2018年07月27日

ながつき


「ながつき」は,

長月,

と当て,

ながづき,

とも言った(『広辞苑』)。旧暦九月の異称である。

SC20199.jpg

(歌川豊広「重陽の節句」https://www.mfa.org/collections/object/chrysanthemum-festival-26597より)

「ながつき」の異称には,

https://ja.wikipedia.org/wiki/9%E6%9C%88

に,

彩月(いろどりづき),
祝月(いわいづき),
詠月(えいげつ),
菊開月(きくさきづき),
菊月(きくづき),
晩秋(くれのあき),
玄月(げんげつ),
建戌月(けんじゅつづき),
青女月(せいじょづき),
竹酔月(ちくすいづき),
寝覚月(ねざめづき),
晩秋(ばんしゅう),
暮秋(ぼしゅう),
紅葉月(もみじづき),
稲刈月(いなかりつき),

等々新暦10月頃の季節感と合う。『岩波古語辞典』には,

「玄月,ナガヅキ」(伊京集)

が載り,

「後世ナガヅキとも」

とあるので,「ながつき」と訓むのが古いようである。多くは,

https://ja.wikipedia.org/wiki/9%E6%9C%88

のように,

「長月の由来は、『夜長月(よながつき)』の略であるとする説が最も有力である。他に、『稲刈月(いねかりづき)』が『ねかづき』となり『ながつき』となったという説、『稲熟月(いねあがりづき)』が略されたものという説がある。また、「寝覚月(ねざめつき)」の別名もある。」

と,「夜長月」を有力とし,『日本語の語源』も,

「ヨナガツキ(夜長月)」

を採る。また『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/na/nagatsuki.html

も,

「語源は諸説あり、新暦の十月上旬から十一月の上旬にあたり、夜がだんだん長くなる『夜長月(よながつき)』の略とする説。その他、雨が多く降る時季であるため、『長雨月(ながめつき)』からとする説。『稲刈月(いなかりづき)』『稲熟月(いなあがりつき)』『穂長月(ほながつき)』の約や、稲を刈り収める時期のため、『長』は稲が毎年実ることを祝う意味からといった説。『名残月(なごりづき)』が転じたとする説などがある。この中でも、『夜長月』の略とする説は、中古より広く信じられている説で最も有力とされている。」

と,「夜長月」を採る。しかし「長月」は当て字である。当てられた字からの解釈は,ほぼ意味がない。「師走」から順次見てきたが,ほぼ農事と関わらせている。秋の夜長を楽しむとは,後世の,歌人の思い入れではあるまいか。『大言海』は,

「稲熟(いなあがり)月の約かと云ふ。夜長月はいかがか」

と,夜長月に疑問を投げかける。『大言海』は,これまで,十二月(しわす)から八月(はづき)まで,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/455892480.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/455932349.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/456805354.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/457607450.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/457762501.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/458763376.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/459166730.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/459184411.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/460695958.html?1532460043

と一貫して,農事と関わらせて「月名」の由来を説いてきた。それが正しいと,僕は思う。『日本語源広辞典』は,二説挙げる。

説1は,「夜+長月」。夜の長い月,
説2は,「稲熟月(イネアガリツキ)」

を挙げ,「イネアガリツキ」という大言海説は,

「イネアガルという用例が少ないのが難点であり,疑問」

とする。しかし,それなら,当て字にすぎない「長月」から,「夜長月」と考えるのも,因果が逆立ちしているのではあるまいか。『日本語源大辞典』は,

ヨナガツキ(夜長月)の略(奥義抄・和爾雅・日本釈名・類聚名物考・古今要覧稿・菊池俗語考・紫門和語類集),
イナカリツキ(稲刈月)の略(語意考・兎園小説外集・百草露・日本語原学=林甕臣),
イナアガリツキ(稲熟月)の約か(古事記伝・大言海),
ナガ(長)は稲の毎年実るを祝う意で,稲を刈り収めるときであるところから(嚶々筆語),
ナコリノツキ(名残月)の略(和語私臆鈔),

等々と挙げた上で,

「語源はあきらかでない。『拾遺-雑下』に,『夜昼の数はみそぢにあまらぬをなど長月といひはじめむけむ』『秋深み恋する人のあかしかね夜を長月といふにやあるらん』とした,伊衡と躬恒との問答の歌があり,また,夜がだんだん長くなるから『夜長月』というのを誤ったものだと,『奥義抄』にあるので,(ヨナガツキ(夜長月)の略)のような語源説が中古以来広く信じられていたことがわかる。…折口信夫によれば,五月と九月は長雨の時季で,『ながめ』と称する物忌の月だという。」

とある。「中古」から信じられていたのは,「長月」という字を当てて後のことでしかなく,「ながつき」の語源とは採れない。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:05| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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