2018年08月14日

ハマグリ


「ハマグリ」は,

蛤,
文蛤,
蚌,
浜栗,

等々と当てるらしい。「蛤」(コウ)の字は,

「虫+音符合(コウ あわててふさぐ)」

で,「ハマグリ」である。「蚌」(ボウ)の字は,

「右側の字(音ホン)は,三角形に合わさる意を含む。蚌はそれを音符とし,虫を添えた字で,二枚の殻の頂点があわさり,横から見て三角形をなす貝」

である。やはり「ハマグリ」を指すが,「蚌蛤(ボウコウ)」ともいう。

800px-Meretrix_lusoria.jpg


「日本人にとって非常に古くから親しまれてきた食材で、縄文時代からの出土事例があり、『日本書紀』にも記述がある。」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%AA

と,古くから馴染みのものである。

「中国の『礼記』に『爵大水に入って蛤となる』とあるが,爵は雀のことで,雀が海に入ってハマグリになったという説は中国からきたものである。初午にハマグリを食べると鬼気に犯されないといい,伏見稲荷で食べたのは,摂州住吉の洲崎がその名産地で,小さなハマグリのむき身を酢にした酢ハマグリだった。伊勢・桑名のハマグリは貝が厚くこわれないから『貝合わせ』(また『貝おおい』という)の貝にした。ひとつの貝殻は他の貝殻とは合わないので平安時代から遊びに用いられ,『源氏物語』にも載っている。後にこれを割符にもしたことがある。」(『たべもの語源辞典』)

と,生活にしみ込んでいる。

さて,「ハマグリ」の語源は,『広辞苑』『岩波古語辞典』『日本語源広辞典』『大言海』は共に,「ハマグリ」の項で,

「浜栗の意」

としている。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ha/hamaguri.html

は,

「形が栗の実に似ており、浜辺に生息していることから『浜栗』の意味が定説。ハマグリは『日本書紀』にも記述が見られるように、古くから食糧にされている。植物の栗も古代 から重要な食糧であるため、『山の栗』に対して『海の栗』と考えたのであろう。 石を意味する古語『クリ』から『浜の石』の意味とする説もあるが,石に見立てた場合に『浜の』とする…!?は疑問」

とするし,『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E3%83%8F%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%AA

も,

「浜辺にあり、栗と形が似ていることから『浜栗(はまぐり)』と呼ばれたことに由来するとされる。また、石ころを『クリ』と呼ぶことから浜にある石のような貝との意で『ハマグリ』と称されたとの説などもある。」

も,同趣の説をし,ほぼ「浜栗」説一辺倒である(名語記・和語私臆鈔・燕石雑志・瓦礫雑考・箋注和名抄・雅言考・名言通・柴門和語類集・碩鼠漫筆・大言海)。異説は「浜石」(東雅),他に,

アワセメアツクアリ(合目圧在)の義,

のみである(『たべもの語源辞典』)。『たべもの語源辞典』も,

「ハマグリ(浜栗)の義,浜にある栗に似たものであるから」

とする。カタチだけから,そう言ったとするのである。聊か疑問である。さらに,『大言海』は,「ハマグリ」の古名を,

「うむき」

とし,『岩波古語辞典』には,

「うむぎ」

で載る。和名抄にも,

「海蛤,宇無木乃加比(むぎのかひ)」

と載る。このことに言及するものが少ない。『たべもの語源辞典』も,

「ハマグリの古名はウムキ,方言では宮古島でシナ,上総・千葉県山武郡で,ゼンナ」

と載せるのみであるが,「ウムギ(ウムキ)」の意味はまったく辿れなくなっている,ということなのだろう。本来,
「ウムギ(ウムキ)」の語源を辿り直すことで,「ハマグリ」の語源を照射できるのだろうが。

YokohamaShellFishDealer (1).jpg

(明治期の横浜の魚介店の立体写真。店先で大量のハマグリが売られている。地面には剥いた後の殻が見え、暖簾にも蛤の文字が読める。当時の東京湾はハマグリの一大産地であったが、昭和後期にはほぼ全滅してしまった。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%AAより)

なお,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%AA

には,「ぐれる」の語源を,

「ぐれるとは不良になることで、…『ぐれはま』を略したものに名詞を動詞化する接尾語『る』をつけたもの。不良行為・非行行為をするようになるという意味で江戸時代頃から使われるようになった。もともと『不良』という意味を持っていないが、一説には『ぐれる』という行為が『親が望む子の姿から(当てが)外れた』ということから、動詞化する際に『不良』という意味をもったと言われている。」

としている。ちょっと一考の余地がある。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


ホームページ;
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コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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