2018年06月24日

謀る


「謀る」は,

はかる,

とも訓むが,

たばかる,

とも訓ませる。「はかる」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/444151160.html

で触れたように,『大言海』は,

≪計・測・量≫「大指と中指とを張り限る意」

として,

「物事の程を知らむと試みる。つもる。はからふ。」

をまず挙げ,次に,

≪権・称≫「秤にて軽重を試みる。「枡にて多少を試みる。掛く。」
≪度≫「尺(ものさし)にて長短を試みる。差す。」
≪思量・謀≫「考へ分く。分別す。たくむ。」
≪詢・商議≫「語らひて論じ定む。相談す。」「欺く。だます。たばかる。たぶらかす。」

と分けている。『古語辞典』は,「はか(計・量)り」を,

「はか(量・捗)の動詞化」

としている。「はかどる」の「はか」で,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/431282570.html

で,触れたことがあるが,「はか」について,『大言海』は,「計」を,

「稻を植え,又は刈り,或いは茅を刈るなどに,其地を分かつに云ふ語。田なれば,一面の田を,数区に分ち,一はか,二(ふた)はか,三(み)はかなどと立てて,男女打雑り,一はかより植え始め,又刈り始めて,二はか,三はか,と終はる。又稲を植えたる列と列との間をも云ふ。即ち,稲株と稲株との間を,一はか,二はかと称す。」

とし,「量」を,

「量(はかり)の略。田を割りて,一はか二はかと云ふ。農業の進むより一般の事に転ず。」

としていた。それを前提に,『古語辞典』は,

「仕上げようと予定した仕事の進捗状況がどんなかを,広さ・長さ・重さなどについて見当をつける意」

として,

予測する,
広さ・重さ・値段などを計量する,
よい機会かどうかなど見当をつけてえらぶ,
よいわるいのなどの見当をつけながら,論じる,
もくろむ,企てる,
だます,

と意味の幅を付ける。単なる予測から,価値判断が加わり,それか悪意へシフトすると,だますになっていく,という意味の外延の広がりのあることばである。「はかる」の「謀る」は,

見当をつけるとい意味から,目論み(企み)に転じ,そこから悪だくみへと,意味が転じて言ったものだ。その意味では,「はかる」には,心の中で練っていくという含意がある。

「たばかる」も,

思案する,思いめぐらす,
相談する,
謀り欺く,だます,

と,思案の末に,騙す,という意味で,ほぼ重なる。『広辞苑』には,

「タは接頭語」

とあり,『岩波古語辞典』には,

「タは接頭語。ハカリは未知の分量・重さなどを知ろうと計量するのが原義。転じて,物事の処理を工夫し計画する意。さらに,たくらんで人をだます意」

とあり,ほぼ「はかる」と重なる。

『大言海』は,

「タは發語。安斎随筆…は『たくみはかるの略語か』とあり」

としている。とすると,「はかる」よりは,「たくらむ」含意が強まる。「た」は,

「動詞・形容詞の上につく。意味は不明」

とあるが,

「語調を整え強める」(『広辞苑』)

というところなのだろう。

「たやすい」
「たなびく」

等々と並んで,「たばかる」も入る。「手」の古形に,

手枕,
手力,
手挟み(たばさみ),
たなごころ,
手折る(たおる)

等々「た」と訓ませる接頭語があり,これとつながるのではあるまいか。

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%9F

は,接頭語「た」について,

「『手の語根』と同語源とも考えられる。」

としている。あえて,「た」を付けるということは,そこに意図が強調されている,とみることができる。「はかる」より「たばかる」の方が,より意識的意図的の含意が出る。

『日本語源大辞典』は,接頭語「た」説以外にも,以下のように諸説載せる。

タクミハカルの略か(安斎随筆),
タ(他)ヲハカル意か(和句解),
昔,手で物の大小をはかったところから,テハカル(手量)の義(名言通),
タマハカル(魂計)の義(柴門和語類集),
タバカリはアタリハケリ(化術)の義(言元梯),

等々。「手」との関連がやはり注目される。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:57| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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