さえずる


「さえずる」は,

囀る,

と当てる。「囀」(テン)の字は,

「『口+音符轉(テン)』。轉(転)は,転がす意を含むが,囀はそれと同義」

で,

玉を転がすように続けて鳴く,

意らしい。

DSC04890.JPG

(囀るグイス)


ところで,鳥の鳴き方には,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E9%A1%9E%E7%94%A8%E8%AA%9E#%E3%81%95%E3%81%88%E3%81%9A%E3%82%8A

によると,「さえずり」と「地鳴き」がある。「さえずり(英:bird song)」は,

「主に縄張り宣言や雌を呼ぶために、繁殖期の雄が発する鳴き声。中でも鳴禽類は鳴管の筋肉がよく発達しており、高度なさえずりをする種がある。」

で,「地鳴き(じなき、英:bird call)」は,

「さえずり以外の鳴き声。主に繁殖期以外での鳴き声を言う。一例として、ウグイスのさえずりが「ホーホケキョ」、地鳴きが「チャッチャ、チャッチャ」。ほかには警戒や威嚇の際の鳴き声、雛を呼ぶときなどの鳴き声を言う。状況に応じ使い分ける。」

とある。「地鳴き」は比較的「さえずり」に比べると,僕には四十雀が象徴的だが,地味かもしれない。

さて,「さえずる」は,『広辞苑』には,

「サヒヅルの転」

とある。『岩波古語辞典』には,「さひづり」は。

「サヘヅリの古形」

とある。『大言海』は,

「サヘは,喧語(さへ)くの語根…,ツルは,あげつらふ(論),引(ひこ)つらふのツラフと通づ…。佐比豆留とある比は,閇(へ)の音に用ゐたるなり」

とあり,「喧語(さへ)くの語根」との関連で,「コトサヘク」の項で,

「コトは,言ナリ,サヘクは,四段活用の動詞ニテ(名詞形に,佐伯となる)囀る,喧(さばめく)と通ず。」

とあり,

「つらふのツラフと通づ」の項で,

「萬葉集『散釣相(サニツラフ)』『丹頬合(ニツラフ)』の釣合(ツラフ)にて,牽合(ツリア)フの約(関合[かかりあ]ふ,かからふ),縺合(もつれあ)ふの意なり」

として,

喧語(さへ)く+縺合(もつれあ)ふ,

とする。鳥が騒がしく喋りまくっている,という感じであろか。よく主意は伝わる。『日本語源広辞典』は,

「擬音さへ+ク(動詞語尾)」

が語源とし,

「さわがしく物を言う意で,これにズル(動詞化)をつけた再動詞」

とするのも,構造は同じである。これと類する説を,『日本語源大辞典』は,

サヘは擬声語か(時代別国語大辞典-上代編),
サヘは擬声語で,ヅルは音ヅルなどと同じか(小学館古語大辞典),
サヘはサヘク(喧語)の語根。ツルはアゲツラフ,ヒヨ(引)ツラフのツラフと通じる(大言海),

の諸説以外に,

障りて通じがたいところからサヘ(障)出るの義(和句解),
サヘツル(栄連)の義(言元梯),
サヘツレル(清連)の義(名言通),
曲節をつける意で,シハユリナクランの反(名語記),
弁舌をよくするものの意で,サヘツル(才出)の義か(和句解),

も載せるが,

さわがしい+連,

擬声語+連,

というところなのではないか。それなら,「囀」の字の意味と重なる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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