ジュウシマツ


「ジュウシマツ」というと,僕などは,赤塚不二夫の『おそ松くん』の,

十四松,

を思い起こしたりする(齢がばれるが,初期の週刊少年サンデー連載を知っている)が,ここでは,

十姉妹,

と当てるそれである。僕は鳥に詳しくないが,この鳥,野生には存在しないらしい。

Japanisches-Moevchen.jpg



https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%83%84

には,

「野生種は存在せず、ヒトの手によって作り出された家禽で、コシジロキンパラ (Lonchura striata) の一亜種であるチュウゴクコシジロキンパラ (Lonchura striata swinhoei) の江戸時代に中国から輸入されたものが先祖と考えられている。家禽としての歴史が長いため飛翔力が弱く、かご抜けしても野生では長く生きることができないと考えられる。」

とか,何だか哀れである。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13956188

には,

「江戸時代には日本で品種改良されて、飼い鳥になりました。その為、野生には、十姉妹という種類の鳥はいません。十姉妹は、とにかく飼いやすい小鳥として有名。まず、日本で品種改良された為、体質がこの国の気候に合い、丈夫です。しかも、性格はおとなしく、仲間同士で喧嘩することはまずありません。」

とある。想像だが,江戸時代の,

朝顔,
金魚,

等々の流行と似た流れの中にあるのではないか,という気がする。朝顔の品種改良はすさまじかったらしい。

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(葛飾北斎「朝顔に雨蛙」https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai123/より)


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(朝顔三十六花撰 歌川豊国 http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/mg-files/woodprint/36-kasen/index.htmlより)


36kasen-31.jpg

(仝上)


その意味では,「ジュウシマツ」の品種改良などお手の物だったろう。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/40/4/40_4_364/_pdf

には,

「日本のジュウシマツは中 国南部のコシジロキンパラを江戸 時代に輸 入したものがもとになっている。コシジロキンパラが子育て上手なことが人気を集め,その形質をさらに選択交 配して大きさが似たような鳥ならばどんな鳥の雛でも育ててしまうほどになった。安 政年間にはコシジロキンパラの白化個体が生じ,これが幸運を呼ぶとして人気を集めた。」

とある。こうして,

性格は大人しく、温和で、飼育がとても簡単,
1つのゲージに十数羽でも飼うことが出来るほど、仲良し,

等々ということで,

十人の姉妹のよう,

ということから名づけられたとされる。面白いのは,

https://www.sci.hokudai.ac.jp/bio/bio/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%83%84%EF%BC%88bengalese-finch-var-%EF%BC%89/

に,

「ジュウシマツは、“chunk”とよばれる2~4個の異なる音素が一つの固まりをつくり、その固まりの間には繰り返し出現する“接続音素”が存在しています。符号化すると[(ABC)ddd(ABC)eee(FGH)(FGH)dddd(ABC)eeee…]のように表されます。脳のなかにはキンカチョウと同じように、さえずりを学習・生成する神経回路をもっているのに、そのさえずりパターンは大きくことなっています。」

とある。「キンカチョウ」は,「小鳥の歌の神 経科学で標準動物として使われている」鳥らしい。.

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で,この鳥,

「巣引き(飼育環境下での繁殖)が下手で、飼育下では抱卵を行わないことが多いため、ジュウシマツが仮親として使用される」

というのが笑える。で,

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/40/4/40_4_364/_pdf

には,ジュウシマツが祖先で あるコシジロキンパラょりもはるかに複雑な歌を歌うのだとある。

「ふつう鳥の歌はせいぜい2秒のソナグラムであらわせば,その全体像がみえるものである。ところが,ジュウシマツの歌をソナグ ラムであらわしてみると,とても2秒では表 現しきれな いものが ある」

とか。さらに,

https://www.athome-academy.jp/archive/literature_language/0000000193_all.html

では,岡ノ谷一男教授(千葉大学)は,

「ジュウシマツの歌には、ヒトの言葉と同じように音の並びに規則性がある」

し,

「実はヒナから成鳥になる間に、学習によって獲得されるものなんです。ジュウシマツの歌の学習には2段階あって、まず第1段階は親鳥などの成熟した歌を聴いて、自分の歌の手本となる歌や発声のモデルを造る。そして第2段階で、実際にでたらめな歌をうたってみて、第1段階で造ったモデルと自分の歌の誤差を修正します。生後35日くらいからうたい始めるようになって、安定した歌になるのは生後120日くらいです。」

といい,人となった同じく,

「自分の耳で聞きながら音を調節している」

のだとか。これは,

「恐らく卵をたくさん産むツガイを好んだ人間が、知らず知らずのうちに、複雑な歌をうたうオス達を選んでいったとも考えられます。」

という家禽故に変異した要素は大きいようだ。

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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