2018年06月04日

やはり


「やはり」は,

矢張り,

と当てるが,『日本語源広辞典』の,

「矢を張ってじっと静かに待っている」

というのは如何であろうか。「矢張り」は,当て字なので,それを解釈するというのは。

「やはり」が音韻変化して,

やっぱり,

とも言う。

ヤッパシ,
ヤッパ,

も同じである。

もとのまま,前と,あるいは他と,同じに,
思った通りに,案の定,

といった意味である(『広辞苑』)。しかし,『デジタル大辞泉』は,この他に,

さまざまに考えてみても結局は同じ結果になるさま,つまるところ,
動かずにいるさま,

の意味も加える。『大言海』は,

「彌張(やは)りの意にもあらむか」

と書く。『岩波古語辞典』は,

「ヤはヤハヤハ・ヤハラなどのヤハに同じ」で,

ゆったりとしているさま,静かにじっとしているさま,
依然として。転じて,予想通り,案の定,

と意味を載せる。「やはら」は,

柔ら,

と当て,

「ヤハは擬態語。ラは状態を表す接尾語」

とあり,

ふんわりしている状態,

を意味する。「やはやは」は,

いかにも柔らかなさま,

の意である。どうやら,「やはり」の「やは」は,今日言う,

やわやわ,

という擬態語と通じる。

柔らかでしなやかな様子,
穏やかでゆったりとした様子,
力を加減して穏やかに物事を行う様子,

の意である。とすると,「やはり」は,その「やは」の状態を示す,状態表現として,

ゆったりとしているさま,静かにじっとしているさま,

を示していた。それが,視点を転じて主体表現となると,

依然として,そのまま,

となり,その状態が続いていると予想する通りの

予想通り,案の定,

という価値表現へと転じたということだろうか。『日本語源大辞典』は,

「やおら」「「やわら」と同源,

とも書く。「やおら(やをら)」は,

そっと,おもむろに,

の意で,『岩波古語辞典』の言う,

力を加減して穏やかに物事を行う様子,

という意に通じる。『大言海』は,

「弱(よわら)の転と云ふ。サレド,ヤハラと云ふも同語なるべければ,柔(やはら)なるべし」

と,「やはら」とつなげている。

例によって,『日本語の語源』は独自の音韻変化をたどってみせる。

「ナホ(尚,猶)は『やはり,以前として』という意の副詞である。『依然として存在している』という意のナホアリ(猶在り)は,ホア[h(o)a]の縮約でナハリに転音するとともに,『ナ』が子交(子音交替)[nj]をとげてヤハリ(矢張り)・ヤッパリになった。」

とする。しかし,これだと,「やはり」の状態表現から価値表現への変化が説明できない。後世の意味からの後解釈ではなかろうか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:やはり 矢張り
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