「たけ」は,
丈,
長,
と当てると,
物の高さ,縦方向の長さ,
となり,
動詞「たく(長く)」と同源,
であり,
岳,
嶽,
と当てると,
髙くて大きい山,
の意となり,
「たか(高)」同源(中世「だけ」とも),
とある(以上『広辞苑』)。
(「丈」金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%B8%88より)
しかし,『岩波古語辞典』をみると,「たけ(長・闌)」は,
「タカ(高)と同根。高くなるものの意」
とあり,単に物理的な長さ,高さだげではなく,時間的な長さ,高まりも指し,「たけなわ」の項,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/456786254.html
で触れたように,
「長く(タク)は,高さがいっぱいになることの意で使います。時間的にいっぱいになる意のタケナワも,根元は同じではないかと思います。春がタケルも,同じです。わざ,技量などいっぱいになる意で,剣道にタケルなどともいいます。」(『日本語源広辞典』)
という意味も持つ。だから,
「タカ(高)と同根。高い所の意」
である「たけ(岳・嶽)」ともほぼ重なる。
(「岳」甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B2%B3より)
『大言海』は,「たけ(嶽・岳)」を,
高嶺(たかね)の約,
とし,「たけ(丈)」を,
高背(たかせ)の約,長(た)くの義,
とするが,これは,逆立ちではあるまいか。「嶽」の字,「丈」の字を当てはめた後の解釈にすぎないのではないか。僕には,
丈も長も,
岳も嶽も,
かっては,「たけ」だけで済ませていた。文脈依存の文字を持たない祖先にとって,その区別は,その場にいる人にわかればいいのである。そう考えると,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/461300903.html?1535312164
で触れた「たけ(茸)」も,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/461199145.html
で触れた「たけ(竹)」も,すべて,
たけ,
であり,長さ,髙さ,という含意を込めていたのではないか,という気がしてくる。
『日本語源大辞典』は,「たけ(岳・嶽)」の項で,
「『たけ(長・丈)』とともに(たけ『岳・嶽』も),形容詞『たかし(高)』の語幹『たか』と同根で,下二段動詞『たく(長)』とも関連づけられる。高い山岳を意味し,特に方言では,薪や茸などを採る生活圏内のヤマに対して,しばしば信仰の対象となる生活圏外のものをさす。中世の辞書類にはダケが挙げられることが多く,『日葡辞書』にも『本来の語はdaqe(だけ)である』とあるなど,濁音形ダケが単独で用いられることもあったが,第一音は本来清音である。」
と述べている。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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