2018年06月30日
シジュウカラ
「ジュウカラ」は,
四十雀,
と当てる。
白頬鳥,
とも。どこかで,「四十雀」は,
「スズメ(雀)よりも40倍の価値があるから」
という説を聞いたことがあるが,『大言海』には,
「雀,四十を,其の一鳥ら代ふる意と云ふ,或は云ふ,四十は,羣(むれ)る意なりと,或は云ふ,鳴く聲を,名とせるなりと」
ある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%82%AB%E3%83%A9
は,
「和名は鳴き声(地鳴き)に由来する。さえずりは甲高いよく通る声で『ツィピーツィピーツィピー』などと繰り返す。」
と鳴声説を採る。『日本語源広辞典』は,
「シジュウ(多く集まる)+から(鳴く鳥)」
としているが,よく意味が解らない。が,『日本語源大辞典』の,
四十カル(軽)の義。多く群れるところから・カルはカルク翻るところから(名言通),
四十は群がる意という(大言海),
雀四十を以てこの鳥一羽に代える意という(大言海),
鳴き声チンチンカラカラの略転(名語記),
鳴く声からという(大言海),
シジウと鳴くカラの意。カラはヤマガラのガラ,ツバクロのクロと同じで,小鳥全体の総称(野鳥雑記=柳田國男)
諸説から,「から」が小鳥の総称ということがわかる。
http://yaplog.jp/komawari/archive/619
によると,
「雀は、種スズメではなく、小鳥一般を示す言葉です。」
とあるから,「から」を,
雀,
と当てたのかもしれない。たとえば,「コガラ」は,小雀と当て,「ハシブトガラ」は,嘴太雀と当て,「ヤマガラ」は,山雀と当て,「ヒガラ」は「日雀」と当て,「ゴジュウカラ」は,五十雀と当てる。
「五十雀(ごじゅうから)」という名がある以上,そのことを合わせて説明しなくてはならないので,群がる,という説は少し説得力を失うだろう。しかし,『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/si/shijyuukara.html
は,
「平安時代には,『シジウカラメ』と呼ばれ,室町時代から『シジュウカラ』と略された。シジュウカラのさえずりは『ツツピーッツピー』,地鳴きが『チ・チュクジュク』と表されるので,『シジウ』は鳴声を表したものと考えられている。『カラ』はヤマガラの『カラ』や,ツバクラメ(ツバメ)の『クラ』と同じく,鳥類を表す語。『メ』は『群れ』の意味か,鳥を表す接尾語(というより,「カラメ」と「クラメ」は同じではあるまいか)。
五十雀がいるせいか,四十雀の「四十」を『40羽』と考える説もある。ゴジュウカラはシジュウカラに似ているところから付いた名なので,五十雀の存在を考慮する必要はなく,四十は『シジウ』の音から当てられたと考えるのが妥当である。」
と言い切る。「シジュカラ」の語源は,鳴き声「シジウ」から来たとするのが妥当ではある。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/841789/26
に,
「鳴き声に由来する思しき命名の方言も実に多岐にわたり千差万別です。しーながら・しゅんしゅんがら・ししがら・四十がらがら、しんしんがら・しんじゅがら・しじうがら・すすんがら・すんすんがら・ちんちんからからetc.農林省農務局 編『類ノ方言』」
とあるのでなおさらである。しかし,である。「ゴジュウカラはシジュウカラに似ているところから付いた名」とは,ちょっと決めつけが過ぎまいか。
http://yaplog.jp/komawari/archive/619
は,
「『四十雀に似てるから』などといういいかげんなのもありますが、分類では別のグループです。
確かに両者の姿形は明らかに異なっています。動き方も、かなり違います。また、木を逆さまに降りられる生態は、ゴジュウカラに独自のものです。『木廻(きまわり)』とか『逆鉾(さかほこ)』など、行動をよく表した異名もありますけれども、やはりこの鳥の正しい名は、江戸のむかしからあくまでも『五十雀』でした。
図説 鳥名の由来辞典…に、…むかしは四十歳で初老、五十歳で老人であったので、ゴジュウカラの青みがかったグレーの羽を老人に見立てた」
としている。とすると,「シジュウカラ(四十雀)」と「ゴジュウカラ(五十雀)」の名の由来は,セットで考えなくてはならなくなる。
さらに,
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1018806/88
には,
「『その鳴声は「親死ね、子死ね、四十九日の餅を食ひたい」(静岡市)』
ここから『シジュークンチ』とも聞こえてくることから後方音を省いて『シジュー』+『雀(から)』になったとすると、五十雀のことを『きわまり』と呼ぶ理由とも繋がりそうです。数字では49の『極まり(=桁上がり)』が50だからです。
とあり,「シジュウカラ」と「ゴジュウカラ」は,対になって名づけられているとみていいのではあるまいか。芭蕉の句に,
「老いの名もありとも知らで四十雀」(続猿蓑)
とあるのも,そういう繋がりの中で詠むと,いっそう意味深い。なお,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%82%AB%E3%83%A9
に,
「総合研究大学院大学の研究で、シジュウカラが単語を組み合わせて文にし、仲間へ伝達する能力を持つことが明らかになった。研究では鳴き声の組み合わせを変えた時のシジュウカラの反応が異なるとされ、チンパンジーなど知能が高い一部の動物で異なる鳴き声を繋げる例は見られたが、語順を正確に理解し、音声を理解する能力は他に例が無く、言語学上重要な手掛かりとなると見られている。」
とあり,「シジュウカラ」の別の側面が見えてくる。ますます「シジュウカラ」と名づけた意味の奥行がのぞめるようだ。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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