2018年08月03日

弱い


「弱」(漢音ジャク,呉音ニャク)の字は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/460804485.html?1532912174

で触れたように,

300px-弱-slip.svg.png

(弱 簡牘文字,戦国時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BC%B1より)


「会意文字。彡印は模様を示す。弱は『弓二つ+二つの彡印』で,模様や飾りのついた柔らかな弓」

とある(『漢字源』)。これだと「よわい」という意味がよく出ない。

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BC%B1

には,

「『弓』+『彡』(かざり)の会意文字。装飾的な弓は機能面で劣ることから、『よわい』という意味がでた。」

とあり,

k-206.gif



https://okjiten.jp/kanji206.html

は,

「会意文字です(弓+彡×2)。『孤を描いた状態の弓(たわむ弓)』の象形と『なよやかな毛』の象形から、『よわい、たわむ』を意味する『弱』という漢字が成り立ちました。」

とある。これだと,「弱」の意味に辿り着く。

『岩波古語辞典』は「よわし」の語源を,

「ヤワシの母韻交替形か。『強し』の対」

とある。「やはし」は,「やわらげる」「帰服させる」「平和にする」といった意味だが,

「ヤハは擬態語」

とある。「やわ」は,

和,
柔,

と当て,「やわらかなさま」「弱い」という意味で,今日でも,「やわな奴」「軟な立て付け」等々と使う。しかし,『大言海』は,

「彌折(イヤヲ)れ撓(タワ)れの意。柔(やわ)しに通ずと云ふ」

とある。「やはし」は,

柔,
軟,

と当て,

「彌淡(ヤアハシ)の略」

とする。いずれも,

yahasi→yohasi,

と見ていることは通じている。しかし,『日本語源大辞典』は,同じ,

ヨハはヤハ(柔)の義(言元梯),

を,「仮名遣いが『よわし』であるところから,ヤハ(柔)と同根とする説は無理がある」

と一蹴している。ただ理由を述べていない。

『日本語源大辞典』は,その他に,

イヤヲレワワシ(弥折撓々如)の義(日本語原学=林甕臣),
ヨリタワメキシ(寄撓如)の義(名言通)
ヨは夜の義,ワは縛定る義(国語本義),
ヨハはイトヒタの反。また,イトフタの反。弱い糸は二つに切れるところから(名語記),
ヨハはその音勢が無力のさまのようであるところから(国語溯原=大矢徹),
「弱」の字音ニャクの訛音ヤに接尾語のワのついたもの(語源辞典=形容詞編=吉田金彦),

等々を載せるが,他の語源説「撓む」系の「たわむ」は,

「加えられた力に耐えながら,しやかに曲がる意。類義語シナヒはみずから曲線美をなす意」

とあり,「よわい」という意味と微妙にずれる。『日本語源大辞典』は理由を述べず一蹴するが,

柔(やわ)しに通ず,

とする『大言海』と『岩波古語辞典』の説を採る。少なくとも「やわ(柔)」には,今日に通ずる「よわい」意味があるのだから。

ただ,「やわ」に当てた「柔」(漢音ジュウ,呉音ニュウ)は,

「『矛(ほこ)+木』で,ほこの柄にする弾力ある木のこと。曲げても折れないしなやかさを意味する。」

と,「たわむ」(「撓」の字もしなやかに曲がる意)と通じるところがあり,少し迷うが。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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