2018年07月22日

ぬか


「ぬか」は,

糠,

と当てる。穀物,特に玄米を精白した際に出る果皮,種皮,胚芽などの粉状のものを指す。細かなそれをメタファに,ある語に冠して,「細かい」「頼りない」「はかかない」等々の意を表す,

(粉)糠雨,
糠喜び,

等々といった使い方をする。「糠」(コウ)の字は,

「庚(コウ)は,かたいしん棒を描いた象形文字。かたく張る意を含む。康(コウ)は『米+音符庚』からなり,穀物のかたいから。糠は『米+康』。」

とあり,穀物の外皮,さらにぬかの意。「糠」は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B3%A0

には,

「日本では合成洗剤が普及するまで、米糠は洗剤としても広く用いられていた。米糠に含まれるγグロブリンというタンパク質が界面活性剤の役割を果たしているとされている。布袋に包んで、柱や床を磨き上げるなどの掃除にも利用された。」

とある。

第2回の3喜多川歌麿娘日時計午ノ刻.jpg

(「娘日時計 午(ま)ノ刻」喜多川歌麿(寛政6年~7年頃)口に銜えているのは、石鹸代りの糠袋http://www.emuseum.jp/detail/100298/000/000より)


『大言海』には,

「脱皮(ぬけがは)の略と云ふ」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/nu/nuka.html

も,同じく,

「ヌケカハ(脱皮)」の意味であろう。 『和名抄』にも『糠 米皮也』とあるように、玄米が皮を 覆った米とするならば、精米は皮が脱がされたもので、糠は脱がされた皮にあたる。 」

とある。『日本語源大辞典』も,

ヌケカハ(脱皮)の義(箋注和名抄・名言通・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子。国語の語根とその分類=大島正健・大言海),
ヌケカハの反(名語記),
ヌギカハの略(本朝辞源=宇田甘冥)
米のヌケガラの義(和句解・日本釈名),

と概ね「ヌケカワ」説である。『日本語源広辞典』は,「ヌケカハ」説ながら,「ヌカ」の「カ」について,

「ヌカの語源は,ヌケカハが,ヌカハ,ヌカと音韻変化したものです。ヌは,脱穀の意のヌですが,カを皮とみるか,離ルノカとみるか,二説あります。」

とし,

「説1は,『ヌ(脱ぐ)+カ(皮)』で,脱穀させたあとの,ヌケカワ説です。説2は,『ヌ(脱ぐ)+カ(離る)』で,籾のち,穀粒と離されたものというヌカ説です。農民は,コヌカ(粉+糠)―玄米の皮,外胚皮などが砕けて粉になったコメヌカ(米+糠)と,モミヌカ(籾+糠)―モミガラ(籾+穀)と区別しています。」

とするが,ここでは,前者の「コヌカ」を問題にしているので,この説明は,あまり意味がない。結局,「カ」は,いずれとも決めていないが,普通に考えれば,

ヌ(脱ぐ)+カ(皮),

ではあるまいか。

因みに,「糠喜び(ぬかよろこび)」は,

当てが外れて喜びが無駄になる,

意だが,『語源由来辞典』は,

http://gogen-allguide.com/nu/nukayorokobi.html

「ぬか喜びの『ぬか』は,玄米を精白する時に生じる種皮や胚芽の粉末の『糠』のこと。『糠』はその形状から,近世頃より『細かい』『ちっぽけな』といった意味で用いられるようになり,『糠雨(ぬかあめ)』や『糠星(ぬかぼし)』という言葉にも使われている。さらに、『糠』が『小さい』の意味から派生し,『はかない』『頼りない』などの意味を持つようになり,はかない喜びを『ぬか喜び』というようになった。」

とある。しかし,個人的にはどうも精米するときの飛び散るイメージから来ているように思えてならない。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:糠雨 ぬか 糠喜び
posted by Toshi at 04:05| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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