2018年06月25日

ヒバリ


「ヒバリ」は,

雲雀,
告天子,

等々と当てる。『広辞苑』には,その鳴き声を,

「一升貸して二斗取る,利取る,利取る」

と聞きなした,とある。

「日本では留鳥・漂鳥として河原・畑などにすみ、春になると空高く舞い上がりながら、ピーチュク、チルルなど長くて複雑な節回しでさえずる。」(『デジタル大辞泉』)

とあるから,芭蕉の,

ひばりより空にやすらふ峠哉(『笈の小文』)

が生きてくるのだろう(『笈の小文』以外は「空に」は「上に」とあるらしい)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%90%E3%83%AA

には,「ヒバリ」の異称を,

告天子(こうてんし,こくてんし,ひばり),
叫天子(きょうてんし),
天雀(てんじゃく),
姫雛鳥(ひめひなどり),
噪天(そうてん),
日晴鳥(ひばり),

等々を上げている。

『大言海』は,「ヒバリ」の項で,

天鷚(てんりょう),

の異称も挙げて(「鷚」はヒバリの意),

「日晴(ひはる)の意。空晴るれば,飛鳴して雲の上に昇る,日晴鳥(ひはれどり)なり」

とある。さらに,

日本釈名「告天子,ヒバリは日のはれたる時,そらに高くのぼりてなく鳥なり,ヒハル也。雨天にはノボラズ」

を引く。『日本語源広辞典』も,

「日+晴れ+り(鳥)」

とし,空晴れ天高く飛び鳴く鳥の意,とする。確かに,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/hi/hibari.html

が,

「奈良時代から見られる名。語源は,晴れた日に空高くのぼり鳴くところから,『日晴(ひはる)』の意味が定説となっている。しかし,ヒバリの鳴き声を模した表現には『ピーチク』『ピーパル』『ピーピーカラカラ』,また『ピーチクパーチクひばりの子』と言うように,鳴き声の『ピパリ』とする説ある。漢字の『雲雀』は,雲に届くほど天高く飛翔する雀に似た鳥の意味から。」

とする通り,「日晴」が定説のようだが,個人的にはすっきりしない。鳥は基本雨の日はあまり飛ばず,雨が上がると,賑やかに囀り飛ぶという印象をもっているからだ。晴れている日に鳴くのも飛ぶのも,「ヒバリ」に限ったことではないのではあるまいか。

Skylark_2,_Lake_District,_England_-_June_2009.jpg



『日本語源大辞典』は,

ヒハル(日晴)の義。日が高く晴れたときのみ高く上り鳴くところから(日本釈名・滑稽雑誌所引和訓義解・和訓栞・大言海)
鳴き声がピパリからか(箋注和名抄・音幻論=幸田露伴),
ヒラハリ(翩張)の義(名言通),
高く上るところからヘヘ(隔々)リの義(言元梯),
ヒは日,ハはハルカ(遥)または羽,リはアガリサガリのリか。日のさすとき,はるばるとあがる鳥でるところから(和句解),

と挙げるが,髙く上がるというのがヒバリの特徴なら,晴れよりそこに語源をさぐるべきではないか。

『日本語の語源』は,

「空高くしきりにさえずるのでシバナキ(屡鳴き)鳥と呼んだ。『シ』の子交(子音交替)[∫c],『ナキ』の縮約[n(ak)i]でヒバニ転音し,さらに語尾の子交(子音交替)[nr]でヒバリ(雲雀)になった。」

とするが,これも如何であろうか。

万葉集で「ヒバリ」を歌う歌は,

うらうらに 照れる春日(はるひに)ひばり上がり 心悲(こころがな)しも ひとりし思へば(大伴家持)
ひばり上がる 春へとさやに なりぬれば 都も見えず 霞かすみたなびく(大伴家持)
朝な朝な 上がるひばりに なりてしか 都に行きて 早帰り来む(安部沙弥麻呂)

等々あるらしいが,いずれも「ひばり上がり」である。いずれも,「日晴れ」といった開放感のある感じではない。「日晴れ」説には疑問である。

春を告げる鳥,

とされる以上,

天髙く飛ぶ,
か,
鳴き声,

から採ったと見るべきではあるまいか。「ヒバリ」の囀りについて,

https://www.bioweather.net/column/ikimono/manyo/m0604_2.htm

は,

「ヒバリは上昇していくとき(『上がり』と呼ばれる)、空中で停飛しているとき(『空鳴き』、『舞鳴き』)、そして降りてくるときで(『降り』)、それぞれ鳴き方が異なります。
 上昇していくときは比較的単純な鳴き声の繰り返しですが、停空飛翔状態になると、多い個体では15種類以上もの声のパターンを組み合わせて、複雑なさえずりを長時間続けます。そして降りてくる時には、スズメや他の鳥の鳴き声も混ぜ、少し短めの声を組み合わせてさえずります。」

という鳴き声を摑まないわけがない。『語源由来辞典』の,

「ヒバリの鳴き声を模した表現には『ピーチク』『ピーパル』『ピーピーカラカラ』,また『ピーチクパーチクひばりの子』と言うように,鳴き声の『ピパリ』とする説ある。」

から,「ピパリ」説に(あまりスッキリしないので不承不承)軍配を上げておくことにしたい。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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posted by Toshi at 05:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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