江角健治 個展(飯田弥生美術館ギャラリー)にお邪魔した。
毎年拝見しているわけではないが,独特のひしゃげた(傾げた)家々の絵が独自の雰囲気を醸し出す。今回,僕は,三点ほどある,いわゆるパースペクティブで書かれた絵に注目してみた。以前にもあったのかもしれないが,こういう絵はあまり印象にない。随分前になるが,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/397355525.html
で,この作家の絵の特徴を,
押絵,
になぞらえたことがある。画家の見た世界が,
押絵
として表現される,ということは,そこに,大袈裟な言い方だが,作家の世界観がある,と思う。
表現の世界は,自立しているので,押絵として世界を描いた瞬間,その押し潰された,というか,
次元を折り畳んだ世界,
に転換することで,より自由に描ける世界が(作家に)生まれてくるのだと思う。では,その作家が,いわゆる遠近法,
パースペクティブ,
で表現するとどうなるか,という興味で拝見した。
ひとつは,「黒い倉庫」
いまひとつは,「ブタのぬいぐるみ」
である(もうひとつ「赤い屋根の大学」もある)。
(「黒い倉庫」)
(「ブタのぬいぐるみ」)
正直言うと,他のいつもの絵に比べると,際立たない。ただの古ぼけた倉庫だし,ちょっと傾いた建物にすぎないようにみえる。独特の雰囲気が,ありふれた世界観に紛れ込んでしまう。それは逆に,この普通のパースペクティブの絵を見て,改めて,ひしゃげて,(次元の)圧縮された,この作家の絵の特徴が,際立ってくる気がした。
前に,僕は,こう書いた。
画家のパースペクティブ
を表現するのが,絵なのだと思う(この場合パースペクティブは,遠近法ではなく,眺望,あるいは和辻の使っていた視圏の意味で使っている)。そこには作家の見た(見せたい)世界が描かれる。画家の見た世界が,
押絵
として表現される,ということは,そこに,大袈裟な言い方だが,作家の世界観があると思う,と。
しかし通常のパースペクティブで描くと,その独特の世界観が弱められてしまう。言葉は悪いが,ありふれたものになってしまう。
要は,折り畳み,圧縮する中に,様々の思い,感情,来歴が閉じ込められる。あるいは,独特の,
ひしゃげ方,
傾き方,
にも,その家々の歴史(積み重なった過去)や個性(独自の佇まい)が見えてくる。それが,見る側に,
押絵,
のような,
次元を折り畳んだ,
独自の厚みを感じさせる。
(ハセ川さんちの理容店)
たとえば,案内ハガキに載った「ハセ川さんちの理容店」を見るとよく分かるが,この傾きに,この家の歴史があり,ひしゃげそうな店構えに,悲喜こもごもの来歴がある(と見た作家の思いがあると言い換えてもいい)。しかし,これを通常のパースペクティブで描けば,ただの古ぼけた床屋に過ぎなくなる。
次元を折り畳んだ世界,
にはどうやら,まだまだ奥行があるらしい。
ホームページ;
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コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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