2018年08月21日

タケ(竹)


「タケ」は,

竹,

と当てる。「竹」(漢音・呉音チク,唐音シツ)の字は,

「象形。タケの枝二本を描いたもの。周囲を囲む意を含む」

とある(『漢字源』)。

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『たべもの語源辞典』に「竹」について,

「モウソウという竹は,元文年間(1726-41)徳川八代将軍吉宗のとき,琉球から薩摩に二本移植されたのが始まりである。これは中国中部の江南竹で,雪竹ともいう。日本で孟宗竹とよんだのは,中国の筍の産地として有名な西湖近くの法華山一帯から出るものを毛笋(モウシュン)とよんでいるから,これが訛ってモウソウとなり,孟宗とあて字したものである。中国から日本に移植された竹は,マダケ(漢名,苦竹。ニガタケともよぶ),ハチク(漢名,淡竹。苦味がうすいからである。クレタケ,カラダケともいう),布袋竹(ホテイチク。短い節間がふくれていて,ほていさんの腹を連想させるところからの名),鼓山竹(ゴザンチクともいう。漢名多般竹)である。日本原産の竹は,中部山岳地帯,東北地方にあるスズタケ(篶竹。スズ・ミスズともいう。スズは篠(しの)と同じ意)である。」

とあり,これによると,「篠竹」以外は,中国由来,ということになる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9

に,

「日本ではタケは青森県(本州北端)から九州だが、ほとんどは帰化植物と見られる。」

とある。

『たべもの語源辞典』は,語源説のどれかに肩入れはしていないが,

「新井白石の『東雅』には,『万葉集抄』にタは高いことだとあって,ケとは古語に木をケというようであり,タケとは,生じて高くなる木という意味でつけられて名である,と説いている。タカムナという筍の異名からタカムは高くなることで,ナは『菜』でたべものを意味するという説もある。」

と紹介する。『大言海』は,

「長(たけ)生(お)ふる義,成長の早きにつきて名あるか。又,高(たか)生(は)えの約と云ふ」

とし,『日本語源広辞典』は,

「説1は,『高い草』語源説です。説2は,『中国音tikuがtake音韻変化した語』だという説です。タカイの語源がタカシですから,これをたどって,文字のない時代まで遡ると,タケが,タカ(高)から,生まれたことがうなずけます。また大陸からの原人の中国音が影響したかともかんがえられます。」

とする。ただ, 『岩波古語辞典』は,「タケ」の項で,

「タケ(丈)・タカ(高)と同源とする説は,アクセントを考えると成立困難である。」

と「高」とつなげる説を一蹴する。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ta/take.html

は,

「語源は諸説あり、主な説は『高(たか)』『丈(たけ)』と同源で高く伸びるものの意味。タケノコの旺盛な成長力から、『タケオフ(長生)』の意味からとする説。『タカハエ(高生)』の約とする説。朝鮮語で『竹』を意味する『tai(タイ)』からとする説がある。『高』や『丈』と『竹』はアクセントが異なるため難しいとの見方もあるが、区別するためにアクセントが変わった可能性もある。また朝鮮語『tai』の説には,和語として『高』や『丈』の意味に分化したとする説や、『タ』が朝鮮語『tai』からで,『ケ』が『木』の意味からとする説もある。」

の言うような,「『高』や『丈』と『竹』はアクセントが異なるため難しいとの見方もあるが、区別するためにアクセントが変わった可能性もある」とするのは,文脈依存の和語ということを考えると,ひとつの考え方かもしれない。確かに,高・丈とつなげる説は結構多いのである。

タカ(高)の轉(日本釈名・日本声母伝・円珠庵雑記・言元梯・菊池俗語考),
タケ(丈)が高いところから(古今要覧稿・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子・日本語源=賀茂百樹),
動詞タク(高)の連用形名詞法(続上代特殊仮名音義=森重敏),

『大言海』の「高生え」も「長生ふ」も,「長け」は,

「タカ(高)の動詞化」

なので,やはり,「高」とつながり,難しい。「高」との関わりを捨てるとなると,

タは,竹の意の朝鮮語takiから,ケはキ(木)の意(国語学通論=金沢庄三郎),

になるが,僕は,篠竹以外,ほとんどが中国由来,ということを考えると,『日本語源広辞典』の,

中国音tikuがtake音韻変化した語,

という説が捨てがたい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:26| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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