「ムクドリ」は,
椋鳥,
と当てる。
ムク,
白頭翁,
とも呼ぶそうだ。
(ムクドリ(左が雄、右が雌)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AF%E3%83%89%E3%83%AAより)
「ムクドリ」の語源は,大別,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AF%E3%83%89%E3%83%AA
の言う,
「『群木鳥・群来鳥(ムレキドリ)』から転じたとする説と、椋の木の実を好むからとする説」
に分かれるようだ。『日本語源大辞典』は,諸説を,
椋の実を群れはむところから(滑稽雑談),
椋の気に棲むところから(本朝食鑑),
必ず群れてとぶところから,ムレキドリ(群木鳥)の義(俗語考),
ムレキドリ(群來鳥)の略転か(大言海),
ムクんだ鳥の義か(大言海),
と挙げる。さすがに『大言海』の,
「ムクみたる鳥の意か,又,羣來鳥(むれきどり)の略転か」
とする「むくみたる鳥」説は,『日本語源広辞典』が,
「身体がムクンダ鳥説(大言海)は疑問です」
という通り,ちょっと首を傾げたくなる。『日本語源広辞典』は,
「椋の実を好んで食べる鳥」
説を採る。『日本語の語源』は,
「ミクフ(実食ふ)木は,クフ[k(uf)u]の縮約でミク・ムク(椋)になった。〈大庭のムクの木を中に立て〉(平治)。椋の実を好んでついばむところから『椋鳥』の名がある。椋の実は小さいがあまく子供も好んで食べた」
とする。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/mu/mukudori.html
は,
「椋木( ムクノキ)の実を好んで食べることからというのが定説となっているが,ムクノキ以外の 種子や果実,昆虫なども食べる。ムクドリの特徴は,何万羽ともいわれる大群をつくって『リャーリャー』と鳴くところにあるため,『群木鳥(ムレキドリ)』もしくは『群來鳥(ムレキドリ)』の略転説がある。ムクドリを指す方言の『雲鳥(クモドリ)』は雲のように見える大群の鳥の意味から,『ムラ』『ムラドリ』が群れをなすところから,『ムクギ』『ムツキードリ』は『群來(鳥)』,『ムッツドリ』が『群集い』とすると,ムクドリの語源も『群れ』と考えるのが妥当である。」
と,「群れ」に着眼し,「群木鳥」系を採る。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AF%E3%83%89%E3%83%AA
には,
「日本の方言では、モクドリ、モク、モズ、クソモズ、モンズ、サクラモズ、ツグミ、ヤマスズメ、ナンブスズメ、ツガルスズメなど様々に呼ばれている。 秋田県の古い方言では、ムクドリのことを『もず』『もんず』と呼んでいる」
とあり,ここには,「群れ」も「椋」も関係なく,どこかに嘲りがある気がする。そのせいか,
ムクドリ,
には,
田舎から都へ来た者をあざけっていう,
という意味がある。『江戸語大辞典』には,
「江戸へ出てきた田舎者,またその嘲称」
とあり,さらに,
「椋鳥のように群れをなす人の形容」
とある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AF%E3%83%89%E3%83%AA
には,
「江戸時代、江戸っ子は冬になったら集団で出稼ぎに江戸にやってくる奥羽や信濃からの出稼ぎ者を、やかましい田舎者の集団という意味合いで『椋鳥』と呼んで揶揄していた。俳人小林一茶は故郷信濃から江戸に向かう道中にその屈辱を受けて、『椋鳥と人に呼ばるる寒さかな』という俳句を残している。」
とある。まあ,たまさか江戸に生まれただけで,江戸ッ子などといって田舎者を嘲るのは,虎の意を借る狐に似て愚かしいが,その江戸ッ子の実態は,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/436936674.html
で触れた。,「江戸ッ子」は,
「表通りには住んで いない。皆裏通りに住んでいた」
輩を指す。目くそ鼻くそである。
しかし,不思議と,「ムクドリ」は,文学には登場する(確か古井由にも『椋鳥』という作品があった)。「ムクドリ」の季語は,冬。
榎の実散るむくの羽音や朝あらし(松尾芭蕉)
といった句もあるとか。
やはり,「群れ」が目だったと考える方が自然かもしれない。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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