だてら


「だてら」は,

女だてらに,

などといった言い回しをする。『広辞苑』は,

「体言に添えて,その身分などにふさわしくない意を表す。非難や軽蔑を込めて使う」

とあるが,『デジタル大辞泉』は,

「《接尾語「だて」+状態を表す接尾語「ら」》(多く『だてらに』の形で)性別や身分・立場などを表す語に付いて、それらの性や身分・立場などにふさわしくない、不相応の意を表す。『女だてらに』『法師だてら』

とあるが,『岩波古語辞典』には,

「接続詞ダテにラのついた語」

とあり,接続詞「だて」は,

「タテ(立)の轉。名詞・形容詞語幹などに付いて,そのさまを取り立てて示す意」

とある。ぼくは,個人的には,ひそかに,この「だて」は,

伊達,

と当てる「だて」で,

だて(伊達)+ら(状態を示す助詞),

ではないか,と思っているのだが,『大言海』は,

「ダテは,タテダテシのダテ,ラは助辞」

とする。「たてだてし」を見ると,

「立立」

と当て,

「心を立て通す」

とし,

意気地を張ること強し,

の意味とする。「だて」を見ても,『広辞苑』には,

「一説に『立つ』から,人目につくような形を表す」

とし,「だて(伊達)」を見ると,

タテ(立)の転。接続語ダテの名詞化(『岩波古語辞典』),
タテダテシキの上下略して濁る,男を立つる意。即ち,男立,腕立,心中立などより移る。世には伊達政宗卿の部兵の服装華麗なりしに起ると云へど,此語も政宗卿の時代よりは,古くありしが如し,且つ慶長の頃までは,伊達氏はイダテと唱えたり」

と,やはり,「たてだてし」の「立つ」とつながる。

「縦」は「立て」の意だが,「立て」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/453257596.html

で触れたように,「よこ」には,

横流し,
横取り,
よことま,

等々,正しからざる意味を含んでいるが, 「立つ」は,『岩波古語辞典』に,

「自然界の現象や静止していめ事物の,上方・前方に向かう動きが,はっきりと目に見える意。転じて,物が確実に位置を占めて存在する意」
「行為や現象の度合いを高めて,周囲にはっきり目立たせる」

と,「目立つ」という含意がある。この含意は,

立役者,

の「立」に含意を残している気がする。「だてら」には,

その身分・立場にもかかわらず,のれを立てている心意気,

を嘲っている風がある。

女立て,

とは言わず,

女だて+ら,

と,「伊達」の状態ではあるが,どこか,「ら」に,

気取ってゃがる,

という含意がある気がする。『日本語源大辞典』に,「だて(伊達)」ついて,

「『いかにも~らしい様子をみせる。ことさらにそのような様子をする』意の接尾語『だて(立)』が,室町末期ごろより名詞また形容動詞として独立したものか」

とあり,「だて(伊達は当て字)」自体に,

いかにも~らしい様子をみせる,

意があり,それが拡大して,

だてら(に),

となったと考えられる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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