2018年08月15日

ぐれる


「ぐれる」は,

愚れる,

と当てたりするようだが,

予期したことと食い違う,
脇道へ逸れる,堕落する,

といった意味と載る(『広辞苑』)が,一般の感覚では,

不良になる,

といった意味で使い,

少年や青年が、生活態度が乱れ、反社会的・反抗的な行動をするようになる(『大辞林』),

という意味になる。『広辞苑』(『大辞林』も)には,

「ぐれ」の動詞化,

とある。「ぐれ」は,

「ぐれはま」の略,

とあり,

物事の食い違うこと,ぐりはま,

とある。「ぐりはま」は,「ぐれはま」ともいい,

「はまぐり(蛤)」の倒語,

とある。この辺りから,「はまぐり」語源説につながるらしい。たとえば,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ku/gureru.html

は,

「グレるは、『ぐれはま』の『ぐれ』に活用語尾『る』を付け、動詞化したものである。『ぐれはま』は、『蛤(はまぐり)』をひっくり返して成った語『ぐりはま』の転である。これらの語は、ハマグリの貝殻をひっくり返すと合わなくなることから、物事が食い違うことを意味してい た。江戸時代末期の歌舞伎『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうしはなのにしきえ)には、『それから、島で窮屈な勤めが嫌さにぐれ始める』といった例が見られる。」

という説になる。ほぼ,ネット上は,この説が大にぎわいである。『日本語源広辞典』も,

「「ハマグリの倒語。グリハマ」の音韻変化の「グレハマにルをつけ,グレルと変化した」語,

とするし,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%AA

は,

「ぐれるとは不良になることで、…『ぐれはま』を略したものに名詞を動詞化する接尾語『る』をつけたもの。不良行為・非行行為をするようになるという意味で江戸時代頃から使われるようになった。もともと『不良』という意味を持っていないが、一説には『ぐれる』という行為が『親が望む子の姿から(当てが)外れた』ということから、動詞化する際に『不良』という意味をもったと言われている。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1016951915

は,

「貝のハマグリは一つ一つ微妙に形が違っていて、他のハマグリの殻とは合いません。そこから、貝合わせと言う遊びが出てきました。そこで、ハマグリ(合う)→グリハマ(チグハグでかみ合わない)→グレハマ→グレとなったというのです。江戸時代は、物事が食い違ったり、当てが外れる時に使ったようです。愚連隊(ぐれんたい)などという表現もこの言葉の変化です。」

『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/08ku/gureru.htm

は,

「ぐれるとは『あてが外れる』という意味の俗語『ぐりはま』が訛った『ぐれはま』を略したものに、名詞を動詞化する接尾語『る』をつけたもので、不良行為・非行行為をするようになるという意味で古く江戸時代から使われている。『ぐれはま』自体は『不良』という意味を持っていない。一説にはぐれるという行為が『親が望む子の姿から(あてが)外れた』ということから、動詞化の際に『不良』という意味をもったと言われるている。また、現代ではグレるとカタカナを交えた表記を使うことも多い。」

等々。しかし,「ぐれる」の語源には,『日本語源大辞典』には,

ハマグリを逆にしたグリハマという語をグレハマと訛り,それが動詞化されたもの。ハマグリは対でない他の貝と合わせると,食い違うところから(猫も杓子も=楳垣実),
マグレルの上略(大言海),
クル(繰)から(俚言集覧),
ぐれぐれになる,はずれる,ぐらつくの意(江戸語大辞典=前田勇),

と言った四説がある。ひょっとすると,由来の違う言葉が,「ぐりはま」に収斂したのではないか。「あてが外れる」「食い違う」という意味の「ぐりはま」では,「ぐれる」の意味のずれもあるし,語感が違いすぎる。

「『ぐれはま』自体は『不良』という意味を持っていない。一説にはぐれるという行為が『親が望む子の姿から(あてが)外れた』ということから、動詞化の際に『不良』という意味をもったと言われるている。」

とは,少し無理筋過ぎないか。「ぐれる」は,

はずれるとか,
それる,

の意味が本来ではないか。貝が「食い違う」というのとは微妙にずれる気がする。『笑える国語辞典』

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%8F/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B/

が,

「グレるとは、態度の悪い青少年が、もっと態度の悪い人々の目にとまり、態度の悪い人々の世界にスカウトされて活躍を期待されその気になっている様子をいう。
 『グレる』とは本来、反抗的、反社会的、反体制的な態度一般を意味する言葉であり、『グレ』方にもバラエティがあってもよいはずだが、現在『グレる』で表されるのは一定のスタイルに限られる。その『グレ』た結果を、近年では『ヤンキー』などと小洒落た言い方を用いて、さらにパターン化しようとする傾向が見られる。『グレ』方のワンパターン化は、青少年の個性豊かな成長を妨げるものであり憂慮される。」

というのが「ぐれる(グレる)」の本来の意味範囲のはずだ。

江戸期に使われ出したとされる,その『江戸語大辞典』では,

「ぐれぐれになる,はずれる,ぐらつくの意。一説に繰るより出たる語とするは非」

とする。で,

あてがはずれる,
それる,
正道からはずれる,

という意味である。「ぐれだす」という言葉も載り,

正道から逸れはじめる,
不良仲間に入る,

の意が載り,「ぐれる」の今日の意味とほぼ重なる。『大言海』は,

「マグレルの上略,むさぼる,ぼる」

とする。「まぐれ」は,

紛れ,
眩れ,

と当てる。前者だと,

まぎれる,

意だし,後者なら,

目暗(マグレ)にて,目くれふたがりて,物の見えぬ頃なれば云ふか,

とある。『大言海』説も意味から見ると,捨てがたいが,やはり,『江戸語大辞典』の,

ぐれぐれになる,はずれる,ぐらつくの意,

の「ぐれぐれ」説に与しておきたい。この言葉が,由来の違う「グレハマ」とどこかで重なったのではないか,と思われる。

な,「愚連隊」も,「ぐれる」から来ているという説があるが,

http://www.usamimi.info/~kintuba/zingi/zingidic-ka.html

には,

「関東大震災以降に出現し、戦後に威勢を誇ったテキヤでも博徒でもない不良集団。戦後は復員兵が闇市の支配権や復興後の縄張りを巡り、全国各地で博徒・テキヤ・三国人と抗争を繰り広げた。終戦後の混乱が収まると組織を持たない愚連隊は徐々に既存のやくざ社会へと吸収され消えていったが、本来のやくざとは筋目の異なる愚連隊を吸収したことから博徒・テキヤの暴力団化が始まったと言える。
 グレン隊は既存の親分から盃を下ろされていないためやくざではない。そのため愚連隊のままで終わった安藤昇や安部譲二は警視庁の前科者リストではやくざとして扱われてはいない。同様に万年東一は大日本一誠会を組織したから右翼である。漢字で『愚連隊』と当てるのは『ぐれる』から来ているとも、『当時何にでも“連隊”をつけるのが流行したから』ともいわれている。
 やくざのように掟や組織に縛られない自由なアウトローとして愚連隊は今でも人気があり、安藤昇、万年東一、加納貢、花形敬などは伝説的存在としてしばしば創作物の題材になっている。
 映画『仁義なき戦い』の登場人物では、打本昇、早川英男などの打本組関係者が愚連隊出身で、打本が村岡親分の舎弟になった際に正式なやくざになっている。」

と,裏面史になっている。

なお,「やさぐれる」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/454978205.html

で触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:21| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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