2018年06月02日

くもる


「くもる」は,

曇る,

と当てる。『広辞苑』には,

雲を活用させた語,

とある。「曇」(漢音ドン,呉音タン)の字は,

「『日+雲』で,雲が深くて日を隠すことを示す。底深く重い意を含む。雲が奥深く重なって重苦しいこと」

で,「雲」(ウン)の字は,

「云(ウン)は,立ち上る湯気が一印につかえて,もやもやとこもったさまを描いた象形文字。雲は,『雨+音符云』で,もやもやたちこめる水蒸気」

とある(『漢字源』)。しかし,

https://okjiten.jp/kanji102.html

は,

k-102.gif



「会意兼形声文字です(雨+云)。『天の雲から雨水が滴(したた)り落ちる』象形と『雲が回転する様子を表した』象形から『くも』を意味する『雲』という漢字が成り立ちました。」

とする。しかし,「雲」の意味は,

くも,
雲のようにもやもやしたもの,

の意で,雨の落ちる意は含まない。後世の「字面」からの後解釈に思える。

さて,「曇る」であるが,『岩波古語辞典』『デジタル大辞泉』『大辞林』も,

「雲の動詞化」

とする。

800px-Img20050526_0007_at_tannheim_cumulus.jpg



『大言海』も,

「隠(くも)る義なりと云ふ(かくむ,かこむ。くくもる,くこもる)。曇ると云ふも,雲を活用せしめたる語なり。沖縄にて,クム,朝鮮にてクラム。」

と同様に,「雲の動詞化」説を採る。しかし,『日本語の語源』は,

「黒雲の中に(雨)コモル(籠る)は(天)クモル(曇る)に転音・転義をとげた。その名詞形のクモリ(曇り)は語尾を落としてクモ(雲)になった」

と真逆である。つまり,

クモル(隠る)→クモ(雲)→クモル(曇る),

ではなく,

コモル(籠る)→クモル(曇る)→クモ(雲),

ということだ。しかし,並べてみると,クモルあるいはコモルから「クモ」ができ,更にそれが動詞化するというよりは,クモルあるいはコモルから,クモルとなり,クモとなった方が,自然な気がするのだが,どうだろうか。

『日本語源広辞典』は,「雲」の語源を,

「隠る・籠る」と語源が等しいのだろうというのが通説,

としており,それならなおさら,

クモルあるいはコモル→くもり→くも,

と見るのが妥当と思えるが,『日本語源大辞典』は,「雲の動詞化」以外,

クモオフル(雲生)の義(東雅・類聚名物考),
クモヰル・クモヲル(雲居)の義(言元梯・日本語原学=林甕臣),
クモ(雲)カサナルからか(和句解),
コモル(籠)の義(志不可起・日本釈名・国語の語根とその分類=大島正健),
「薫」(kum)の転音から(日本語原学=与謝野寛),

等々載せるが,「コモル」「クモル」以上の説は見当たらない。ただ,『日本語源広辞典』の,「くもり」について,

「語源は『雲+寄り』の変化です。『雲+り』で,曇天の意味を表します。『日+寄り』,つまり,日和に対する語です」

というら説明はちょっと気になるが,「日和」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/442897173.html

で取り上げたように,「日和」を「にわ」と訓ませ,

「万葉集の『にはよくあらし』を日の和(な)いだことと解して当てた字」(『大辞林』)
「日和の字は,万葉集256『飼飯の海の庭よく荒し』,同2609『武庫の海の爾波よくあらし』のニハを,後世,日の和らいだことと解して当てた『日和(ニハ)』という字面が,同義のヒヨリの語に当てられて新しく成立したもの」(『岩波古語辞典』)

とあり,

海上の天気,または海上の天気の良いこと,

の意味であり,「庭」を当て,

魚場,

の意から転じて,

「風がなく海面の静かなさま」

という意味になる。『日本語源広辞典』の解釈は,こじつけということになる。

「くも」の語源は,『日本語源大辞典』に,

コモル(隠・籠)の義(閑田耕筆・名言通・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子・大言海),
天体をコメル(籠)ところからクミと呼ばれ,それが転じたもの(日本古語大辞典=松岡静雄),
クマ(隠)の転(言元梯),
クグモルの義(桑家漢語抄),
クモリの約(冠辞考),
すべてをひきこめてしまうところからコムモロの反(名語記)

といった,コモル・クモム系があり,

水気が集まってできるというところから,クム(組)の転(箋注和名抄・雅言考・碩鼠漫筆),
クム(酌)から出た語。水をクミ(酌=雲)あげなければアム(浴=雨)ことができないことから(嚶々筆語),

といった,クム系があり,

雲の姿から,クは内へまくり入る意,モは向かう義(仙覚抄),
クはクラキの下略。モはモノ(物)か,モト(基)か,ヨモ(四方)のモか。また,いつも起こるところから,いつものモか(和句解),
キムレヲリ(気群居)の義(日本語原学=林甕臣),
煙の上昇する意の「薫」(kum)の転音転義(日本語原学=与謝野寛),
朝鮮語で雲をいうkuramと同源か(万葉集=日本古典文学大系),
クロシ(黒),クラシ(暗)等に含まれるアイヌ語に似た語根kurがあり,さらに朝鮮語kurum(雲)と比較すると,kumoはkur + moから来たか(日本語の系譜=服部四朗)

等々と諸説があるが,やはり,普通に考えれば,

クモル(隠る)→クモ(雲)→クモル(曇る),

か,

コモル(籠る)→クモル(曇る)→クモ(雲),

だろう。僕は,後者に与したい。

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:曇る くもる
posted by Toshi at 03:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください