2018年09月03日

ふすま(衾・襖)


「ふすま」と当てるものには,

襖(ふすま) - 和室の建具の一種。
衾(ふすま) - 古典的な寝具の一種で、就寝時に掛け布団のように体にかける。
麩・麬(ふすま) - 小麦を製粉したときに篩い分けられる糠。

がある。「ふすま(麩・麬)」は,項を改めるとして,

襖(ふすま),

衾(ふすま),

は,関連がある。

「衾」は,『広辞苑』『岩波古語辞典』『大言海』では,

被,

とも当て,

「布などで作り,寝るとき身体をおおう夜具」

とある。『岩波古語辞典』によると,

「八尺または八尺五寸四方の掛布団。袖と襟がない」

とある。

Wakan_Sansai_Zue_-_Fusuma.jpg

(『和漢三才図会』による衾の画) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%BEより


『大言海』は,「ふすま(衾・被)」を,

「臥裳(ふすも)の転かと云ふ。或は臥間の衣の略」

とし,「紙」でつくったものを「紙衾」というとする。この「紙衾」が,「ふすま(襖)」の項の,

「紙衾に似たるより云ふかと云ふ。或は,衾(ふすま)に代わりて寒を防ぐ意か」

と,「衾」と「襖」をつなげる。この説を基に,

https://www.fusuma.gr.jp/fusuma/history.html

が,

「平安時代には貴族の邸宅は『寝殿造り』が典型的となりますが、内部は丸柱が立ち並ぶだけの広間様式で、日々の生活や、季節の変化・行事祭礼・接客饗宴に応じて、屏風や几帳など障子を使うことにより内部を仕切り、畳やその他の調度品を置いて『しつらい』をしました。『しつらい』とは『室礼』と漢字をあてますが、この意味は『釣り合うようにする』ことだといいます。また、『障子』の『障』には『さえぎる』という意味があり『子』とは『小さな道具』という意味があります。障子の中でも寝所に使用されたものを『衾障子(ふすましょうじ)』と呼び、『寝所』を『衾所(ふすまどころ)』と言いました。『大言海』によれば『衾(ふすま)』はもともと寝るときに体に掛ける布製の『寝具』の意味であり、原初の形態は板状の衝立の両面に絹織物を張ったものであったと考えられています。これを改良して周囲に桟を組み発展させたものを壁に(副障子)応用しました。『襖』は衣服の『あわせ』=袷あわせ、また『裏の付いた着物』の意味があることから絹織物を張った『衾障子』は『襖障子』と称されるようになっていきました。ちなみに現代『襖』を『からかみ』とも呼ぶようになったのは、この後中国から『唐紙(からかみ)』と呼ばれる文様紙が『襖障子』に使われるようになり普及していったのがはじまりであります。」

と展開している。

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(伝統的な日本家屋にみられる襖(奥の間) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%96より)


ただ,「ふすま(衾)」は,「伏(臥)す裳(衣)」説(大言海・箋注和名抄・言元梯・名言通・和訓栞・国語の語根とその分類=大島正健)以外に,別に,

「伏す+間+着」,寝室用の着物,伏す間着の省略,
「含す+マ(もの)」包んでいる内容物を筒も隠す(以上『日本語源広辞典』),
フシマトフ(臥纏)の義(日本釈名・東雅),

等々があるが,いずれも衣と関わる。他方「ふすま(襖)」の語源は,「紙衾」説以外に,

「伏す+間」。寝室用の障子をフスマショウジと呼び,証示を省略した,
「含す+マ(もの)」包んでいる内容物を筒も隠す(以上『日本語源広辞典』),
襖を拡げたように張るところから(嬉遊笑覧),
フスマダテ(臥間立)の下略(日本語原学=林甕臣),
伏所の障子の意から(筆の御霊),
裏ある服をフスマと同じく,裏表から張るところから(俚言集覧),

等々とある。「襖障子」の略では,「襖」の説明にはなっていない。少なくとも,

ふすま(衾)の布団からきたのか,

それとは別に,

ふすま(臥す間)という場所からきたのか,

に別れるが,「ふすま(衾)」のある場所だから「臥す間」と呼ばれたのではないか。「ふすま(襖)」は「ふすま(衾)」がと深くつながっている。

「障子という言葉は中国伝来であるが、『ふすま』は唐にも韓にも無く、日本人の命名である。『ふすま障子』が考案された初めは、御所の寝殿の中の寝所の間仕切りとして使用され始めた。寝所は「衾所(ふすまどころ)」といわれた。『衾』は元来『ふとん、寝具』の意である。このため、『衾所の衾障子』と言われた。さらには、ふすま障子の周囲を軟錦(ぜんきん)と称した幅広い縁を貼った形が、衾の形に相似していたところから衾障子と言われた、などの説がある。『衾(きん)』をふすまと訓ませるのは、『臥す間(ふすま)』から来ていると想像される。いずれにしても『ふすま』の語源は『衾』であるという学説が正しいとされている。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%96

と。因みに,「衾(漢音キン,呉音コム)は,夜着の意だが,

「会意兼形声。『衣+音符今(とじあわせる,ふさぐ)』で,外気と体の間をふあさいで体温を保つ」

で,「襖」(オウ)は,「わたいれ」の意で,建具の「からかみ」の意で使うのは我が国だけである。

「会意兼形声。『衣+音符奥(燠。ぬくみがこもる,あたたかい)』」

である。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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