2018年08月11日

サザエ


「サザエ」は,

栄螺,
拳螺,

と当てる。「サザイ」とも言う。

栄螺,

を訓んで,

エイラ,

とも言うらしい。他に,

サダエ,
サタベ,
サザイガイ,

等々の名もある(『たべもの語源辞典』)。「拳螺」の字を当てたのは,

こぶしの形をした螺(巻貝),

というわけである。また「栄螺」の字を当てたのは,

「栄を「さかえ」とよむので,この目出度い字を螺にそえて字面をよくする目的と,「さかえ」がサザエに近い音なので,組み合わせ」

たもと,という(仝上)。

sazae.jpg



別称に,

莿螺(しら),
ウズラガイ(鶉貝),
ウツセガイ(虚貝),

ともいうらしい(仝上)。

『日本語源大辞典』には,

「平安時代の語形は『さだえ』であり,『さだい』と変化し,室町時代に『さざい』となった。18世紀から20世紀にかけて徐々に『さざい』から『さざえ』に移行した。現代語の『さざえ』は,古代語形『さだえ』が古典籍書写の場で中世古辞書の干渉を受け当代語形『さざい』というの混淆形として生まれたものとみられる」

とある。

sadae→sadai→sazai→sazae,

と変化したということになる。とするなら,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/sa/sazae.html

が,

「『ササエ(小家)』の転,『ササエ(小枝)』の転,『サヘデサカエ(塞手栄)』の転,『サザレ(礫)』の転,『ササエダ(碍枝)』の転など諸説あり,未詳。『サザレ(礫)』が転じたとする説が若干有力とされているが,平安時代の語形は『サダエ』で,その後『サダイ』と変化し,室町時代に『サザイ』,18世紀初頭から徐々に『サザエ』になった語であることから難しい。」

という通り,「さだえ」の語源を説明できなくてはならない。しかし,

ササエ(小家)の義(日本釈名・東雅・日本語源広辞典),
小さなヱ(柄)のようなものを多くつけた貝の意(和訓栞後編),
ササハルエダ(碍枝)の義(名言通),
サザレ(礫)の転か(日本古語大辞典=松岡静雄),
イサイチ(礫々)がつづまってイサザからサザとなり,それにエナ(胞)が付いたもの(衣食住語源辞典=吉田金彦),

等々と「さだえ」の説明になっていない。

『たべもの語源辞典』は,

「ササは小さいことで,エは,古くはウ・エの合わさった音で,もとはササウエで,ウは座ること,海底に小さく座っているという意からサザエになった。貝殻の中でカキはその殻がかけることから名が付いたが,サザエは角を出してじっと座っているところからサザエと名づけたのである。サザエのエは江で,入り江・湾などにサザエがいたからである。」

と,独自の説を述べるが,古形「さだえ」の説明をスルーしている。

『大言海』は,やはり,

「日本釈名(元禄)『栄螺(ささえ),ササは小也。エは,家なり』,東雅(享保)『栄螺子(ささえ),ササは小而小也,エは家なり,蝸牛の殻をかたつぶりのいへと云ひ,蜘蛛の巣を,蜘蛛のいと云ふが如く,其殻の少しきなるを云ふ』,和訓栞後編,さざえ『少しき柄の如きもの,多くつける貝也』,サダエ,サザイは音轉なり(塞ぐ,ふたぐ。腐る,くだる。吉(よ)し,美(い)し)。栄螺(えいら)の字,漢語に見えず,本朝食鑑(元禄)『栄螺,佐々伊,殻背尖角,如枝芽之向栄,故名之乎』」

と,「サザエ」を前提に解釈する。しかも「サダエ」「サザイ」は訛としている。これはいただけないが,どの説も,江戸期以降のものだから,致し方ない。結局,

サダエ,

の語源はわからない。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:栄螺 サザエ 拳螺
posted by Toshi at 04:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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