2018年06月16日

あめ(天)


「あめ」は,

天,

と当てる。「天(てん)」の意である。「天」(テン)の字は,

「大の字に立った人間の頭の上部の高く平らかな部分を一印で示したもの。もと巓(テン いただき)と同じ。頭上高く広がっている大空もテンという。高く平らに広がる意を含む。」

とある。

300px-天-oracle.svg.png

(殷 甲骨文字 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%A4%A9より)


しかし,「あめ(天)」は,「天(てん)」とは少し異なる。「天(てん)」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163401.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163558.html

等々で触れたことがあるが,たとえば,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9

では,

「中国の思想では、全ての人には天(天帝)から、一生をかけて行うべき命令(天命)が与えられており、それを実行しようとする人は天から助けを受け、天命に逆らう者は必ず滅ぶと考えられている。天は全ての人のふるまいを見ており、善を行うものには天恵を、悪を行うものには天罰を与える。その時の朝廷が悪政を行えば天はこれを自然災害の形を取って知らせ、逆にこの世に聖天子(理想の政治を行う皇帝)が現れる前兆として、天は珍しい動物(麒麟など)を遣わしたり、珍しい出来事を起こして知らせる、と考えられた。特に皇帝、王朝の交代時には盛んに使われ、ある王朝を倒そうとする者は「(今まで前王朝に与えられていた)天の命が革(あらた)まって我々に新しい天命が授けられた。」と言う考え方をする。つまり革命である。」

とある。あるいは,『ブリタニカ国際大百科事典』には,

「殷代には,『天』は『大きい』という意味であり,天空を支配する最高神を『帝』と呼んでいたが,周代には,『天』と『帝』が同義語となり,地上の支配者である王は上帝の命により天下を統治するものと考えられるようになった。そこで,地上の『王』も『帝』と呼ばれるようになる。」

とある。中国から日本に伝えられたその,

「『天』(天上世界、宇宙の最高神、守護神などを意味する)の観念には、〔1〕道教系、〔2〕儒教系、〔3〕仏教系のものがあり、これらがそれ以前からあった〔4〕日神(ひのかみ)信仰(ここからのちに皇祖神天照大神(あまてらすおおみかみ)の観念が発生する)と合体して日本古代の天の思想を形成したようである。」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』)

さて,ここでは,その古来の「あめ(天)」の語源である。「あめ(天)」の古形は,

あま,

であると,『岩波古語辞典』はする。そして,「あま(天)」の項で,『岩波古語辞典』には,

「『天つ』『天の』の形で他の語に冠する。アマは,何もないという意のソラ(空)とは異なり,奈良時代及びそれ以前には,天上にあるひとつの世界の意。天上で生活を営んでいると信じられた神々の住むところを指した。天皇家の祖先はアマから降下してきたと建国の神話にあり,万葉集などにも歌われている。それでアマは,天上・宮廷・天空に関する語につけて使う。」

とある。「あめ(天)」は,

「天つ神の住む天上の世界。古くは地上の『くに』の対。後にアメが天界の意から単なる空の意と解されるに至って『つち』の対」

とある。しかし,『大言海』は,「あめ」の項で,

「橘守部の説に,アメは,上邊(うはべ)の約,底國(そこのくに)を下邊(したべ)と云ふに対するという,いかがあるべき,凡そ,此の如き原始語の語原を説かむは,不可能の事なり,外に語原説,尚種々あれど,皆付会なり,此語アマとも云ふは,,熟語に冠したる時の音轉なり。爪(つめ),ツマ先。目(め),ま蓋などの例なり。雨(あめ)を,あま雲,あま水,あま夜など云ふも同じ。天津と云ふ,ツは(津は借字)古き辞(テニハ)にて,之(の)の義なり。和訓栞『天の字は,多くアメと訓めり。古事記に,アメと云ふにはち註せず,アマと唱ふべきには註あり。サレバ,アメは本語,アマは轉語なるべし』。アメノ,アマノは,万葉仮名にて書きたるあるは,区別に論なけれど,漢字にて,天(てん)とのみ書きてありて,何れともしらぬは,各書の旧旁訓に従へるもあり,…アマノとあるに,一切,アメノと改訓するは妄なりと思ふ。好古叢誌の巻二に,飯田武郷の,アマノ,アメノの区別説あり。天(アメ),天(アマ)又は,連体詞となりて,天(あめ)の,天(あま)の,天津,と云ふに種々異議あり」

と,「あま」「あめ」の音転であり,「あめ」を本来とする。

『大言海』が,付会と一蹴する諸説を,『日本語源大辞典』は,次のように載せる。

アオギミユ(仰見)の略訓(桑家漢語抄)
アミ(阿水)の意(柴門和語類集)
ウカミ(所浮)の義か。また,あまりの義か(雅言考),
アヲミル(蒼見)の反(名言通),
イカミエ(大見)の反(名語記),
天を仰ぎ見る時に自然に出る感嘆の声(言葉の根しらべの=鈴木潔子・日本語源=賀茂百樹),
「奄」の音(am)の転音(日本語原学=与謝野寛),

確かに,付会というか語呂合わせといっていい。わからないものはわからない,というのも見識かもしれない。

『日本語源広辞典』は,

「ア(非常に大きい空間)+マ(空間)」

とし,

「日本語では,天と地と対立する概念のときはアメを使い,複合語のとき,アマとなることが多いようです。」

とする。それなら,

天を仰ぎ見る時に自然に出る感嘆の声,

に個人的には惹かれる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
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コトバの辞典;
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スキル事典;
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書評
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posted by Toshi at 04:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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