ツグミ


「ツグミ」は,

鶫,

と当てる。「鶇」(トウ)は,我が国でのみ「つぐみ」に当てる。「鶫」の字は,その字に似せて,つくった国字らしい。

「鳥+音符東」

について,

http://www.nihonjiten.com/data/45821.html

「音符『東』は、五色で青に配する意に通じるか。」

とある。

「古くは跳馬と呼ばれましたが、これは、地面をはねるようにとんでエサをとる格好から」

名づけられたとある(https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1359.html)が,『大言海』は,「ツグミ」の別名に,

馬鳥,
鳥馬(テウマ),

『広辞苑』は,

チョウマ,
ツムギ,

を挙げている。「チョウマ」「テウマ」は「跳馬」のことであろうか。

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「ツグミ」は秋の季語。

喧嘩すな あひみたがひに 渡り鳥(一茶)

という句もあるとか。秋に渡来し,越冬する。で,

「和名は冬季に飛来した際に聞こえた鳴き声が夏季になると聞こえなくなる(口をつぐんでいると考えられた)ことに由来するという」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%B0%E3%83%9F

という説がある。『大言海』も,

「噤(つぐ)みの義。夏至の後,聲無ければ云ふ」

とする。

『日本語源大辞典』は,

夏至の後は鳴かないところからツグミ(噤)の義(日本釈名・大言海),
その形状から,セクグミ(背勾)の転スクミの義(名言通)。

の二説挙げる。「せくぐみ」は,

跼む,

と当て,

背を丸め,体を前方にかがめる,

意である。「すくみ」は,

竦み,

は,硬直して動かなくなる,意である。「ツグミ」の姿勢を指している。似た説は,

http://ta440ro.blog.shinobi.jp/%E9%B3%A5/%E3%83%84%E3%82%B0%E3%83%9F%E3%81%AE%E8%AA%9E%E6%BA%90

が,

「ツグミという名の由来です。ネット上で調べてみると、日本に滞在している冬場は口をつぐんで鳴かないからだと書いてあるものが沢山見つかりました。…ツグミという鳥は冬場に囀りはしませんが、決して無口な鳥ではありません。知らないで近づいたときに不意にケッと鳴いて飛び立ったり、何かを主張しているのか騒がしく鳴いていることも多いのです。そんな鳥に果たしてツグミなんて名前を付けるでしょうか? 名づけた人は余程ツグミを観察したことがないのでしょうか?
 一方で信憑性があると感じたのは、関東の方言でしゃがむことをつぐむといい、それに由来する、という説です。関東の方言でしゃがむことをつぐむというのか否かは知りませんが、ツグミは地面の上に直に降り立って、ちょっと嘴を上に向け、つんとした姿勢でいることが多い鳥です。広々とした地面に数羽が離れてポツンポツンと立ち尽くす鳥はそれほど多くありません。その姿を人がしゃがんでじっとしているように擬人化して見るのはそれほど無理がないように思えます。」

「しゃがむ」説を採る。かつて,「跳馬」(チョウマ)と呼ばれたのは,「ツグミ」の恰好であった。

「地面をはねるようにとんでエサをとる格好から」

名づけられた(https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1359.html)という由来から考えても,

セクグミ(跼)→スクミ(竦)→つぐみ,

の転訛がだとに思えるが。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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