2018年08月08日

ゆめゆめ


「ゆめゆめ」は,

努々,

と当てる。

努力努力,
夢々,

とも当てる。

ゆめ~するなかれ,

といった使い方をするが,強めて,

ゆめゆめ,

という言い方をする。『広辞苑』には,

「ゆめ(努)を重ねた語。禁止・否定などの語をを伴う」

とある。

必ず必ず,けっしてけっして,きっときっと,

という意味が,

つとめて,精出して,

となり,更に,

少しも,夢にも,

といった意味に変化していくようである。本を読んでいたら,

努々,

に,

努々他見成るまじく候(『異本五輪書』)

の「努々」を「どど」とルビを振っているのを見かけた。ゆめゆめ,というよりは,どど,という方が何となく重みが出るせいだろか。

「ゆめ」は,

努,
勤,
努力,

等々と当てるが,禁止を伴い,

けっして,必ず,少しも,
つとめて,

といった意味になる。「努力」「努」「勤」という字を当てて意味を含ませたい意図がよくわかる。その意味で「夢」の字を当てるのは,後世になってからではないか,という気がする。たとえば,

ゆめにも思わない,

に「夢」を当てるのと,「努」を当てるのでは,含意が違う。「つとめて」という意思のニュアンスが出ない。

『岩波古語辞典』には,

謹,
努,

を当て,

「ユはユユシ(忌)のユ。メは目で,見ること。清め謹んだ目でよく見よと強く命令し,注意を促すのが原義。禁止の『な』とともに使うことが多い。平安時代以後は『夢』と混同することもあったようで,仮にも,よもや,の意」

とあり,「決して」の「努」と,「少しも」の「夢」では,含意がずれる。『大言海』は,「努力」とあてる「ゆめ」と,「夢」と当てる「ゆめ」を別項を立てている。前者の「ゆめ(努力)」は,

「[斎(い)め(斎むの命令形),の転音。類書纂要『努力,用心也』]強く禁止する意を云ふ語」

とし,後者の「ゆめ(夢)」は,

少し,いささか,

と説明する。ただ,この「『大言海』の「斎め」説は,今日,疑問視されている。『日本語源大辞典』は,

「古く,潔斎する意の動詞『斎(ゆ)む』の命令形とされてきたが,『ゆむ』が四段活用とすると『め』は甲類音のはずだが,この『ゆめ』の『め』には乙類の仮名が使われているので,疑問が残る。また,『ゆゆし』などの『ゆ』と,『め(目)』から成るもので,物事を忌み謹んだ目をもって注視せよという,いわば誓詞,忠告の働きから出たものとする説もある。平安時代以降は『夢』と混同されて,『夢にも…(しない)』の意が生じた」

としている。やはり,

イム(斎・忌)の命令形イメの義(万葉集類林・雅言考・万葉考・国語の語根とその分類=大島正健・日本語源=賀茂百樹・東歌疏=折口信夫),
イミ(忌)の義(和語私臆鈔・言元梯),

が多いが,他に,

ヨクモシ(能)の義(名言通),
ユミエ(湯見)の義(国語本義),
ユルマセ,ヤツミセの反(名語記),
イマシメまたはイサメの約(俚言集覧),
ユメ(夢)と同源(和句解),

とあるが,『岩波古語辞典』の,

ユはユユシ(忌)のユ。メは目で,見ること。清め謹んだ目でよく見よと強く命令,

とする説が,一歩リードというところだろうか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:ゆめゆめ 努々
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