳴き声由来と考えるのが,妥当ではあるまいか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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